◆奇祭③
「突然蹴飛ばして謝りもせずにどっか行っちゃうなんて、ひどいと思うんだ!」
両手いっぱいに紙袋に入った荷物を抱え込んだナツが串焼きを頬張りながらぷんすこと怒りを示す。
「勇者ナツの怒りはもっともですが、それはそれとして……その荷物はなんですか?」
「ええっとね……。
野兎の串焼きと揚げ芋と、魔羊の串焼き、魔王焼きに、ハーピィの卵揚げ、蛇鶏の天ぷらでしょ、あとトマトに冷やしきゅうり……」
もうもう、と怒りながら八つ当たり気味に串焼きを頬張るナツにライムがちょっと目を離した隙にいつの間に……と言いたげに訊ねるとナツが紙袋の中身を説明していく。
まだまだ続きそうだったのでライムが待ったをかける。
「そんなに食べるんです?」
「だって怒るとお腹空くし」
まさかとは思うけど、と言いたげな顔で訊ねるライムにナツが不機嫌だと示すように眉間に皺を寄せて唸るように返す。
「夕食、食べられなくても知りませんよ」
「大丈夫、それは別腹だから」
はぁ、とため息をつくライムの呆れたような声に任せて、とナツが小さなガッツポーズを返す。
そういうことではないんですけどね、と呟くライムのため息がますます深くなる。
それからそっと遠くを見て前途多難ですぅ、と小さくぼやく。
「やぁ、楽しんでるかい?」
「え、うわ、うわぁぁぁああっ!」
並んで歩く二人の間からぬぅっ、と顔を出したのは鳥の仮面被った少女。
ナツにはばったりトラウマになったのか悲鳴をあげながら尻もちをついて、少女を指差し鳥人間!と叫ぶ。
反対にライムは無言で杖を握りしめ殴る寸前でポニーテールの少女に杖を握られて仮面の少女を殴打する事を阻止される。
「鳥人間とは失礼だなぁ、私はれっきとした人間なんだけど」
苦笑した少女がほんの少しだけ仮面をずらして素顔を見せて苦笑する。
紫色の癖のある短髪に彩られたオレンジの瞳が悪戯気味に細められる。
「まぁ、このお祭りの間だけは祖である鳥人間でもある訳だけど」
「セン」
カラカラと笑いながら仮面を被り直した少女にポニーテールの少女が溜息をつきながら声をかける。
セン、と呼ばれた鳥の仮面の少女はあぁ、そうだね。とポニーテールの少女に頷くとナツとライムの正面に立つと画面越しに真っ直ぐに見つめて2人に告げる。
「2人を私の家に招待するように言われたから迎えに来たよ」
その言葉にナツとライムの2人はお互いに顔を見合せ、ポニーテールの少女は面倒くさそうに静かにため息をついた。




