◆フロッティーナハイル①
「ようこそ、勇者様方、騎士の皆様。
我々フロッティーナハイルは皆様のご来訪を心より歓迎いたします。
戦時中故、大したおもてなしも、自慢の花々をお見せする事も叶いませんがお許し下さい」
放棄された街や村を越えてようやくたどり着いた向日葵の国の首都フロッティーナハイル。
関所にあたる場所で身分証を提示した瞬間に門兵が慌ただしく騒ぎ出し、入国目的を確認された後に真っ直ぐに真っ直ぐに王城へ案内され、立派な応接室にてまだ幼い少女から歓迎の言葉を受ける。
「私は、ナツ、勇者ナツよろしくね」
「申し遅れて申し訳ありません、私はサン、サン・フロッティーナハイル
ここフルール連合国のフロッティーナハイル第4王女でございます」
応接室でソファから立ち上がり少女に目線を合わせて膝をついたナツの自己紹介にハッとしたように姿勢を正して見事なカーテシーと共に自己紹介を返す。
「私はコードウィガルド王国の港町ディアスの領主の娘でセン・リーファス、こっちは私の幼馴染みのキー」
「セン、敬語。
キー·ボニーです、ご迷惑をおかけしますが、しばらくお世話になります」
サンの自己紹介の後に一応ソファから立ち上がって自己紹介をしたセンの言葉遣いに小言を入れつつキーもセンの半歩後ろの位置で片膝をついて頭を下げる。
「ゐぬです、よろしくです?」
「ヤースガーフン皇国所属、宮廷魔術師の月白です」
なんで幼女が?と言いたげに首を傾げながら流れで自己紹介をするゐぬに続いて普段被っている帽子を取り深く膝を曲げて優雅に挨拶を述べたライムの言葉に驚いたように目を見開いたサンが大股でライムに歩み寄りじっと見上げる。
「えっと……?」
「あなた、あの、黒月の女王に居た絶対防御の異名を持つあの月白様?」
「えぇ、そうです」
サンの睨むような顔にライムがなんの用だろうか、と言うように困惑の声を出せば確認するようなサンの言葉にちょっとため息混じりに肯定する。
「ヤースガーフン皇国から出発した勇者様の魔王討伐旅がお急ぎなのは重々承知の上ですが、折り入って月白様にお願い申し上げたいことがございます。
お疲れのところ申し訳ありませんがお話だけでも聞いていただけないでしょうか……?」
もちろん他の皆様は直ぐにお休み頂けるように貴賓室へ案内をさせますわ、と上目遣いでライムを見上げるサンにライムは眉間に皺を寄せたあと半歩ほど下がってから小さく小さく溜息をこぼして聞くだけ聞きましょう。とうなるような声で答えた。
「ありがとうございます、これは内密のお願いなのですが……」
ナツ達が去った後にサンの口から紡がれた言葉にライムは目を見開いたあと想定より悪いですね、と唸りながら問題ありませんよ、と肯定した。




