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Gaillardia・Coral   作者: 海花
花の国
64/105

◆フルール連合国②

ゲームが……ゲームとリアルの予定とスランプに阻まれてこんなに期間が空きました、飽きたわけではないんです、本当です……!

「木漏れ日の庭、星の海、実りの大樹《治癒(チャド)》」


馬車の屋根の上に振り落とされないように氷魔法で足場を固定して立つライムが声を上げ杖を振る度に疲労から足の遅れる馬が活力を取り戻して廃墟群となっているかつての街の通りを馬車とそれに並走する騎馬達が土煙を上げてありえない速度で爆進して行く。

馬車の中では時折誰かがどこかをぶつけたような音やくぐもった悲鳴が聞こえるが、その度にライムが杖を振るう。

ライムの形成する障壁の範囲から外れないように鍛えられた騎士たちも口を開く余裕のない速度で走り抜ける。

障壁に阻まれて襲撃出来ないはずだがそれでも時折ライムが氷の塊を彼方に飛ばしては魔物を通りから排除する。

訓練でもこんなに辛くなかった言う表情で歯を食いしばりながら馬を走らせる騎士も居るがそれにも適宜回復魔法をかけるライムのおかげで走れているので文句は無い。


「ライムさん、この先に広場があります!

そこで一旦休憩させていただけませんか!」


「承知しました、そろそろ馬に水を飲ませてやらないと可哀想ですしね」


幾分か余裕のあったガリウスが声をあげれば頷いたライムが承諾して頷くと爆走していた馬車が少しづつ速度を落としてかつては噴水のある美しい人々の憩いの場となっていたであろう荒廃しきった広場に入ると緩やかに停止する。


「いたた……」


もう出てもいいと言われた馬車の中から頭を抑えたナツが転がり出て続いて肩を抑えたセン、腰をさするキー、顔色悪く腹と口元を抑えながらゐぬが馬車から出てくる。

降りてくるなり茂みへ駆け出したゐぬを地面に降り立ったライムが不思議そうな顔で見送る


「誰も保定しなかったんですか?」


「ほてい……?」


死屍累々といった様子の面々におや?と言いたげに尋ねるライムにナツがなにそれ、と言わんばかりの表情で聞き返す。


「急ぐったってこんな暴走馬車みたいな状態で長時間馬車に乗ると思わなかったし、それなら保定頼んでた……」


くっそ痛てぇと呻くキーの言葉に誰もできなかったんだなと察したライムが若干申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「それでもこの惨状は一体どういうことなんですか……?」


「バランスを崩したナツを支えようとしたキーがカーブの遠心力に負けて壁に腰を強打して、支えきれなかったナツが吹っ飛んで、避けようとした私が肩を壁にぶつけて、ナツはそのまま頭からゐぬの腹にめり込んだ」


「な、なるほど……それは申し訳ないです……」


途中途中治癒魔法を放っていたはずの馬車内の惨状に怪訝そうに首を傾げ直したライムにセンがば車内で起こった事を説明すれば簡単な治癒では足りなかったか、と納得気味に杖を再度振るい、同行者全員へ治癒魔法をかけ直す。


「皆さんっ!」


「はい、分かっています

皆さんは休んでいてください、私が迎撃します」


広場で休憩する面々を狙って集まる魔獣に気づいた騎士団が注意喚起の声を上げながら防衛しようと剣を手に取るが緩やかに首を振ったライムが両手でしっかりと握り締めた杖を掲げるとパキパキと音を立てて中空の空気が一気に温度を下がる。


「"報いの雨、復讐の刃、青い煌めき

重ねて、連なる翼、交響の琴瑟、交わる水魚"《凍てつく矢雨(グラウレウィド)》!」


鎚のように力強くライムが杖を地面へ突き刺すと中空の凍り付いた無数の氷柱が魔獣の影へ雨のように降り注ぎ突き刺さる。


「ひぇっ」


「これが金剛級の冒険者の実力……」


金属を引っ掻くような断末魔を上げてミンチにされていく魔獣にナツが青い顔で小さな悲鳴をあげ、うわぁ……とドン引きした顔で呟くキーの横でセンは引き攣った笑みを浮かべる。


「やはり一撃で一掃、とはいきませんか」


ライムの魔法でミンチにされた仲間の死体を乗り越えて現れた黒い狼のような魔獣に顰めっ面で舌打ちしたライムが再度魔法を打とうとしたところで何かに気づいたように絶叫のような声量で障壁を展開すると同時に爆発するように現れた爆炎が結界ごと魔獣を呑み込む。


「うっそでしょ……っ!」


ライムだけに戦闘はさせないぞ、と意気込んで大剣に手をかけていたナツが空を見上げて絶望の声をあげる。


炎の合間から覗く、巨大な黒い影

見上げた空には空を翔ける最強種、ドラゴンの姿がそこにあった。

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