◆異常発生②
「これは……」
「ありゃぁ……《魔物の異常発生》なんて可愛いものじゃなさそうだね」
《魔物の異常発生》が迫るという平原を見下ろせる崖の上から状況を確認したライムが息をのみ、センも隣にしゃがみこみ、額に手をかざすようにして昇る土煙と黒い点とはいえ平原を飲み込むように迫る魔物に口調だけは軽いがその顔は眉間に皺が寄っている。
「やる事は変わらない。
騎士団と傭兵団は配置についてるし、騎馬隊が住民避難を呼び掛けてる」
「さすがキー、仕事が早い」
そんなセンとライムのやや後方に控えていたキーがマジかよ。と顔を顰めつつセンに報告する。
そんなキーに膝を打って立ち上がったセンが死なない程度に頑張りますか。と伸びをする。
そこに気負いはあまりなく、キーもこれは流石にめんどくせぇとか言ってる場合じゃねぇしな。と首の後ろに手をやりながらため息をつく。
「じゃあ、また後で!」
「本当に私がそばにいなくていいんですね?」
装備を軽く再確認したセンが崖を降りる道へ歩きながら振り返る所にライムが最終確認のように声をかける。
「へーきへーき!
じゃあ、キー。
その白魔法使いさんの事、よろしくね!」
「任された」
「ご武運を」
片手を上げて笑顔で答えるセンにキーが一礼し、ライムは杖を強く握りしめてセンを真っ直ぐに見つめて声をかける。
そこに現れた迎えに来たであろう騎馬隊の1人に馬上へ引き上げられたセンが町の方へ下っていく。
ライムとキーの眼下では逃げ惑う人々の群れがひとつの生き物のように街の間で蠢き、逃げる際に起こったであろう火災に白煙と赤い火の手が見える。
窓から見えていた赤い色はどうやら火災だったらしいとライムが気づくとひとつ目を閉じて歌うように言葉を紡ぐ。
「冷たき棺、時の流れ、血の流れ《激流》」
高く杖を掲げたライムが杖の先から生み出しされた大量の水はライムによって空高くへ打ち上げられ、火の手が上がるが消火活動まで手が回ってなさそうな街へ雨のように降り注ぐ。
「一先ずこれで良いでしょう
キーさん、これから罠を仕掛けます
狼煙はもう少し待ってくださいね」
ふぅ、と息をついたライムが《魔物の異常発生》の先頭を走る黒い狼のような魔物が目視できる距離に来ている平原を見下ろして杖を握り締める。
「彼女達が居れば全軍を街の守備に回せるんですけどね……」
ライムの小さな呟きは誰にも聞かれることはなく、ライムが紡いだ歌に森の木々が震え平原の草までもが風もないのに不自然に揺らぎ出す。
それをキーは感情を悟らせない表情で見つめながら手にしていた球体を僅かに握りこんで開戦の瞬間を待った。
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