◆フルール連合国
騎士団と情報屋のゐぬと共にセン達の家のあるディアスの街を出て騎士の国であるマーロック王国を経由し、ガリウスが率いる騎士団に護衛されて剣の国を迂回するようにして通り抜けえて辿り着いたのは花の国、だった場所である。
見渡す限りの荒野にはかつて建物だったであろう瓦礫の山、枯れたものに混ざり所々にもの哀しげに咲いている花が時折風に揺れているのがかつてここが花の国と呼ばれた場所であると訴えているようであった。
「これは、ひどい……」
瓦礫には黒ずんだ染みがいくつも残っている。
そして風に乗り漂う吐き気のする"ナニカ"が腐った匂いが鼻をつく。
胃が反射的に中身をぶちまけようとする吐き気を堪えるようにナツやセン、キーが鼻と口を覆う。
そんな惨状をみたガリウス達も言葉を失ったように呆然と辺りを見回す。
「まさか、そんなはず……」
その光景を信じたくない、と言うように杖を握りしめ縋る何かを探すように視線を彷徨わせるライムが1歩2歩と歩みを進める。
「……ガリウス隊長。
ここは、花の国のどこですか?」
数歩進んだところで振り返ったライムが肩越しに振り返り確認するように尋ねる。
「ここは花の国、フルール連合国の入口。魔王領と剣の国の境にある国……百合の都、リリウェンです」
「不躾な事を承知でのお願いですが……薔薇の都まで同行は願えませんか?」
ガリウスの話を聞いたライムがなるほど、と頷いた後少し考える素振りを見せてから徒歩より馬車の方が早いと判断したようで杖を強く握り締めたま強い瞳で訴えるように願い出る。
「ライム……?」
「……フルール連合国は、元々7つの小国から成り立つ国でそれぞれの国は今は都として残っています。
漆黒の守護地は、薔薇の都ローゾッドです。
あの子がいるなら……薔薇の都は生きてる可能性がかなり高いと踏んでます」
いつになく深刻な顔のライムに心配そうに声をかけたナツに大丈夫だと言うように軽く首を振って応えたライムが他のメンバーに説明するために口を開きそして確信を込めた瞳でガリウスを見つめる。
「我々としても漆黒様の安否確認を取らないと陛下に何を言われるか分かりませんから、目星がついているならこちらとしても是非同行を願いたい所です」
ライムの表情に頼まれなくても我々も行きますともと言うように笑顔で応えたガリウスに同意するように他の騎士団のメンバーも頷いてみせる。
「ありがとう、ございます」
もうしばらくよろしくお願いします。と頭を下げるライムとは裏腹にもう暫く騎士団と訓練が確定したナツが馬車移動はいいけど訓練は嫌だと言うように微妙な表情を浮かべているのに気がついたセンが声を上げて笑いながらその背中を叩いた。
「頑張れよ、勇者ー」
「センも近接戦闘訓練した方がいいんじゃないか」
あくまでナツだけの訓練で他人事として笑っているセンに弾切れでいつも逃走してるし、と告げるキーにセンが遠慮するよ、と顔を引き攣らせて応える。
「センも勇者と一緒に地獄を見よう?」
「私は遊撃手だから近接戦は専門外だから!
それに戦闘スタイルならキーの方が近接戦闘訓練必要じゃない?」
「おい、私を巻き込むな」
死にそうな顔でセンの腕を掴むナツにひぇ怖、と怯えた声を出したセンが代わりにどうぞ!と言わんばかりにキーの背中を押す。
「全速力で飛ばしてもらいますから訓練なんてしてる暇はありません、今すぐに馬車に戻ってください」
3人の騒ぎを見たライムがガリウスと話をつけたようですぐに出ます!と声を上げる。
「え、この馬車で全速力で走るんです……?」
ほぼ板に布を貼っただけのような馬車の座面を見たゐぬが絶望したように呟いた声はナツ達の助かったぁという声にかき消されて誰にも拾われなかった。




