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Gaillardia・Coral   作者: 海花
森の国
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◆ディアスへの帰路③

ライムが気付き叫んだ事で止まった馬車へ傭兵崩れと思われる盗賊集団が襲い掛かったのは先刻の話。

土煙が舞い上がる激しい戦闘の末に、多くの怪我人を出して、勝敗が着いた。

戦力の差が大き過ぎたせいかこの戦闘で生じた多くの怪我人は全て盗賊である。


「さて、キリキリ吐いてもらいましょうか」


【黎明の黒翼】副団長であるリナリアがカツカツと肩に担いだ剣を鎧にぶつけて威嚇しながらニッコリと爽やかな笑顔を浮かべて恫喝している。

その横でライムが無表情で魔力の冷気で盗賊を囲み寒さと恐怖でガタガタと震える盗賊達を感情のない瞳で見つめている。


「何故、この馬車を襲った?

盗賊なら狙うのは商隊だろうに、我々を襲うメリットがお前達には無いだろう?」


そんな女性二人を宥めながら団長であるガリウスが穏やかな声で尋問をはじめる。

2人が別に話など聞かずに殺してもいいのでは?どうせ大した理由などありませんよ。と言いたげな中で

理由があっての事のはずだ、と見下ろしてこそいるが口調の柔らかい団長にもしかしたら、と盗賊達が希望を見つけたような顔をする。


「話を、聞いたんだ。

勇者となった聖王国の王女殿下がこの近くに居るって。

勇者と言ったってずっと箱入りだったお嬢様で戦闘経験はなく、付いているのも女性だけだから、簡単に捕まえられるって……!」


「聖王国の王女殿下が……?」


「どう見ても男性のガリウスさんに、ジルさんもいますし、しかもあの有名なマーロックの騎士の1個小隊が護衛してる前情報と違いすぎるこの一団に勝てると思ったんですか?」


命だけは助けてくれ、俺達は盗賊としては誰も殺してねぇ!と命乞いのような声を上げる盗賊の言葉にはて、誰の事だろうか、と首を傾げるガリウス。

その横でますます冷めた目で地面に座らされている盗賊達を見下ろしたライムが馬鹿なのか?と感情を隠しもせずに尋ねれば、いくら騎士様でもこちらの数で押せば王女を捕まえることくらいできると思った、という旨の話を始めた盗賊達。

その言葉にクズはこれだから。と呟いたライムの放つ冷気で更に震え上がる事になる。


「ちなみにそれ……誰に、聞きましたか?

知ってることはすぐに休まずに全部話してください。

でないと……その手足、ちぎれてしまうかもしれませんよ」


にっこりと微笑むライムの魔力で一段と下がった気温に盗賊達の立派とは言えない装備が凍り始める。


「しゃ、喋る……っ、な、なん、なんでも、喋る……だから……っ!」


「聞いたことだけ答えてください」


震えながら気温を上げて欲しいと懇願する盗賊にライムの温度のない視線に盗賊達はヒェッと悲鳴を上げて身を寄せ合うようにして震えながらも我先にと役に立つと思うことを話し始める。


曰く、彼らは食い詰めたタイプの元傭兵団だという。

彼らが活動していたのはもっと北の魔王領に近いところで戦線が下がってきた時に襲ってくる魔物に領主から住民へ避難命令が下ったのだと言う。

その際に国境沿いからの避難における魔物からの護衛を頼む依頼主の貴族が何人かいたがその誰もが実際に魔物の集団から襲撃された時に彼らに殿を命じて逃げ去ったのだという。

命からがら魔物を退け追いかけた貴族たちは依頼報酬の支払いをせずに逃げた先の別邸で「契約書は偽物だ、お前らは偽の依頼書で貴族を強請る詐欺師集団として衛兵に突き出してやる」と脅して追い出してしまったらしい。

そのせいで今日の食事もままならいような状態になってしまったらしい。

通りで魔物を狩りそれらを食べ、素材を街で売り何とか食いつないでいたところに現れたのがフードを被った怪しげな自称情報屋。

その情報屋に聖王国の王女殿下が勇者となってこの辺りに来ており、護衛も女魔術師1人だから人数にものを言わせて捕らえることも容易いだろうと。

そして自分達のされた事を公表しながら王女殿下を人質として依頼料と支払い滞納の利子、それからこんな目に合わせた慰謝料を請求してやればいい。

彼女は王族。

全ての貴族の頂点なのだから、貴族の失態の責任は王族が取るべきだろう?と、そう唆されたのだと。


内容を聞いたガリウスは一瞬悲壮な表情を浮べ、途中からライムの尋問方法にドン引きしていたリナリアに至っては貴族の風上にも置けませんね、と憤慨している。

そんな騒いでいる声を聞いた馬車に残留していたナツたちが話は聞かせてもらったよ!と言って馬車から飛び出してくる。


「それは、大変だったね……っ!

私のおやつ食べていいよ……!」


話を聞いたナツがお腹すいたら悲しくなるもんね。と痩せこけ装備もボロボロの盗賊達へ自らのポーチに入れていたナッツを渡そうとしてライムに栄養失調の人にそんなもの食べさせたら死にますよ、と止められる。


「まぁ、どんな理由があろうとも雇い主の不始末を他人に求めちゃダメだな

盗賊として王侯貴族に捕まったんじゃあ処刑しかないぞ」


好奇心に目を輝かせるセンが近づかないようにガードしながら可哀想だけどな。とキーがなんとなしに呟いた言葉にナツがショックを受けた顔に変わる。


「ライム、ガリウスさん、どうにかならない……?」


ナツの懇願るような瞳にガリウスとライムは揃って顰めっ面を浮かべて小さな呻き声を上げる。

盗賊は死刑。大体世界共通の法律をどうにかする方法なんてあるか?と言いたげにライムとガリウスはお互いに顔を見合わせる。


「どうにかできるよ、たぶん!」


諦めろ、と説得しようと口を開きかけたライムの声を遮ってセンが状況に合わない明るい声で手を叩いてナツに向かってにっこりと笑みを浮かべ、嫌な予感を覚えたキーが対照的に額に手を当ててため息をついた。

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