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旅人アランの冒険譚  作者: when
2/2

旅立ちの時

見ている方がいらしているのか分かりませんが遅れて申し訳ない

アランは少々早足になりながら自分の家に帰る。

彼の家は木造の少し大きい家だが蔦が壁を這っていて年月が経っていると思わさせられる外見だ

そして家に着くなり戸を開けて

「親父、いるか?」


「…あ?なんだ、アランか。えらく帰りが早いがなんかあったのか」


家ではアランが順当に歳を取ったらこうなると思われる男が近くに剣を置き、1人寂しく昼食をとっていた。

そう彼こそがソダシーニ村唯一の衛士にしてアランの父親、名をアベル・ベッジという

妻は体が弱くアランが物心つく前に亡くなっている


「流石親父、話が速くて助かる」


「よせやい、照れるだろ。それで?」


「ああ、シェリルが魔王を名乗る不審者に攫われた」


アランが魔王と口にした時アベルは一瞬目を大きくしたがアランは気付くことは無かった


「…はあ?いや待てどうしてそうなる」


「俺が知りてーよ目的とか聞いたのに答えずそのまま空飛んでったんだから」


「それは置いといて」


「置いとけるか?」


「置いとくとしてシェリルちゃんだが、まあ、多分大丈夫だろ」


「俺もそう思う」


「だよなぁ、だってお前らが5歳くらいの頃だったか?確かそんくらいの時にお前が連れ帰るまで熊とか猪がいる森の奥深くで無傷だったし泣いたりしなかったんだろ」


「…まあ」


事実は違うのだが今更の話のためアランは曖昧に頷くだけだった


「ひょっこり帰ってきそうな気もするが」


そこで一旦止めアベルはアランの目を見つめる


「行くんだろ」


「まあな、昼飯食い損ねたし、シェリルの飯の代わりに俺が作ったところで上手くできん」


「素直に心配だって言えばいいものを、そういうのツンデレっていうんだったか?やめとけよ男がやったところで見苦しいだけだ。やるんだったら母さんみたいに若くて美人な奴がなあ」


「親父は母さんの話になると長くなるから帰ったら聞くよ」


「こっから良いところだってのに、それで場所は分かってんだろ」


「ここから北に1000キロくらいか?今も結構な速さで移動中」


「ほんとそれどういう原理なんだよ」


「何を今更、その話は俺がシェリル連れ帰った時からずっと考えてるけど結論出なかっただろ」


「それもそうなんだが気になるものは気になるだろ」


そう原理こそ不明だがアランとシェリルはお互いどこにいて、安全かどうかがわかってしまう。彼ら曰く自分の半身なんだからそれくらいのことはわかるとのことらしいが説明になっていない。


「じゃあ俺準備したら行くわ、親父は」


「わかってるってシェリルちゃんの身分証明書だろ。村長からは俺が説明しとくから準備と母さんに挨拶しておけ」


「わかった、路銀は?」


「貯金の6割まで許す、そんだけあれば大きな街まで持つだろ。そっからは自分で稼げ」


「了解、頼んだぜ親父」


「任しとけ」


そう言い残すとアベルは家を出て、アランは準備を始める。

手始めに食糧として干し肉と堅焼きパン、魚の燻製などを確保した。身分証明書、薬草と水を入れた革袋そして最後に調理用の鍋と雨よけの道具をリュックにしまい準備を終える。あとは道中で必要になったものを調達すれば良いと彼は考えた。


そして家の外に出て3分ほど歩き少し小高い日当たりの良い丘につく、そこには周りに何もなく一つの墓石があるだけで、その墓石にはミーニャ・ベッジという名前が刻まれている


アランは墓石の前にしゃがみ込み手を合わす、その表情は少しだけ寂しげだった


「なあ母さん、今からシェリル連れ帰りに旅に行ってくる。多分大変なこともあると思うから見守っといてくれ」


少し黙り込んだ後立ち上がると励ますかのように暖かな風が吹く


「行ってきます」


そう言って彼は墓を背にし自分の家に戻った


──────────────────────────────────────────────────

家に帰るとアランが戻ってくるのを待っていたアベルが家の前に立っていた


「準備は済んだな」


「ああ、いつでも行ける」


「これシェリルちゃんの身分証明書だ、頼むからなくすなよ。再発行の手続きとそのためにあそこまで行くのは面倒だから」


「わかってるよ、俺だって何度も役所に足を運びたく無いし」


「そうか、ではアラン・ベッジよ。聞いておかねばならないことがある」


アベルは雰囲気を変え、父親ではなく1人の男として声を出す


「…はい」


「今回の旅、今までに経験のしたことのない困難が降り注ぐのは想像に難くない、心が折れそうになったり、命そのものが危ういことになるかもしれん、それでもやり遂げる覚悟はあるか」


