第6話 あにき、いもうと
今回もお誕生日企画やゆーて、リアルの譁紗祢さんのお誕生日
来月やからって譁紗祢さんがメインのお話やわ。
しっかし、ヴァーリャと譁紗祢って…色々あんねんな。
日曜の昼下がり、珍しく譁紗祢は一人で天神橋筋3丁目の
喫茶軽食【きゃすたりあ】に来ていた。
天河鎮実の本日のおすすめコーヒーはモカらしい。
ただ、譁紗祢はブラックは苦手なのでカプチーノを注文したようだ。
「譁紗祢、ちじこは仕事か?」
「うんー」
少し物思いに耽る譁紗祢を上目遣いで見やりながら、
エスプレッソマシンでモカを抽出してカップに注ぐと
今度はフォームドミルク作りに入る。
エスプレッソマシンを使わず泡だて器で作るようだ。
「シゲさん、なんでそんな方法使うの?」
「譁紗祢、お前これ盗みに来たんだろ?万梨阿がゆってたぞ、
シゲさんの技術バリバリ習得するって」
「万梨阿めぇ…」
「ええやないか、ちじことヴァーリャに作ってやるんやろ?
せやったらかまへん、うまいモン飲ませたれ」
鎮実はマグカップに牛乳を入れると、
電子レンジで温め始めた。
「シゲさん…あたし、ホットミルク作るのを…」
「最 後 ま で 見 て ろ」
鎮実はぴしゃりと言うと、
温まったミルクを小さいボウルに移した。そして、
泡立て器を牛乳の表面に沿って空気が入るように泡立て始めたのだ。
「これだけ?」
「せや、これだけ?」
牛乳は段々と泡立ち始める。
「ほれ、泡立ったのがフォームドミルク。
それ以外がスチームミルクや」
そう言ってコーヒーにスチームミルクを注ぎ入れ、
最後にスプーンでフォームドミルクを淹れてカプチーノを完成させる。
「でけたぞ」
鎮実はカウンターで待ち構える譁紗祢に手渡す。
「ありがとう!」
譁紗祢は面映ゆそうに受け取ると、ゆっくりと味わい始める・・・。
『きちゃだめ…だめなんだったらだめなのっ…こないで…こないで…』
少女はすっかり怯え切っている。それもそのはずだ、
自分より大きい野良犬が自分に向かって威嚇しているのだ。
野良犬は完全に少女を見下した様子で威嚇を続けている。
田んぼ道の真ん中で、少女と野良犬は対峙していた。
買い物かごを手にした少女は完全に竦んでしまっている様子で、
野良犬から逃げ出せなくなっている。
野良犬はウーッと威嚇しながらじりじり間合いを縮めてくる。
『こないで・・・』
泣きたくても恐怖で声も出ない少女。
しかし、そこへ誰かが駆けつけてきた。
『こいつめ、こいつめ!!』
少女より少し年上の少年が、釣り竿を振り回して野良犬に迫る。
その竿がバシバシと野良犬に当たり、
犬はびっくりした様子で飛び上がるように後ずさる。
そして、標的を少女から少年に向けようとしている。
『おにぃたん!!』
少年の顔を見た少女は大泣きしながら大慌てで少年の後ろに走り出し、
少年のシャツをちぎらんとばかりに掴んで絶対に放そうとしない。
少年も少年で、必死の形相で釣り竿を振り回している。
野良犬は間合いを取ろうとするが、
釣り竿のリーチの長さが物をいうらしく、
近づこうものなら釣り竿がヒットして悲鳴を上げる始末である。
『くるなーくるなー』
そこへ少女がボロボロ泣きながらも、
近くの石や田んぼの泥を掴むと野良犬目がけて投げつけ始める。
下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、という言葉通り少女も必死である。
見境なく投げまくった事が功を奏したか、
大きめの石が野良犬の頭を直撃し、
野良犬は悲鳴を上げながら逃げていった。
『はぁ…はぁ…。かさね、けがせーへんかったか?』
『おにぃたん、ヴァーリャおにぃたん…うわぁぁぁぁぁぁん』
少女は感極まって、少年にしがみ付いて更に大泣きし始めた。
少年の身体が微かに震えている。少年も本当は恐ろしかったのだろう。
しかし、自分が実の妹のように思っている少女を助けてあげないといけない!!
と内から沸き上がった衝動に身体が動いたのだ。
何故なのかはわからない、でも妹はおいらが守ってあげなくちゃダメなんや!!
