一炊の夢~もえ萌え戦国絵巻~
敵は本能寺にあり。
紅蓮の炎が周りを包み、彼は己の最期を覚悟した。
その怒りに満ちた澄んだ目を閉じ、ゆっくりと舞う。
人間五十年、
下天のうちを比ぶれば、
夢幻の如くなり、
一度生も享け、
滅せぬもののあるべきか
織田信長・・・ここに死す。
・・・はずだった・・・。
「おい、信っち、信っち」
(誰だ。ワシの名を呼ぶのは)
「信っちって!」
「五月蠅い!」
信長は目を覚ました。
その前には少女・・・二次元の。
「なんじゃ!絵御伽草子から飛び出しおって!貴様、物の怪かっ!」
「ちゃう、ちゃう、おだん(俺は)は西国無双と呼ばれた立花宗茂たい」
「知らん」
「さもありなん。おだんは、秀吉様と家康様に仕えた戦国大名やけん」
「・・・戦国大名?絵巻女子の貴様が?」
「ああ、そげんたい」
「訛りの激しい女子じゃ」
「おなご、おなごっち、あーたも、女子よ」
「はっ、何を馬鹿馬鹿しい」
「見て、見んしゃい!ちっご(筑後)川の水面を」
信長は流れ緩やかな川の水面を見た。
・・・映った姿は・・・。
「どひゃー!」
「それみんしゃい」
信長は二次元萌え女の子キャラとなっていた。
面長な顔にくりっとした瞳で鼻や口は線で描かれ、一見幼そうに見えるが、胸やお尻などでているところは出ている。
しかも、やたら露出度の高い鎧を着ている。
「なんということだ!」
もう一度水面を見る。
「なんじゃ、この身体は、幼い娘のような顔をしていて、乳が異常に大きいではないか、これではバテレンの女子の大きさじゃ、なんというちんちくりんで面妖な・・・ワシ・・・」
「まぁ、まぁ、信っち、慌てないで」
「これが、慌てずにいられるかっ!」
「かの世界では、この姿が喜ばれるち」
「どの世界だ!」
「さぁ?聞いた話では日の本の未来げな」
「馬鹿馬鹿しい。ワシは行くぞ」
「待て、待てっち。秀吉っちが呼んどるばい」
「秀吉・・・サルか?」
「そげんたい」
「どこだ」
「信長・・・たまー!」
遠くから手を振りながら叫びながら、走って来る。
二次元萌えの女の子。
猿のような毛並みの茶色のぼさぼさ髪に、幼な顔、低身長・・・しかし、出るところは出ている。腰にはひょうたんを提げ、襦袢のような薄手の着物を纏っている。
「ひょうたん?あれはサルか・・・なんともはや」
「信っち、人の事言えんよ」
宗茂はツッコミを入れた。
「さもありなん、さもありなんよ!」
信長はキレ気味で答えた。
「信長たまー!信長たま!」
「なんじゃ、たまとは!サルお主も絵巻童女と化したか」
「そんなことより、信長たま、無事で何よりだぎゃあ」
秀吉は号泣しながら、信長に抱きつき、頬と頬をつけ、すりすりする。
「だあーっ!やめろ、うっとおしい!」
信長は、秀吉を背負い投げした。
「良かった。良かった。のう、宗茂」
「おだんは秀っちが喜んでくれて嬉しかとよ」
秀吉と宗茂は手を取り合って喜ぶ。
「もうよい!とにかく状況を説明せよ」
「おだんが思うに、ここは別の戦国時代」
「遠き先の日の本は、何かと萌えという文化が蔓延り、歴史の偉人をこんな風にする傾向にあるとか・・・我々もしかり・・・その代表「戦国〇女」「戦国コ〇クシ〇ン」「織田信〇の野望」「戦国〇姫」「信長の○び」そして、あやかるこの作品」
秀吉は真顔で言う。
「パ〇ンコ、パ〇スロ、アニメばかりで御座ろう」
宗茂はそう言い頷く。
「だはははっ!」
秀吉と宗茂は一緒に笑った。
「やめい、やめい、その説明は・・・つまり・・・ワシは生きておるのだな」
「はい、お館たま」
「はたしてそげなこつかな」
「なんで、そこ意見が矛盾しておる」
信長は溜息をついた。
「で、信長たま、如何いたしますか」
「信っち、どうするん?」
