◆フルール連合国⑥
「という事がありまして
あの頃は新兵でしたがあれ以降あのように凄まじい攻撃魔法を見たのも、国1つを覆う結界魔法もあれが最初で最後の目撃になります」
素晴らしかったんですよ。と朗らかに笑うガリウスにナツがライムも漆黒さんも凄いんだね!と屋根の上のライムを馬車から顔を出して眩しそうに見上げる。
「……後始末は全部騎士団に丸投げしてましたから人間性としては終わってますけどね」
「確かに素材回収は普段の訓練よりも重労働でしたけど回収した素材は全部譲っていただきましたからね。
おかげでそのあとの軍の予算が大変潤いまして、色々新調できて国防レベルをかなり引き上げることが出来ました」
ナツの視線に居心地悪そうに正面を見据えたライムが溜息混じりに呟けば苦笑いを浮かべたガリウスが感謝しているんですよ。と付け足す。
「それに月白様と琥珀様が日中は護衛として行軍の経路を結界で守護してくださいましたし、
我々が休んでいたはずの夜から明け方にかけて痛みやすい肉類の素材なんかや重たくて運搬に時間のかかる大型のドロップ品なんかは何故だか朝になると最寄りの都市に山積みにされていて控えている後衛部隊や補給部隊が朝一で運んでたって話も聞きましたし」
「夜になると勝手に素材が集まってたの?」
「そうなんですよ、親切で照れ屋な魔法使いさんが運んでくれていたみたいで」
「凄いね、御伽噺に出てくる良い妖精みたい!」
ガリウスの後日談とも言える言葉にさすがに放って置けませんでしたし、と溜息をつくライムとは違いなんで?と問いたげな瞳にガリウスが子供にお話を聞かせる大人の優しい笑顔で告げるとナツが子供のような弾ける笑顔で応える。
そんなナツにその親切な良い妖精のような魔法使いさんのイメージが私達のパーティの名前の由来なんですよ。とガリウスがどこか誇らしげに返す。
「盛り上がってるところ申し訳ないのですが、盗賊です」
きゃっきゃっと盛り上がる馬車を見下ろしていたライムが何か気にがついたように前方を睨み据えて片膝を立てて杖を構える。
「殲滅しますか?捕縛しますか?」
「急ぐ旅です、殲滅しましょう」
一応騎士団いますからね。と言うようにライムが正面を見据えたまま尋ねれば馬上で剣を抜き払ったガリウスの咆哮のような号令に騎士団全員が剣を抜き放ち馬車を守る為に散開し迎撃態勢を整える。
「了解です。
ナツ、セン、キー、ゐぬ!馬車の扉を閉めて私がいいと言うまで大人しくしていてください!
リナリアさん、みんなを頼みます!」
馬車に乗っていた面々と護衛として同乗していた黎明の黒翼のサブリーダーであるリナリアへ声をかけたライムが返事も待たずに馬車の上で杖を握り険しい顔で行き先を睨み据える。
馬車が止まり迎撃態勢の整った瞬間に男達の集団が瓦礫や木々の影から飛び出し襲いかかってきた。