その思いが淀川へ釣りに行こうとしていた自分を
妹の救出に向かわせたという事に、少年は気付いていない…。
『かさね、もうだいじょうぶやで。あほ犬はもうおらへん。
おつかいしてたんや、えらいえらい。ほら、もうないたらあかんで。
お母さんまってるんやろ、気をつけてかえらなあかんで』
『うん…ヴァーリャおにいちゃん、ありがとう』
まだ小刻みに震える手で少女を慰めて泣き止ませる少年と、
ぐずりながらもそれに素直に従う少女。
『おいらがいっしょに連れてったるから、かえろ』
『うんっ』
【今泣いたカラスがもうわろた】というべきか、
少女は少年の言葉を素直に聞き入れて泣き止むとにっこり笑って見せた。
『せやせや、かさねはいつもわらってなあかん女の子やで』
『えへへ…』
少年に頭を撫でられて嬉しそうに笑う少女…。
「おい、なにボーっとしてんねん?カプチーノ冷めるやんけ」
鎮実に声を掛けられて我に返る譁紗祢。
「どないしたんや、おみさん?」
怪訝な顔をする鎮実に、苦笑をして見せる譁紗祢。
するとそこへ、店内に誰かが入ってきた。
「こんにちは~。あ、譁紗祢さん!?久しぶりだね!!」
「万梨阿!!」
春花秋月のリーダー・万梨阿は譁紗祢を見るや否や、
猛スピードで譁紗祢の横に来て久しぶりの再会を手を取り合って喜んだ。
「最近顔出せなくてごめんよ。私も忙しくてね…」
「ええんよ、万梨阿。私も仕事柄中々会えなくてごめんね」
早速の女子会トークが始まる二人に、鎮実が割って入る。
「あーおまいら。トーク始める前になんか頼め!
譁紗祢はええけど、万梨阿!おめーは何か頼め!!」
「シゲさんちゃっかりしてるね」
「当たり前田のクラッカーやろが!」
「それじゃ、マサラチャイ頼もうかな!」
「また粋なモン頼むな…よっしゃ、今から作るで待っとれ!!」
万梨阿の注文にニヤリと笑うと鎮実は厨房に入っていった。
しばらくすると、茶葉とスパイスのいい匂いが店内に漂ってくる。
「あたしもチャイにすればよかったかしら…」
今更ながらチャイの香りに誘惑される譁紗祢に、
「頼んじゃえ、頼んじゃえ!!」
けしかける万梨阿。
「そうするか…シゲさん!!あたしもマサラチャイを!!」
「ふぁっ!?譁紗祢、もっとはよ言わんかい!!
ったく…まぁええ。万梨阿の作ったら譁紗祢のも作るわい」
鎮実はぶつくさ言いながら
煮出したチャイを濾してマグカップに入れると、
譁紗祢のマサラチャイを作り始める。
「ねぇねぇ、ちじことはどうなの?上手くいってる?」
「うん、まぁ…ボチボチだね」
「ふふ、それを聞きたかったのだ」
万梨阿はニコニコしながらカバンから何かを取り出して、
譁紗祢に手渡した。
「はいっ、誕生日プレゼント。春花秋月のみんなからだよ」
「えっ!?」
綺麗にラッピングされた箱を万梨阿から受け取る譁紗祢。
『おい、ちじこ!!おめーがしっかりしないと、譁紗祢が…譁紗祢が…』
日没前の病院の屋上で、ヴァーリャがちじこの胸倉を掴んでいる。
『でもよ、兄貴…。俺、どうしたらええんや?
譁紗祢がいんでまうんやで(大阪弁で死んでしまうんだぜ)?
おらんようになるんやで?』
どうしていいか分からない表情で涙をボロボロ流すちじこに向かって、
ヴァーリャの右ストレートがちじこの左頬を捉える。
『あほんだら!!まだ譁紗祢は生死を彷徨ってる状態やろが!!
いてこますぞ、ゴラァ!!』
思い切りぶん殴られ、後ろに吹き飛ばされてのけ反るちじこに、
ヴァーリャが更に吐き捨てるように言い放つ。
『お前に譁紗祢の未来がかかってるんや。わかるか?
ちじこにしか、譁紗祢を救えないって事やろが!!』
『せやけど、せやけど…』
起き上がりながらも躊躇いを見せるちじこに、
今度はヴァーリャの左アッパーがちじこの顎に入る。
『お前が迷ってたら、助けられる譁紗祢も助けられへんのや!!
おいらが助け出せるもんやったら助け出しとるわ!!ドアホ!!
