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Gaillardia・Coral   作者: 海花
森の国
43/105

◆異常発生⑦

戦況は拮抗していた。

センの砲撃と吊りチキンの進撃、キーの魔法の矢の雨にライムの氷の槍の雨、それらで大半を削っても尚、自警団や他の戦闘技術を擁する者が戦っているが、それでも討ち洩らしが街に数匹侵入したり、魔獣に襲われて被害がではじめている。

高台から見ているライムは、地面に倒れた自警団の1人に群がる魔獣とここまで聞こえてくる断末魔の絶叫に何が起こっているのか、恐らく生きたまま魔獣に四肢を、内臓を食い漁られて居るのだと想像して吐き気に耐えきれずに近くの茂みに嘔吐する。


「魔獣が人を食べるとか、聞いたことも無いです……」


「今回は、凶悪性マシマシだな……、ゲームで言うベリーハードモードみたいなもんか……?」


盾を持っていないものを守る為にそちらに集中して魔法やを放つキーは吐いているライムを見なかったことにしてくれるようで小さな呻きに、静かに戦場を俯瞰しながら顔を顰める。


「こいつはいくらなんでも異常すぎるだろう……」


これが魔物の異常発生(スタンピード)だとしても通常と異なる行動をとる個体が多過ぎるのだ。

見えない悪意が働いているようでキーは嫌な予感が止まらなかった。

それでもセンに撤退提案が出来ないことも分かっていたキーは強く歯を噛み締める。


「例え、どのような状況でも己にできる精一杯をやるのみです……!」


地面に膝をつき一通り吐いていたライムがそれでも自らを叱咤するように杖を1振りすると無詠唱にも関わらず平原の広大な範囲にいる全ての人間全てに広範囲回復魔法(レストーティアムウェリオ)を使うとキラキラと輝く光の粒子の雨が降り注ぎ傷の塞がった騎士や自衛団の歓声と共に下がり気味になっていた全体の士気が再び上がり出す。

それでもギリギリと押される戦線にキーが歯噛みする。

センの方は弾丸が尽きたのか、先程慌てたように撤退していたのを確認しているキーはライムのできることをやる。と言う言葉に半ば縋るように魔法の矢を絶え間なく放ち続ける。


「いやぁ、参った、参った。

もう街は放棄して館で籠城戦かもしれないね」


坂道を登って現れたセンは困ったような苦笑いを浮かべて、後頭部をかきながら一応戦線は下げてるんだけど街は大半がダメになる覚悟が必要だね。と言って肩を竦める。


「住民の避難が終わっているのが不幸中の幸いだな。

総力戦ならまだ、見込みがある」


もうすっかり諦めてしまっているセンの様子にキーも溜息と共に応え、即時撤退し、総力戦の準備をするか?とセンの指示を仰ぐ。


「もし撤退するなら、殿は私がつとめます。

人々を守る事は宮廷魔導師の仕事ですし、それに私は皇国の盾です。

盾は国が変わろうともそこにある限り命を守る為にありますから」


任せてください、とライムが杖を握り直し、力強く胸を叩いてみせるが、力が入り過ぎたのかすぐにむせて咳き込む。

本当に大丈夫だろうか、と言う表情をセンとキーが浮かべ、キーが何かを言おうと口を開いた瞬間に辺りが突然昼間のように照らし出され、頭が割れるような凄まじい音が鳴り響き、暴風が吹き荒れ空気がビリビリと震え出す。

咄嗟に耳を塞ぎ姿勢を低くした3人は光の方向、先程まで人と魔獣が入り乱れていた草原の方へ目を向ける。

そこには、目もくらむような黄金の輝きを放つ巨大な鐘が空中に浮かび上がり大きく揺れる度に音を鳴り響かせ、その度に重力が増したように真下にいる魔獣から順番に膝をつき、そして消滅していく。


精霊の聖鐘(クローフィエスガーフン)……」


それに心当たりがあるらしいライムの呟きにセンとキーがお互いに顔を見合わせる。


「皇国の教会がここに出張ってきた、って事か?」


キーの疑問にライムが首を振る。


「仮に皇国の教会がこの危機に力を貸してくれたのだとしても、この規模の儀式魔法を私が気づかないはずがありません。

それに……これは神話級の古い魔法ですから、人間どころか、それこそ精霊でも原初の精霊と呼ばれるくらいの最上位の精霊しか行使は出来ないはずです……」


一体誰が、こんな事を……とライムが呟いている間に残存していた魔獣達は1匹も残らずに消滅していた。

引っ越しと夏休みが終わりました。

永遠に夏休みがいい、と思いつつ休みになると別の趣味に時間を費やしてすぐ執筆サボるので全然進んでません。

ついでにストックも無くなったので、ちょっと更新頻度下がるかもしれません、頑張ります。

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