「急にグイグイ来るな・・・しれたこと、光秀を討つのよ」
「さすが、信長たま」
「信っちなら、そう言うと思ったばい」
織田信長、豊臣秀吉、立花宗茂は九州の一大勢力島津を打倒平定し、割愛に次ぐ割愛で中国地方へ戦いの場を進めた。
相手は毛利元就とその息子三兄弟だ。
信長達はそんな最中、懐かしい人物と出会う。
「お久しぶりですう、兄上い・・・お姉様あ」
葵の紋の入った軽装の鎧甲冑に身を包み、肩まで届く長い髪の毛に、頭に鉢巻き、目はくりっとしていて、鼻と口が線描き、やや丸顔、ぼでぃは出ているところはでて、鎧の横から、ふくよかな膨らみがはみ出している。
「家康か・・・貴様も女体化したのか」
「お兄様・・・って、お姉様あ、生きてらしたのねえ、本当に良かったああ・・・ちっ」
「今、舌打ちしなかったか」
「いえ、にっくき、逆賊、明智光秀共に討ち果たしましょう」
「よく言った家康っ!」
そんな訳で、萌え萌え四人娘は、毛利一族と対峙する。
手短に済ませる都合上、四対四の一騎打ちだ。
「では、私が行くう」
家康が進み出る。
「小早川隆景参る。宿怨に終止符を打つ」
ガチ萌え隆景は瞳に怨嗟の炎を燃やす。
「ふふふ、まだまだ小早川にはお世話になるのですう」
「笑止、死ねぃ」
すらりと鞘から剣を抜き、家康目がけ走り出す隆景。
すーっ、家康は息を吸い込み構える。
「究極集中、葵の息継ぎ、究極零式、葵之舞!」
円舞、舞いながら無数の太刀が隆景を斬り刻む。
勝負はあった。
「毛利家、吉川元春参る」
毛利の猛将とは思えないくらい、激萌えっ子元春が、自慢の長槍を身構える。
「んじゃ、おだんがいくばい」
西国無双宗茂が大槍をブンブンと振り回し、対峙する。
互いが睨み合い、間合いをとりあう。
一撃必殺の機会を狙う。
「ガチしばいたる」
「おだんは、強よかとよ」
二人は同時に飛び出す。
元春は渾身の一撃を繰り出すが、宗茂は寸前で顔を背けかわす。
「無双豪槍撃!」
槍に無数の捻り回転を加えた必殺の一撃が元春の左肩を貫いた。
「ぐっ!」
「おだんの勝ちばい」
「アタシ、がんばるよー」
秀吉は信長に手を振る。
しっしっと手を振り返す信長。
「毛利家嫡男、毛利隆元推参」
萌え萌え隆元は油断する秀吉の背後を狙い斬りかかる。
刹那に避け、素早い身のこなしで後ろへさがる。
「しとめきれんかったか」
「こらーっ、後ろからは卑怯よ」
「この戦国の世、正義も卑怯もない」
「・・・そうね、同感だわ」
秀吉はぺろっと舌を舐め、小太刀を腰近くに身構え、重心をさげる。
「天下人乃覇刃!」
隆元の一撃を頭上すれすれでかわし、数本の髪が斬れ乱れ飛ぶ中、空いた胴に一撃を入れる。
「なっ!」
隆元は倒れる。
「これが天に愛された者の宿縁」
「では、ワシの番か」
「毛利家当主、毛利元就じゃ」
萌え人、元就が立ちはだかる。
「悪いが、ワシの覇業の妨げになる者はすべて斬る」
「第六天魔王信長、引導をお渡しする」
元就は豪弓を持ち、大矢をつがえる。
「我が覇道に敵なし。業火布武斬!」
一閃した魔剣の一閃から、業火が現れ、放たれた大矢を焼き尽くし、元就を一瞬にして飲み込む。
「やりましたねお館たまっ!」
「さすがっ、信っち!」
「姉上見事!」
信長は3人を見渡し、大きく頷いた。
「よしっ!次はいよいよ光秀っ!」
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業火にまみれる本能寺。
信長は目を覚ました。
「ふっ」
苦笑をする。
一炊の夢か・・・。
人間五十年、
化天のうちを比ぶれば、
夢幻の如くなり、
一度生も享け、
滅せぬもののあるべきか
逝くか。
業火に飲まれ信長は消えて行った。
果たして、織田信長は。