◆リーファス家の屋敷にて②
「そう言えば騎士団の人達、調査するって言ってたけど調査って何するの?」
お茶を飲みながら思い出したように訊ねるナツにそういえば何するんだろうね?とセンがキーと目を合わせ首を傾げたあとライムへ視線を向ける。
「えっと、そうですね……魔物の異常発生の調査は大きくわけて周辺への聞き取り、現地での残存魔力を辿って実態調査、あとは残存魔物が居ないかの調査の3つです」
すっと指を3つ立ててライムが簡単に説明するのをナツとセンが真剣な表情で聞いているのを眺めながらキーも耳を傾ける。
「聴き取り調査はそのまま、実際に戦闘に参加した人や巻き込まれた人達の被害や魔物たちの挙動や前兆になりそうな出来事の聞き込みですね。
実態調査は魔物が発している魔力の残り香を辿って発生源の特定と聞き取り調査の裏取り、みたいなことをします。
残存魔物の調査もそのままですね、魔物の異常発生の調査ついでに生き残りの掃討をする事を指します」
なるべく簡潔に、分かりやすくを意識しただろうライムの説明にうーん、とナツが首を傾げる。
「何かわからないことでもありましたか?」
「ううん、私達はどれを手伝えるかなって」
何かわからなかっただろうかと確認するライムに首を振ったナツがみんなで手分けした方が早いでしょ?と言いながらうーん、と首を傾げる。
「私らで手伝えるのは聞き取り調査のまとめとか、報告用の資料作成あたり?」
「え、素人が手を出すより手慣れた人がやった方が早くないか?」
具体的に手伝えそうな場所の候補を出したセンにめんどくさい、と言いだけな表情を隠しもしないキーが出来れば待ちながらゲームしてたいと零す。
「まぁ、急ぐ旅でもない……訳でもないけど二度手間とかになったら余計時間がかかっちゃうよね……」
キーのゲームがしたいの言葉に待ってる間にゲームができるのかと揺れ動いたセンにナツも確かに、と同意を示す。
「……まぁ、下手に介入するよりはいいでしょうね
私は経験があるので実態調査の方を手伝います
出発目処が着いたらお知らせしますので、それまで英気を養って下さい」
「やった、勇者、ゲームしに行こうぜ」
「うん、行く!
なんのゲームするの?」
ライムの許可を得たセンがナツを誘って部屋を移動する。
そんなセンとナツの後をポータブルゲームを握ったキーが追いかける。
「……前触れ、出さないと怒るでしょうしね」
そんな3人を見送ったライムがやれやれと言うように肩を竦めて残っていた紅茶を飲みながら指先へ魔力を集め小さな白い小鳥を錬成する。
「《片羽へ
近いうちに会いに行きます》」
魔力を乗せた声が黄金に輝き小鳥を包むと小鳥はライムが開け放った窓から青く澄んだ大空へ飛び立ってあっという間に見えなくなる。
「……片羽」
誰もいなくなった部屋でポツリとこぼしたライムの言葉に答える声はない。
「魔王に膝を折るようなそんな殊勝な事……してる訳ありませんね、片羽ですし」
ゐぬから聞いた裏切りの話を溜息とともに否定したライムが気合を入れるように自らの頬を両手で叩いてから分かる目の前の問題から片付けねばと立ち上がり控えていた使用人へ片付けを頼むと騎士団と合流すべく部屋から出ていった。




