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Gaillardia・Coral   作者: 海花
花の国
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◆フロッティーナハイル、夜の城壁②

「え、な……え?

なんで私の名前……?え……?

そもそもあなたは……」


フルネームで呼ばれたナツは混乱気味に首を傾げる。

あなたは、誰?と問いかけながらナツの上げた視線の先、頭の先から爪先まで黒で彩られた少女がつまらなさそうな顔でナツを見ていた。


「僕の名前は漆黒ディービィ

荊の魔女あるいは災厄の煉獄姫と呼ばれるものよ」


ナツの誰?と問う言葉に逸らした胸に右手を当て左手は腰に添え、不遜とも言える態度で陰惨な笑みを浮かべて自己紹介を返す。


「あなたが漆黒ディービィさん……?

……え、でもまだずっと先に居るって……」


「僕は特別、だからね」


2-3ヶ月はかかるってライムが言ってた、と眉間に皺を寄せるナツは魔族が化けた偽物かもしれない、と念の為背負っていた大剣の柄に手をかける。

そんなナツに特に気負う素振りもなく君達みたいに他力で移動してないし、疑うなら冒険者ライセンスでも見る?と肩を竦める。


「どういう……ってそうじゃなかった魔族の襲撃なんだよ、そこをどいて!」


「魔族?そんなもの魔物共々今夜はこの辺り一帯、全部焼き払ったと思ったけど……どこで見たのかしら?

僕は紅金剛級冒険者、漆黒ディービィ、旧友の依頼で一帯の魔物の排除を請け負っているの」


どういう事?と首を傾げかけたナツだが直ぐに自分がなんで走っていたのかを思い出して皆に報せなきゃ!と声を出すが魔族、という言葉に漆黒ディービィは不機嫌そうに片眉を上げてコツコツと石畳をヒールで叩くように苛立たしげに音を立てながらナツに歩み寄り首から紅水晶から作られた美しい冒険者タグを取り出して掲げて見せてから早く吐けとばかりに肩を掴んで揺する。


「城壁の外に大量の火が……焼き払った……?」


城壁の外で見た見渡す限りの炎は魔族の襲撃だと思うと訴えようとした漆黒ディービィの言葉にあれ?と首を傾げる。


「……もしかして城壁外の火を見て魔族の仕業だと思ったのかしら?」


ナツの様子に目ざとく気がついた漆黒ディービィは凄みのある笑みを浮かべて獰猛な獣のような気迫で不機嫌そうに緑色の瞳を歪めてナツに訊ねる。

その気迫に押されるようにナツは素早く首を縦に振る。


「それなら魔族じゃなくて僕の炎よ」


なんだ、と言うようにナツから手を離して探知を掻い潜るやつがいるのかと思っちゃった。とため息を着いて肩に落ちた長い髪を掻きあげるようにして背に払う。


「……漆黒ディービィさんの炎……?

でも、すごく遠くまで燃えてて1人の魔法使いが出来る範囲じゃないっていうか……」


「言ったでしょ、僕は特別だ。って」


めちゃめちゃ燃えてる、と訴えるナツに腰に手を当ててふふん、と得意げな漆黒ディービィにライムが絶対パーティに加える、と言っていた理由である煉獄の顕現のような真っ赤な大地をもう一度防壁越しに見たナツがこれが金剛級の冒険者、ってやつってこと……?と小さく震えながら肩越しに漆黒ディービィへ目を向ける。


「……、あの、漆黒ディービィさん、魔法を私にも教えて「嫌よ」い……!」


こんな風に魔法が使えれば命中率が悪くても役に立てるかもしれない、と意を決したナツのお願いを言い切らないうちに被せるように食い気味に断る。

心底嫌そうに顔を顰める漆黒ディービィにそんなぁ、とナツが絶望の表情を浮かべた。


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