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少年と少女が出逢った日④

 多悪霊荘の霊たちから成った妖は灰となって消え去り完全に消滅した。般若面の男は大きく溜息を吐き力尽きた妖を罵倒する。


「所詮は古い家屋に棲み付いていた低級の霊魂共だったか。予想以上に使えなかっ――」


 直後、金属同士が激しくぶつかり合う音が境内中に響いた。

 燈火は一気に間合いを詰めて般若面の男に斬りつけたが、その斬撃は敵が構えた刀で防がれてしまう。


「いきなり斬りかかって来るなんて物騒ですね。それが由緒ある退魔師のすることですか?」


「妖やお前のように怪異を作り出すヤツは例外だ。そうだろう妖術師!」


「――ふん!」


 般若面は鼻を鳴らすと自身の刀で燈火に斬りつけるが、今度は燈火がそれを防ぐ。

 月下の境内で行われる剣戟は次第に激しさを増すが、般若面は何かを察知すると燈火から距離を取った。


「どうやらお仲間がここに向かっているようですね。さすがにこれ以上敵が増えるのは遠慮したいところです。――今日はここまでにしておきましょう」


「逃げるのか?」


「今回は予想外のゲストがいましたからね。あまりにも準備不足でした。でもね、これが終わりではありません、むしろ始まりにすぎませんよ。あなたが彼女を守り切れるかどうか、今後が楽しみですね。――では、また」


 般若面が地面に黒い護符を投げつけると、そこから大量の煙が発生し月の光をも遮り周囲が暗くなっていく。

 

「くっ、煙幕か!?」


 燈火は急いで藻香たちの所に駆け寄り、敵の攻撃に備えて刀を構える。しかし、敵が襲ってくる様子は見られない。

 やがて煙幕が風に流され月の淡い光が再び地上を照らすと、既に般若面の男の姿は彼らの前から消えていた。


「逃げられたか。敵ながら見事な引き際だな。――無事か、藻香?」


「ええ、私もお婆ちゃんも大丈夫。かすり傷一つないわ」


 燈火は緋の兼光を鞘に収めながら藻香と吉乃の安否を確認し、二人に怪我がない事が分かると安堵の表情を見せる。

 

「そっか、良かった。――少し待っててもらっていいかな? ちょっとやりたいことがあるんだ」


「分かったわ」


 燈火は二人から離れて、境内のとある場所で手を合わせる。その場所は多悪霊荘の妖が燃え尽きた場所だった。

 藻香と吉乃も少し遅れて燈火の両隣に立って一緒に合掌した。

 ――数分後、霊たちの供養が終わると藻香は目の前に立つ黒装束を纏った少年に問う。


「式守君、助けてくれてありがとう。それで、あの、命の恩人にいきなりこんな事を訊くのは失礼だと思うんだけど。――あなたはいったい何者なの?」


 燈火は赤い瞳を金色の瞳の少女に真っすぐに向けて話し始めるのであった。


「俺は京都の『六波羅陰陽退魔塾』より君を守るために派遣された退魔師、式守燈火だ。よろしく頼む」


 燈火は改めて自己紹介をすると藻香に手を差し伸べ、彼女は少年の手を取り握手を交わした。


「よ、よろしくお願いします」


 この二人の出会いが、千年以上続く『陰陽退魔塾』と鬼の集団である『百鬼夜行』との戦いに大きな影響を与える事をこの時はまだ知る由もなかった。

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