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それぞれの前夜③

 この日は早めに夕飯を済ませ、時間は夜の七時になろうとしていた。その時、突然藻香が素早い動きでテーブル上のリモコンを手に取り、テレビ番組のチャンネルを回す。

 すると画面にでかでかと『陰陽おんみょう巫女みこ』というタイトルが表示されアニメのOPが始まった。

 既に藻香と楪さんはテレビの正面に座り食い入るように画面を見ている。さっきまで談笑していた二人の変貌に、さすがの姉さんも驚きを隠せないでいた。


「な、なんや。何が始まったんや?」


「ああ、もうそんな時間か。あれは陰陽巫女っていうアニメで女児と成人男性に人気のある作品でね。藻香と楪さんもお気に入りなんだよ。放送中はうるさくしたり二人に声を掛けちゃだめだよ。すげー怒られるから」


「「は……はあ……」」


 呆ける美琴姉さんと春水が見守る中、アニメは着々と進行していく。後半のパートに入り戦闘が始まると巫女服を纏った主人公の女の子たちが敵と格闘を始めた。


晴明せいめいに代わってお仕置きよ!』


 いつもの決め台詞を言うと目にも留まらぬパンチの連打が敵である妖怪の腹に叩き込まれ、蹴りで地上に叩き落とすとその衝撃で爆発が起こる。

 ちなみに巫女服の下側はミニスカートになっているので、かなりの頻度でパンチラが映る。

 それを観た春水は小声で俺に説明を求めてきた。


「なんだあれは。陰陽師なのか巫女なのか分からないが、どうして肉弾戦をしているんだ。彼女たちは武器や術が使えないのか? それに火薬を使ってもいないのにどうして爆発が起きるんだ? 謎だらけだ」


 初めて観た者にとっては確かに疑問だらけだろう。俺もそうだった。


「一応武器は持ってるし必殺技もある。でも、それは止めに使うだけで主にパンチやキックで戦うんだ。それと爆発演出については深く考えるな。戦いは派手さが大切なんだ」


「そういうものなのか……」


 再びテレビ画面に注目すると丁度必殺技で敵を倒すシーンが映った。


『ひ~っさつ! 月光岩盤落としぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』


 主人公が巨大な岩を持ち上げて空中から地上の敵目がけて叩き落とすと、再び大爆発が起きて戦いは終了した。


「必殺技も物理攻撃じゃないか!」


「そうだよな~。物理って強いよな~」


 この展開に慣れっこの俺は深く考えずEDを観ていた。

 そして番組が終了すると、藻香と楪さんが満足そうな表情で今回の話の感想を話し合う。


「今回も面白かった~。やっぱり主人公ヒカリの必殺技は派手でいいわね」


「本当ですよね。それにヒミコちゃんの灼熱バーニング地獄インフェルノも最高でした」


 年頃の女性二人がアニメの必殺技でキャーキャー言っているのを見て春水はついていけなくなったのだろう。それ以上何も言うことはなかった。


「実は今、月光の巫女ヒカリちゃんのコスプレ衣装を作っているんですよ。完成したら藻香ちゃんに着てもらいたいんですけどいいですか?」


「わぁ~、マジで? 楽しみすぎる」


「そしたら私は土の巫女アスカちゃんのコスするんで一緒に写真撮りましょう!」


 今度はコスプレの話が始まり美琴姉さんが興味を示した。なので俺が説明をする。


「楪さんはコスプレが趣味なんだよ。そのコス衣装も自分で作ってんの。更に言うと、楪さんのメイド服姿の破魔装束も自作らしいよ。この『中崎陰陽退魔塾』勤務を希望したのも、この土地が破魔装束の材料である破魔絹の名産地だからってことらしい」


「あそこまで生き生きした表情の楪を見るんは初めてや。まさかそんな趣味があったとは……」



 それから時間は流れ、藻香、楪、美琴の三人は一緒に入浴していた。

 

「洗いっこしよか!」


 美琴のこの一言が全ての発端だった。藻香と楪が横並びの形で座り、その後ろに美琴が待機している。

 この謎の構図に藻香は身体を洗いながら不安を感じていた。


「どうしてこんな形で洗いっこするの。普通一列に並んで背中を洗ってもらうんじゃないの?」


「確かにそうですよね。――はっ、美琴ちゃんまさか!」


「そのまさかや!」


 美琴は口角を思い切り上げて笑うと、後ろから藻香と楪の胸をわしづかみにした。右手に藻香の右胸、左手には楪の左胸を収めてモミュモミュ揉んでいく。

 痛くしないように強すぎず、だからと言って刺激が少なすぎないように絶妙な力加減でマッサージをするように、二人の豊かな乳房を丹念に揉みこむのであった。


「ちょ、や……あんっ、あっ、はんっ!」


「美琴ちゃ……んんんんっ、そこはダメですぅぅぅぅぅ!」


「二人共ええ声出すやないか。それにしてもなんちゅう暴力的な乳しとるんや、手に収まりきらんとは。それにこのマシュマロのような柔らかさ、水風船のような弾力、そしてきめ細かなホイップクリームのようなしっとりとした肌。まるで手に吸い付いてくるようや。あんたら、この男狂わせボディでいったい何人の男共を狂わせてきたんや? 言わなきゃ、このモミモミは終わらんで」


 途切れることのない甘い刺激に涙を流しつつ、先に口を開いたのは藻香だった。


「そんな人いない……わよ。だって私……処女だし!」


 藻香に続いて楪も耐え切れずに告白する。


「私も処女……です。男性と関係を持ったことは……一度もありません!」


「そんなことは訊いてない! うちが言ったんは何人の男を魅了したかどうかやで。あんたらが〝おぼこ〟であるかどうかなんて関係あらへんよ。罰として先っぽピンの刑や!」


 美琴は掌を藻香と楪の乳房の先端の方に滑らせると、その桜色の突起を人差し指で軽く弾いた。


「ふあああああああああああああん!!」


「それダメェェェェェェェェェェェ!!」


 浴室に響き渡る藻香と楪の甘美な嬌声を聞きながら、美琴は満足そうに笑みを浮かべるのであった。

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