◆薔薇の国、元首都廃墟街ローゾッド
「や、やっと着いたぁぁああ……、あ?」
ため息混じりに馬車から転がり落ちるように降りたナツがもう無理、馬車しんどい。と半泣きになりながら周囲をみ回して半壊した家屋の並ぶゴーストタウン、廃村と言う言葉がしっくりくる建物の残骸群に思わず首を傾げる。
フロッティーナハイルを出て4日ほどかけてダーヒリィアンを目指し走り、要塞都市として持ちこたえていたいくつかの都市を経由して到着したダーヒリィアンでは歓待の余裕は無いと言われてしまい、1日の滞在で出発したが、出発間際にダーヒリィアンの女王が放っていた偵察隊が戻り、ヘトラニアの惨状が伝えられて1週間。
立ち寄る予定だったヘトラニアは魔族の支配下に置かれ、魔族の為の歓楽街となり国民は奴隷身分に落とされてしまっていると言うことでヘトラニアを大きく迂回する形で辿り着いたローゾッドは人っ子一人居らず、半壊した建物ばかりがもの寂しげに佇んでいた。
あちこちに焼け焦げたような跡があるのは恐らく戦闘の跡だろうが、死体らしきものは一つもない。
「ねぇ、ライム、ここがローゾッド?」
「えぇ、ここが薔薇の国と名高いローゾッドのその首都です。
今日はここで野営して北方都市ロッゼンティを目指します」
ナツの問い掛けにライムが物資の調達は難しそうですね、と肩を竦める。
「見て、キー!」
「はいはい、見てるよ、何?」
「爆発跡がある!」
「……センの同類がいたのかもな」
馬車から降りて早々に吹っ飛ばされた建物の残骸に駆け寄ったセンが瞳を輝かせて良い爆発だ!と褒めるのをキーが勘弁して欲しい……と言いたげな顔で相槌を打つ。
「とんでもない魔窟に向かってる気しかしないんですが、本当にこの先にあの煉獄がいるんです?」
「えぇ、ここは既にあの子の縄張りですよ」
最近できたらしい何かを引き摺った痕や魔力に敏感な者には毛を逆撫でられるような魔力の残り香を感知したゐぬが眉を顰める。
そんなゐぬに掃除が雑なんですよね、と肩を竦めたライムが杖を一振して魔力を霧散させる。
「多少薄めたみたいですけど、こんなの放置してたら魔力汚染が起きたり、魔素溜まりでダンジョン化するからちゃんとしろって何回も言ってるんですけどね」
ほんと戦闘以外ポンコツなんですから。とぷんすこと怒るライムにえぇ……。とゐぬがドン引き顔を向ける。
「月白様、周辺の安全確認完了致しました。
我々はこのまま食料になりそうな物を調達してきますね」
「ご苦労様です、よろしくお願いいたします」
「あ、私も……勇者も行きます!」
ライム達に声をかけてきた《黎明の黒翼》のガリウスにライムが頭を下げれば、声を聞いたナツも駆け寄り同行を申し出る。
「野草探すのはだいぶ得意になったよ!」
晩御飯期待しててね!と同行を許されたナツがライムに手を振って元気に走っていった。
私事ですが、今月から猫ちゃんをお迎えしました。
保護猫ちゃんで6歳のりんご猫ちゃんですが、実家で飼ってる犬より犬で撫でられるの大好きで名前を呼んだらお返事して足元まで来てくれます。
入っては行けない場所も都度声をかければ戻ってくるんですよ、凄くないですか?
撫でられるの嫌いで名前を呼んだら面倒くさそうにこっちを一瞥しておもちゃをなげても見送る犬と実家では暮らしてきたのでかなり新鮮です。




