◆フロッティーナハイル②
「半月の逗留?」
「えぇ、最短で1週間でも問題はありませんが、サン王女の依頼をこなすのに不備をフォローする期間が欲しいので、それくらいの逗留期間があれば1年は稼働する結界術式を展開できるかと」
「そりゃあお守りをされてる私は、構わないけど……」
「私とキーも困ってる人を見捨てずに助ける、なんて勇者一行らしい理由での足止めなら大歓迎だよ」
「漆黒は大丈夫なんです?」
サン王女との会談の後、客室として宛てがわれた貴賓室に現れたライムからの要望に道中の戦闘でほとんど役に立っていない自覚のあるナツが首を傾げ、センはニコニコの笑顔で、キーはこれで暫く馬車に乗らずに済むぞ、という顔で同意を示し、若干居心地が悪そうにしていたゐぬは逃げ出しません?と懸念事項をライムに尋ねる。
その尻馬に乗るようにナツもガリウスさん達もお仕事あるし……と眉尻を下げる。
「ガリウスさん達に関しては先に折衝済みで、逗留に関して合意を得ておりますので問題ありません。
漆黒に関しても逃走の心配はないでしょう。
あの子は逃げるなんてしませんよ、基本脳筋ですし逃げるくらいならこちらをヤースガーフン皇国の皇都……皇城の中庭に送り付けるくらいはしますよ」
「……規格外すぎません?」
ライムの評価にゐぬが引きつった顔で呟くとだから言ってるじゃないですか、とライムが溜息をつく。
そのライムも一般的な魔法使いの枠に収まっていないんだよな。と言うゐぬの生温い目線に反対意見は無しで良いですか?とライムが最終決をとる。
「「意義なーし」」
ナツとセンの息ぴったりの返答に合わせてキーも同意を示すように頷き、ゐぬも仕方ないとばかりに肩を竦めた。
「それで、結界術式の展開って勇者達に手伝えることある?」
「大人しく野戦病院の慰問をしていただければ、それで構いませんよ」
ナツの期待に満ちた質問に何も問題を起こさないで大人しくしていろ、と言えないライムがそれでも笑顔で慰問を告れば頑張るぞー、と意気込むナツとセンに問題事の気配を感じたキーが深くため息をつく。
それを横目に見ていたゐぬは情報収集に出る旨を告げて自身に宛てがわれた部屋へ引き上げていく。
それを合図としたようにそれぞれが寝るためのベッドの確保へ動き、ライムは何事も無ければいいのですが……、と祈るうよな気持ちと共に確保したベッドに腰掛け静かに目を閉じ、瞑想の闇へ沈んだ。




