◆ドリアードの村②
「あの……黒い悪魔を、倒してくださって……その、ありがとうございます。」
この先にあるというドリアードの村に向かう途中でドリアードの少女は頭を下げる。
話を聞くと最初の襲撃でお姉さんの本体である樹木を切り倒されたらしい。
姉の敵討ちができた、と淡い笑みを浮かべる。
役に立てたなら良かった!と笑顔で返すナツにドリアードの少女が村で宴と宿の用意があるからゆっくりして欲しい、と告げる。
「村、があることにも驚きましたが、宿まであるですか?」
ライムが驚いたように何度も瞬きしてから予想外のことを聞いたとばかりに聞き返す。
ライムの心底驚いた声音にナツがそんなに珍しいことなの?とコソコソとライムに問いかける。
そんなナツに珍しいどころか学会がひっくり返るくらいのことです。とライムも釣られたようにコソコソと返事を返す。
「驚くのも無理はないよな!
私達は植物の魔物だし、人間のように雨風を避ける必要もなければ環境に適応するので寒暖を調整する必要も無い。
そんな私達が集落を作って、宿まで作る。
驚くなという方が無理ってもんだよな!」
「あ、あの、その……、宿と言っても、山小屋くらいのもの、ですので!」
2人がコソコソ話していると良くに日焼けたような茶色の肌に赤い髪の毛を木の蔓でひとつに束ねている黄色い瞳の吊り上がった快活そうなナツやライムと同じ歳の頃の少女がナツと肩を組むようにして声をかけてくる。
ど、どちら様……っ、と慌てるナツにだ、ダメだよぅ。と最初のドリアードが泣きそうになりながら赤毛の少女を引き剥がしながら宿について補足する。
「おまえがおせぇから迎えに来てやったんだろうが。
ったくよー、ちょっとくらい人間らしく振舞ったっていいだろー?」
「こまってる、から……!」
腰に抱きつくように引き剥がしに来た少女の額をグリグリと指先で弄る赤毛の少女にそれでも!とドリアードの少女が涙目で訴える。
「困ってんの?」
「困って……困ってるのかな?」
「困惑はしてると思いますよ、私も困惑してます。
ドリアードは色んな肌髪の色だと聞いていましたが性格までこんなに千差万別だと思いませんでした。
あなたもドリアード、でいいんですよね?」
えー、うっそだぁ。という赤毛の少女の問いかけにナツが首をかしげ、ライムがため息を着く。
「おう、私もこいつもドリアードだぜ」
「離して、ください!」
茶髪のドリアードの首に腕を回した赤毛のドリアードの笑顔と対照的に茶髪のドリアードは心底嫌そうな顔で首に回ってる腕を叩く。
「村長達が宴の用意してっからさ、早く行こうぜ」
「宴!?
美味しいもの出るかな?
ライム、早く行こう!」
気にせずにレッツゴーと歩き始める赤毛のドリアードの言葉にナツが目をキラキラと光らせて先程までの元気のなさらどこへやらと元気よく歩いていく。
その後ろを慌ててついて行くライムが離してあげてください、死にそうですよ。と注意して漸く開放された茶髪のドリアードがライムと目を見合わせて2人揃って派手なため息を零した。