◆フルール連合国⑫
ほぼ説明回なので読み飛ばしていただいても問題ありません
「まずは勇者ナツ、センさん、キーさんは知らない体でお話しますね。
まず、ここの国名はフルール連合国。
別名、花の国とも呼ばれています。
剣の国、クレイディフ帝国と魔法の国、グロリアス共和国と魔王領となっているニヴルヘイムの間にある7つの小国からなる国です。
フルール連合国全体としての面積は大陸最大国家であるヤースガーフン皇国にも迫る程に広いですが、あくまで小国群ですので、国同士の仲が良い訳ではありません」
「仲良くは無いのに連合国なの?」
食事をしながら会議をまとめてしてしまおうと言う流れになり、現状把握も含めておそらく国を出たことが無い3人にも分かるように今いる国について説明するライムにナツがおや?と首を傾げる。
「平時に大国と渡り合う為に結束し、そのままと言った感じです。
各州として元の国名を残していますが殆ど独立自治となっており、年に1回の代表者会議にて連合国としての方針を話し合う程度であまり交流らしい交流はありませんでした。
ただ、どの国も元々はその国を象徴する花が咲き乱れる美しい景勝地であり、観光地として栄えていました。
魔王軍の侵攻に伴い国土は荒廃し、現状の有様、と言うわけです」
「花の国はそれぞれ観光都市としてならかなり有名だよな、まさかここがそうとは思わなかったけど、それで、ここはどの辺なの?」
ナツの質問にお互いに気に食わないけどもっと気に食わないやつに勝つ為の同盟ですよ、と説明するライムになるほどー、と猪肉を頬張ったナツがこくこくと頷き、センが1度行ってみたいとは思ってたんだけどこんな形で来ることになるなんてなぁ、と呑気に水の入ったコップを傾ける。
「ここはフルール連合国の最も南に位置する高貴の国、フロッティーナハイルの外れの村のそばです。
フルール連合国の国についての説明は必要ですか?」
「勇者はよく分かんないから……それぞれの国についてと、これから通るルートについて教えて欲しいけど……時間は大丈夫かな?」
「日が傾いてから移動を始めても日没までには村に着くはずですよ」
ライムの問いかけにナツが何も分からない。と素直に申し出るがそんなことしてる時間ありますか?と言いたげに確認するようにライムが視線を投げかけると問題ありませんよ。と優しく微笑んだガリウスがしっかりと頷いて応える。
「では、国とルートについてもざっくりご説明します。
フルール連合国は7つの国で構成されているのは先程お話しましたが、
まず、奇跡の国、ローゾッド。
こちらは薔薇を国花とし私達の今回の目的地です。
この国は現在の魔王侵攻に置ける戦場、その最前線と言えるでしょう
そして我々の今回の目的地はその中の黒薔薇領、ロッゼンティ。
ローゾッドより北東に位置する小都市です」
「そのロッゼンティが漆黒さんの居るところだね」
ナツの確認にライムがそうです。と肯定する。
そのあとも殆ど淀むことなく7つの国について説明を行う。
純潔の国、リリウェン。
フルール連合国最北端の国で百合を国花とし、かつては真っ白な建物が美しく花だけでなく建物まで含めた景色が持て囃された国。
魔王軍侵攻に伴い真っ先に蹂躙され、現在では見る影もなく、国として事実上の滅びを迎えたこと。
威厳の国、ダーヒリィアン
ダリアを国花としており、フルール連合国のほぼ中央に位置する。
首都を含めて各地が要塞都市であったことが幸いし、未だに抗戦を行っているらしいということ。
寛容の国、ヘトラニア
紫陽花を国花とし、ダーヒリィアンの次に侵攻を受けた国であり、通信が途絶えて久しく現在どのようになっているのかは不明であると言うこと。
優美の国、ブロケリオス
桜を国花とし、首都ブロケリオスを含め同時期に侵攻され、リリウェン共々滅びの道を辿ったこと。
高貴の国、フロッティーナハイル
向日葵を国花とし、フルール連合国最南端に位置する国
未だに魔王軍へ抵抗を続けていると言うこと。
結束の国、コッコニアンスパニオール(略称:ニアオール)
朝顔を国花とし、フロッティナィーハイルとダーヒリィアンの間の国であり、国家ごと亡命済みであり、国を捨てる事を選んだこと。
「我々は現状判明している魔族支配領域を避け、フロッティナーハイルを通り、ダーヒリィアン、ヘトラニアを経由してローゾッドへ、そこから更に黒薔薇領へ向けて北上していきます」
「なるほど、よく分かんないけど色んな国を経由していくことは分かった」
ライムの説明とガリウスの行程予定を聞いた叩き込まれるように投げられた説明に目を回していたナツがスン、と全てを諦めた顔でしっかりと頷く。
「そんなに沢山の国を経由するってなると目的地までどれくらいかかる予定なんだい?」
「そうですね……」
「ここからなら何事も起こらず、馬を潰すつもりで馬車を飛ばして1週間と言った所でしょうか……行軍でも先行部隊が2週間、普通に走るなら1ヶ月ちょっと、観光も兼ねてゆっくり行くなら2~3ヶ月くらいでしょうか」
静かに話を聞いていたセンからの重要なのはそっち、と言うような質問に距離と安全マージンをとってと日程を逆算しようとしたライムの横で遠征経験豊富なガリウスが人の良い笑顔で大まかな想定を告げる。
「……私のお尻、終わる頃には割れてそう……」
「落ち着け、勇者。
尻は元々割れてるぞ」
普通に走ると1ヶ月と聞いてクッション性の悪い馬車の中を思い出して今も痛むお尻の心配をするナツにセンとキーが言いたいことは分かると苦笑しながら突っ込む。
「まだ生き残ってる都市があればしっかり休息も取れるでしょうから」
そんな3人にライムが警戒もせずに乗ってるだけじゃないかと言いたげな顔で溜息をついた。




