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Gaillardia・Coral   作者: 海花
森の国
55/105

◆ディアスへの帰路①

「よ、よろしくお願いします」


【黎明の黒翼】のメンバーの任務を先に片付ける、という事で来た道を引き返す形になっているナツ達。

その最初の休憩時間に街で借りてきた馬車の荷台で揺られていたナツは背負っていた大剣を手に訓練をつけてくれるという【黎明の黒翼】のメンバーにぺこりと頭を下げる。

【黎明の黒翼】はリーダーであるガリウスを含めた正騎士5名とその従者であり相棒である従騎士が5名、治癒師1名の11人パーティである。

一般的に従騎士は従者も兼ねているので正騎士の5名の装備品という扱いなので冒険者の資格は全員有しているが、パーティとしては6名という扱いになっている。

今回の訓練では、そのメンバーのうちの1人から、まずナツの現状の実力を見るという事で従騎士の1人ルルカリアが主であるリナリアの命を受けてナツの手合わせの相手として向かい合っているのだ。

頭を下げたナツにルルカリアと呼ばれた女性従騎士はこちらこそ。と綺麗に伸びた背筋を曲げることなく腰から美しい所作で一礼する。

かっこいい!と言うような瞳で見つめるナツにほんの少し照れたような笑みを浮かべるルルカリアだが、リナリアから訓練開始の合図を受けると真剣な表情で練習用の刃を潰した剣を鞘から抜き払い油断なくナツの動きを見つめる。

背中の大剣を鞘から引き抜こうとしてビクともしない事を確認したナツはやっぱりダメかぁ、と溜息を吐いた後で諦めて鞘に納めたままの大剣を背中から外して両手に握り構える。


「構えは様になっていますね。

どこかで誰かに師事でも受けていた、と見受けます」


「一応やんごとなき方なので、教育の一環として軽く手ほどきは受けてると思います。

あとは旅の道中で知り合ったドリアードの研究者に護身として少し、と言ったところです」


腰を落としルルカリアとの間合いを詰める為に力強く地面を蹴ったナツの動きにガリウスがこれならそんなに教える事もないのでは?と言いたげな顔で呟く隣で同じように見守っていたライムがここまでは良いんですよね、とは言わずにガリウスに答える。


「やぁあああッ!!」


走りながら気合いの籠った声と共に身体を跳ね上げ、勢い良く振り上げた大剣を真っ直ぐに振り下ろす。

真っ直ぐ進んで真っ直ぐ振り下ろす、問題なく当たるはずの軌道。

しかしその剣は防御しようと構えたルルカリアの剣の遙か手前で地面に切っ先を沈ませ、走ってきた勢いのまま剣を振り下ろしたナツの体はそのまま剣の柄を支店にぐるりと宙を舞う。


「わ、わ……っ!?」


咄嗟に半身を捻ったルルカリアが回避した先で受け身を取り損ねたナツがそのまま地面に尻もちをついて跳ね上がり、そのまま地面を数度転がって漸く止まる。


「……あの、大丈夫、ですか……?」


咄嗟に避けてしまった、と若干気まずそうな表情のルルカリアの声にヨロヨロと起き上がったナツはそのまま地面に大の字になる。



「もぉー、なんで当たらないんだよぉおおっ!」


解せぬ、と言いたげな顔で声を上げるナツはそのまま起き上がりルルカリアを見るとぶつからなかった?と逆に心配するように声を掛ける。


「え、と……その、はい。

私は、無事、です……その、ナツ様はお怪我は……」


「ちょっと打ったおしりが痛いけど、大丈夫!

勇者は丈夫なのが取り柄だから!」


心配げなルルカリアを他所にそのまま元気に大剣を引き抜いたナツがもう1回お願いします!と再び剣を構える。

しかしそれをリナリアが止める。


「当たらない原因も分かったので手合わせはもう結構です。

動きの修正と基礎訓練から始めましょう」


「あれだけで原因が分かったの!?」


剣もお仕舞い下さい。と告げられたナツは騎士って凄いんだね!と目を輝かせて改めてよろしくお願いします、と頭を下げた。

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