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Gaillardia・Coral   作者: 海花
森の国
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◆ディアスへの帰路⑤

スマホを水没させて季節柄鬱も酷くなってきましたが、私は元気です。

「ここは……大陸の台所と名高い……ディアスじゃないか

こ、こんな所に俺達みたいなお世辞にも行儀の良くない連中の働き口なんてあるのか……?」


畑仕事はやったことねぇぞ。と顔をくもらせる傭兵のリーダーにお前達は前線送りだぞ。とセンが明るく告げる。

道中はそれなりに時間がかかり、ライム達の想定の倍以上の時間がかかったが誰1人欠けることなく辿り着けた事に安堵していた傭兵達は此処で仕事が……と目を白黒させている。

初めこそ全員が1日1食となり、傭兵達は遠慮していたが

狩りでの獲物を共有したり途中で遭遇した商隊から食料や薬を買い足し、おなかいっぱい食べても大丈夫、と言われた傭兵達の中には泣き出すものまで居たが、無事にたどり着いてしまえばそれはそれで良い思い出となる。

辿り着いたセンとキーの故郷であり、ナツ達が数日前に出発した交易都市ディアスの門前で

騎士団と元傭兵団達は高く聳える防壁とその周囲で開かれる市に、都市に入るための手続きに並ぶ商人や観光客を前にして凄い、と感嘆の溜息を着く。


「まぁ、うちは農耕で栄えた国だから農作業初心者だろうが筋トレ代わりに畑は耕してもらうぞ。

他にもあるが、農作業と言うには簡単すぎる農家の手伝い程度で基本はうちの私兵として周囲の警備や有事の際の訓練がほとんどだと思うぞ」


キーが疲れたような声で肩を竦め門の衛兵へ顔を見せ通してくれ、と声を掛けると慌てたように衛兵は相棒である若い方を伝令へ走らせて自らは胸に手を当てて膝を折り、おかえりなさいませっ!と頭を垂れる。

その目の前を当然のように馬車で通過していくのを随伴する傭兵団達が居心地悪そうに着いていく。


「……なぁ、キーの嬢さんはすげぇいいとこの娘なのか?」


「ここの領主の娘の補佐だ、大した家ではないから気にしなくていい」


ナツが聖王国の王女とは聞いていたが他のメンバーもそうだとは思っていなかったらしい元傭兵のリーダー、ラジェが都市の門番に顔パスできるキーへ恐る恐るという声で伺うように声を掛けるが別にそうじゃない、と肩を竦めて返す。


「キーの家はうちの祖先が昔、兄弟で分家したときの貴族で私の幼馴染」


「分家……」


あっけらかんとするセンの説明に元傭兵のリーダーが使用人じゃなくて貴族じゃねえか。と遠い目をする。


「まぁ、候爵令嬢と伯爵令嬢として扱われると背中の辺りがムズムズするからちょっとえらい冒険者組合の人くらいに思ってくれればいいよ」


不敬罪で首刎られないよな……と自分の首をさする元傭兵のリーダーが心配する中、私も自分が貴族だと思ってないから殺さないよ。とセンが我慢の限界とばかりに吹き出す。

すぐそばにいたキーが汚ねぇ。と顔を顰め、ナツはセンとキーは親戚同士ってこと!?とワンテンポ遅れて理解したらしい驚きの表情を浮かべる。


「リーファス家に雇われるなら外面的な意味で基礎的な礼儀は叩き込まれると思いますし、今更心配するだけ無駄ですよ」


どうせあの場でほぼ全員死んでいたでしょうし。という言葉を匂わせたライムの言葉にそれもそうか。と命の危険を感じていた傭兵達はホッとしたようにため息を吐く。

ふとここから出る時のセン達の様子を思い出したライムはほとんど家出状態で魔王討伐の旅に同行してきたのを思い出して、すごく面倒な予感を感じてさらに深い溜息を吐く。


「ライム、そんなに溜息ついてると幸せが逃げちゃうよ……?」


何度も溜め息を吐くライムにナツが心配そうに声を掛ける。

その向かいで逃げた幸せは地獄の果まで追いかけて捕まえないとね。と笑い転げるセンにライムは誰のせいだと、と言いたくなるのをぐっと堪えてそうですね、と適当に相槌を打つ。

そのライムの様子を馬車の端で見ていたゐぬが苦労してるなぁと言う顔でそっと合掌すれば、ライムの視線が僅かに険しくなり、八つ当たりのように拳大の氷塊がゐぬの頭上に落下し、小さく上がった悲鳴にライムが小さく鼻を鳴らす。

その後ろから子供の歓声が上がりライムとセンはほんの少しだけ馬車から顔を出す。

歓声を上げたのは後続の馬車に乗っていた子供達のようで初めて訪れた街に興奮している様子で馬車から顔を出しては母親達に叱られている。


「平和そのものですね」


「そうだね、私達でこの笑顔を守る為に魔王を倒しに行かないとね」


ライムの呟きを拾ったナツが頑張るぞ。と意気込むのをちらりと見たライムが再び小さくため息をつく。


「せめて攻撃を当てられるようになってから言ってください……」


ライムの疲れたような声がため息と共に空気に溶けていった。

悲しい不慮の事故でスマホを水没させまして、

データが飛んだかとヒヤヒヤしたのですが

何とか古いスマホが蘇生しまして

新しいスマホへデータ移行出来ました。

最近のスマホはテキストデータも全部自動で移動してくれて大変感動しました。

(仕事で使うアプリのアカウントデータは飛んだまま帰ってこなかったので偉い人にヘルプしないといけませんが……)

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