◆情報屋④
日暮れ少し前に噴水広場に戻ってきていたライムは難しい顔で虚空を睨み、キーははなから諦めていたのか持ってきていたモバイルゲーム機に商店街の中で配布していたデータを落とし込んだものを確認していた。
そこにセンと通りの向こうから猫背に糸目の青年を引きずるようにして歩くナツが現れる。
「お疲れ様です、勇者ナツ、セン……と、その人は……?」
「誘拐は犯罪だぞ……」
「違うよ!?」
その声に気づいたライムが先に顔を向けてナツとセンを労うが直ぐに連行されている哀れな青年に視線を向けてどういうことか、と理由を促す。
モバイルゲーム機からチラッと顔を上げたキーはさすがに擁護できないぞ、と顔を顰めるが、ナツが即座に否定する。
だったらなんなんだ、と言うライムの表情に気圧されたように1歩じりっと下がったナツとは反対にセンは得意げな顔で言ってやれ勇者!とナツをけしかける。
「……あ、あのね。
センが探してた情報屋、この人」
「は?」
「なるほどなるほど……え、本当ですか?」
言い出しにくい、と言うように少し言い淀んだあとのナツの発言にキーはゲームの手を止めて訳が分からないと言う顔でナツを見詰め、なんて叱るべきか、と適当に相槌を打っていたライムは目を開いてナツにずいっと近づく。
「嘘なんてつかないよ……!」
ライムからじりっと半歩下がったナツが必死に訴える。
「はじめまして、私は皇国宮廷筆頭魔導師、ライム·コレットと申します。
ここにいらっしゃるのはやんごとない方々であり、魔王討伐の旅に出ております。
情報屋、あなたが既に魔王領について情報を持っている事は既に掴んでいます。
魔王領について知ってることがあれば情報を提供してください」
そうですか、とナツから離れたライムが青年の前に立つとカツンと杖を石畳の床にた叩きつけるようにしてから丁寧な口調で、しかし有無言わせぬ圧をかけながら青年に訊ねる。
「先に金額を提示して貰えないんです?」
偉い人とかやだなぁ、と言う感情を隠しもしない表情の青年が僅かに眉間にシワを寄せる。
その言葉にライムが難しい顔をする。
「情報屋、と言うものを使ったことがないので真偽は知りませんが……情報屋は情報で情報を買うことがあるんですよね?」
ライムの確認するような言葉に怪訝そうな顔をした情報屋の青年にあるんですよね?とライムが念を押すように訪ねる。
その表情についっと目を逸らした情報屋の青年は内容によります、と小さく答える。
その言葉に満足気な笑を零したライムが情報屋の青年の耳元で何かをヒソヒソと囁く。
その内容に目を開きそれから面白いと言わんばかりに口の端が持ち上がっていく。
「それ、本当なんです?」
「さぁ?信じる信じないは勝手ですし裏取りは情報屋の仕事ではありませんか?
さぁ、提供した情報の対価に情報、頂けます ね?」
話し終え、離れたライムに情報屋の青年が信じられない、というような顔をするがライムは涼しい顔でニコリと微笑んではぐらかした。




