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炎陽の退魔師~炎の刃を振う少年は白面金毛九尾の少女と共に妖怪を狩る~  作者: 河原 机宏
第一章 出逢い

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燈火、乳揺れを語る

「だぁ~!! くそぅ! せめてもっと大きく揺れてくれたらなぁ~」


 萩原が残念そうに言っているが、何をバカな事を言っているのだろうかコイツは。


「分かっていないな萩原。――そう、お前はぜんっぜん分かってない!」


「何が分かってないって言うんだよ? ってか式守、お前キャラ変わってないか?」


 余計なお世話だ。お前にあれの良さを教えてやる。派手に揺れていればいいと思っているお前は愚か者だとな。


「萩原よ、お前は胸が大きく揺れれば揺れる程いいと思っているようだが、度を過ぎれば単なる下品な脂肪の塊に見えてこないか? 故に! 今の藻香の胸の微揺れ具合は日本人の持つ慎ましさや気品を体現していると感じさせられる!!」


「日本人の慎ましさ……だと!?」


「そう! だが、あれの凄い所はそれに止まらない! よく見ろっ! 普段は慎ましい微揺れだが、時々大きく揺れている時があるだろう!!」


「……あっ! 本当だ! 確かに動きが大きい時がある!!」


「あの動きを見ていると俺はこう思うんだよ。あの藻香の胸の動きは日本人女性の淑やかさを見せながらも、時々見せる大きな揺れがその淑やかさの奥に眠る激しい情愛を表現しているんじゃないか……と」


「式守、お前――うん、何を言っているのか全然分かんねえ。派手に揺れている方が良いに決まってんじゃん! それにさっき玉白が勢いよく立ち上がって大きく胸が揺れた時、お前も『おおっ!』って言って釘付けになってただろ!」


「見てたのっ!? い、いやさ! あれはあれ、これはこれなんだよ!」


 意外と目ざとい萩原に驚かされつつ、授業そっちのけで俺たちはお互いの意見をぶつけ合う。

 その時、討論に夢中になるあまり自分たちの声が大きくなっていった事に俺たちは気が付かなかった。


「だから、縦揺れと横揺れの場合じゃ――」


「何が縦に揺れて横に揺れているのかしら。教えてもらえるかしら、燈火?」


 俺たちの後ろから怒気と殺意に満ちた声が聞こえ、恐る恐る振り返ると腕を胸の前で組んだ藻香が怒りの形相で俺と萩原を見下ろしていた。

 その隣には藻香と同じように軽蔑の目を向ける松雪と笑顔で殺意を向ける楪さんがいる。彼女たちの後方ではクラスの女子たちが虫を見るような目で俺たちを見ていた。


「何がって、それは、その、偉大な双丘の物語を話していたんだよ。その丘で地震が起きて大変だったという――」


「ふーん、そう。――で、その双丘が何なのか気になるんだけど?」


 あ、これはどんなに言い訳してもダメなやつだ。変なことを言ったら益々怒りを買うだろう。


「申し訳ありません。俺と萩原は藻香のJカップの胸を見て乳揺れの美学について生討論していました!」


「だ、誰がJなのよ!? 私、そんなにないし!!」


 藻香が両腕で胸を隠すようにしながら白磁の肌の頬を赤く染める。

 ――計画通り。本人から良い情報が得られたぞ。俺は萩原が怪しい笑みを浮かべたのを見逃さなかった。


「なるほどな、少なくともJカップ未満ってことか。という事はG、H、I辺りが濃厚か――」


「バカ、萩原! 声に出すな! 気付かれるぞ!」


 時すでに遅し。俺が再び藻香に視線を戻すと、さっきよりも睨みが鋭くなっている。身体が恐怖で震えてしまう。

 今まで戦ったどの鬼よりも恐ろしい殺気だ。師匠や姉弟子も怒った時は怖かったが、藻香のそれは生存本能に訴えかけてくるような恐怖を叩きつけて来る。

 楪さんも松雪も同様のレベルだ。

 俺は勘違いをしていた。師匠や姉弟子が特別に怖かったんじゃない。女性という生き物全てがこれだけの殺意を内包しているんだ。

 荒魂あらみたまが生み出す存在よりも恐ろしい者は常に身近にいたんだ。


「「「「この、エッチ! ドスケベ! 変態! 女の敵!! 最低----!!!」」」」


 体育館内に轟く女性たちの怒号。この日から、俺と萩原は校内の女性から軽蔑の目で見られる事となった。。

 ただ、萩原はどこか喜んでいる様子だったが、俺はそれを見て見ぬ振りをした。

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