◆薔薇の国、ロッゼンティへの道中②
「それからもう1つの何らかの理由によってダンジョンが維持できなくなった時。
これの被害はピンキリですが、危険なことが多いです。
原因も千差万別でこれが原因、と特定するのも難しいものですね」
ダンジョンの核破壊の説明をざっくりしたライムが続けて口を開く。
「ピンキリって……?」
「幅がとっても広い、ということですよ、勇者ナツ」
聞きなれない単語に首を傾げたナツにライムがちゃんと聞いてて偉いですね、と微笑みを浮かべてから
漆黒は『壊せば一緒』って話を聞きませんでしたからね。と遠い目をする。
「それで、ヤバいやつとそうでも無いやつの違いはなんなんです?」
「……そうですね、我々が実際に遭遇したものを例にするとまずやばくない方は正確にはダンジョン崩壊ではなくダンジョン消滅、と定義されています。
このダンジョン消滅と言うのは龍脈の流れが変わって魔素が枯渇して維持が難しくなり核が自然消滅した場合のみの呼称です。
これは緩やかに無くなるので核の破壊時と違い洞窟などの空間は残る事があります。
広い洞窟になるので平地の魔物の住処となり、場合によってはダンジョンの残骸を破壊する必要があります」
「その辺は普通の洞窟とそう変わらないね」
魔物の巣は環境ごと徹底的に破壊するのは冒険者としては常識であり、冒険者と同行して狩りをしていたセンは巣は厄介だもんね、と頷く。
「我々の遭遇したそうでも無いやつに関しては洞窟が残った場合で、平地の魔物の巣の駆除以来とほぼ同義でした。
私の結界で出入口を覆って琥珀のバフを受けた漆黒が調子に乗ってどこまで火力を上げられるか試してうっかり中を高温で焼き払って討伐証明部位まで燃やし尽くしたせいで報酬を受け損ねかけましたね。
元々の環境ありきの変異した平地ダンジョンや箱庭ダンジョンは元の環境に戻る事がほとんどですね」
「それは聞いたことあります、あまりにも【黒月の女王】の実力が高すぎてどれだけ手加減しても消し炭にしかならなくて調査員が派遣されて焼け跡から巣の規模が推定された稀有な例だって聞いたはずですが、実情はうっかりなんです?」
「漆黒に手加減なんて概念ありませんよ」
ライムの説明にゐぬが結構有名な話ですよね?と確認するとライムから乾いた笑いが返ってくる。
「それで、やばい方の崩壊って?」
ライムからの不穏な気配にキーが慌てて次の話を振る。
同じく危機感を感じたナツもそっちが聞きたい!とキーに便乗する。
「やばい方の崩壊は、言ってしまえば魔力枯渇による消滅の逆。
何らかの理由で龍脈を流れる魔素が過剰に増えたり、もしくは流れが滞って魔素溜りが巨大化してしまったものです」
「まな……ふぃず……?」
当然のようにポコポコ出る用語に何それ?と首を傾げるナツにライムがそのうち説明しますね、と笑う。
「そもそもダンジョン自体が魔素溜りから生成されたものじゃないんです?」
「えぇ、ダンジョンの生成としてはそれで合ってますが、基本的には龍脈上にこぶの形に出来上がった魔素溜りから生成されると言われています」
ライムが説明の為に魔力を指先から放出し空中に絵を描くようにキラキラと輝く魔力で小さな川を作りそこにコブのような塊を作ってみせる。
「これが何らかの形で出口が詰まると流れ込んだ魔素によってボンッと破裂する事で起こるのがやばい方のダンジョン崩壊となります」
先程魔力で描いたこぶの反対側を消すと流れていた魔力がこぶの部分に溜まりやがて破裂したのを見せながら説明するとナツがうわっ、と驚いた声を上げて爆発した!とセンとキャッキャと騒ぐ。
「それで、この崩壊だとどうやばいんです?」
「これは言ってしまえばダンジョンの暴走状態とも言えます。
遭遇したものだと狂乱した魔物達による魔物の大侵攻が複数個同時に発生しましたね」
話を聞いていたゐぬが先を促すとライムが清々しい笑顔で答えた内容に意味を理解したゐぬとキーは顔を引き攣らせ、よく分かっていないセンとナツは首を傾げる。
「総力戦をしても数国は滅びるレベルだぞ……」
ドン引きしたキーの言葉にえ?とセンとナツが聞き間違いかと首を傾げる。
「そうですね、滅んでたでしょうね
……ゐぬさんは聞いたことあるのでは?
『紅夜の日』の話を」
「……あれ、都市伝説ではなくマジものなんです?」
ライムの言葉にゐぬが嘘だろ。と言いたげな顔で僅かに眉間に皺を寄せた。