その場に他に誰かいれば震え上がらせるほどの威圧、それを真正面からアランは浴びる


「…そんなことはわかりきっている、それを覚悟した上でだ。親父は知らないと思うけどなあいつって意外と泣き虫なんだよ、普段は強がってばっかりでそんな素振りを欠片も見せやしないけどな。あの時だって1人で泣いていた。だからそんなアイツをほっとけるほど腐ったつもりはない!」


そんな威圧を吹き飛ばすかのようにアランは力強く宣言し対峙する男の顔を見つめる。そらしたら負けと言わんばかりに2人の男は睨み続ける。僅か数秒の出来事が数刻経っているかの様にように思えるほど重い場を崩したのはアベルの方だった。


フッと笑うと

「良い目をしてるぜアラン、それならこれから起こる困難だって乗り越えられるはずだ」

身に纏っていた雰囲気を崩した。

アランは息を吐き出し


「ふー、認めたってことでいいのか親父」


「ああ、もう大丈夫だ。しっかしアランお前大きくなったなぁ」


アベルはアランとの距離を詰めわしゃわしゃと少し痛みを感じるほど強く乱雑に頭を撫でる


「あんなに小さかったのにこんなにでかくなりやがって」


「うわっ、ちょ、やめろよ親父、俺もう16だぞ。子ども扱いされる様な歳じゃねえっての」


「馬鹿野郎、俺からしたら幾ら歳を取ろうが、姿形が変わろうが、いつまでも俺の子どもに決まってんだろ」


そう言って頭を撫でるのをやめる


「…親父」


「村長からの伝言だ、必ずシェリルを連れ帰って来いだとよ」


「任しとけって言っといてくれ」


「わかった、こいつは餞別だ。持ってけ」


アベルは腰につけていた剣を鞘ごと差し出す


「良いのか?これ親父が普段使いしてるやつだろ。そんなのくれて、仕事は大丈夫なのかよ」


「問題ないな。子が親の心配するなんて数十年早いって話だ。それとも何だ、剣を持たないくらいで俺が弱くなるとでも?そんな心配するなら俺に何かしら勝ってから言えよ」


「その言葉忘れんなよ、帰ったら絶対叩きのめしてやる」


「やれるもんならやってみやがれ」


両者睨み合うがそれも一瞬のこと


「じゃあありがたく貰っていくぞ」


「そうしろ、多分そろそろだと思うんだよな」


「何がだよ」


怪訝そうな顔で尋ねる


「安心しろ、悪い様にはならん。その時が来るまで楽しみにしとくんだな。お前の力になるはずだ。いいか俺の教えをよく覚えとけ、丁寧に扱い、それに」


「手入れと道具に感謝を忘れずにだろ。安心しろよちゃんと他の親父の教えも覚えてるよ」


「ならばよし」


「それじゃあ行ってくる」


「ああ行ってこい、気をつけろよ何事も命あっての物種だからな」


「わかってるよ、親父も仕事頑張れよ」


「言われるまでもねえ、さっさと行ってこい時間があるわけじゃないんだろ」


アランはアベルに見送られながら一歩を踏み出した。


これが後に世界をも救う男の旅立ちであることを今はまだ誰も知らない


──────────────────────────────────────────────────


「行ったか」


アベルはアランの背中が見えなくなると1人ぽつりとつぶやく、その表情は嬉しさと寂しさが入り混じっていた。その顔は見たものを何とも言えぬ思いを起こさせるそんなものであった


普段は服の下にあり見えない様になっているロケットを取り出し中に入っている写真を見つめる。その写真には今より若いアベルと若い女性とが写っている


「見てるかミーニャ、アランもあんなにでかくなって1人の男として立派に成長してるぞ」


写真に語りかける様に独り言を紡ぐ


「…しかし魔王か、やっぱり血は争えないもの何だろうな」


それだけ呟くと彼は自分の家に戻っていった。

展開が急すぎた気がする

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