ちじこ、お前しかおらんから…おらんから…』
倒れこんだちじこを掴み上げるように、
再び胸倉を掴むヴァーリャの身体と声が震えているのが、
殴られて口の中を切って血を流している状態のちじこには分かった。
ヴァーリャは泣いているのだ。
人前で絶対に泣かないヴァーリャが、男泣きしているのだ。
『兄貴…』
『ちじこ…譁紗祢を…妹を…』
今度はヴァーリャが掴んでいたちじこの胸倉を離すと、
不意にその場にしゃがみこんで嗚咽を始めた。
その居た堪れないヴァーリャの姿に、ちじこも覚悟を決めたようだった。
『兄貴、俺やってみせる。出来るか分からへんけど、
俺しかでけへんのやったらやる。必ずやり遂げる…』
ちじこはそう叫ぶように言い残すと、
意を決した表情になって譁紗祢の病室へ駆けていく…。
「譁紗祢さん、どうしちゃったのよ?」
「えっ?」
「えっ、じゃないって。さっきから意識飛んじゃってたよ?
大丈夫?疲れているんじゃないの?」
万梨阿が心配そうに声を掛ける。
「それなんだよな。今日の譁紗祢、
やたら意識がトリップしやがるんだよ」
鎮実がマグカップに入ったマサラチャイを2つ手にして、
カウンター席に座る万梨阿と譁紗祢の前に置く。
「色々と思い出やら、私が見ていなかった光景?
それらが不意にフラッシュバックしてくるのよ」
そう言って譁紗祢は両手でマグカップを抱え、
一口飲むと神妙な顔をする。
「あの一件をまた思い出したの?やっぱり疲れてるんじゃないかな?」
万梨阿が心配そうに譁紗祢の顔を覗き込む。
「疲れてるときにはやな…ダイエットも気になるやろけど…
これやこれ!!」
そういうと鎮実は回転焼きの入った袋を2人に見せる。
「回転焼?」
「ちゃう、【ずぼら焼】や!!」
万梨阿の言葉をしっかり訂正する鎮実。
「これをやな…」
そう言いながら袋からずぼら焼を取り出すと、
厨房にあるトースターに投げ込む。
「こうやってな、表面カリカリにして中はホカホカの
ずぼら焼食べたら疲れなんか吹っ飛ぶんや」
2人が唖然とする中、
鎮実はドヤ顔しながら厨房へ回転焼きの袋を持っていく。
『やっと…やっと終わったんやな。譁紗祢はもう、何処へも行かへんよな』
『ちじこ…みんな…ありがとう』
ちじこと譁紗祢、お互い涙目で抱き合って喜びをかみしめている。
ようやく、ようやく全てが解決した喜びに感情を爆発させたのだろう。
周囲の春花秋月のメンバーも笑顔を浮かべる者、
もらい泣きする者など共に喜びを分かち合っている。
しかし、譁紗祢は何か物足りなさを不意に感じ取った。
大事な誰かが居ない…。未だ感情を爆発させているちじこを宥めながら、
涙を収めて周囲を見渡してみるが…やはりいない。
『愛梨さん、お兄ちゃんは?』
『あれ、ヴァーリャさんさっきまで居たのに…』
尋ねられた愛梨もヴァーリャが居ない事に気が付く。
『ヴァーリャは仕事があるといって、そっと抜け出しましたよ』
そこに八十一先生こと九十九八十一が声を掛けてきた。
『そっか…ヴァーリャさん社会人だったもんね』
八十一の言葉に納得の愛梨だったが、譁紗祢の表情は複雑だった。
『譁紗祢さん、ヴァーリャさんは黙って去ったわけじゃないですよ。
ちじくんと譁紗祢さん。二人の姿を見て、
親指立ててニヤッと笑いを残して行ったのですから』
『お兄ちゃん…』
譁紗祢は未だに興奮冷めやらないちじこを宥めながら、
ヴァーリャが去って行った方向を眺めていた…。
「おーい、生きてますかー?」
「えっ!?」
鎮実の声に我に返る譁紗祢。
再びフラッシュバックが始まったようだった。
「ほんま大丈夫なんかいな、譁紗祢よ。ちじこが心配するで」
「ほんとほんと、大丈夫なの?」
鎮実と万梨阿が心配そうに譁紗祢の顔を覗き込む。
「やっと落ち着いたというのに…春花秋月の姉御がこれじゃ心配するよ。
私だけじゃなくみんなもね」
万梨阿はそういうと、譁紗祢の手を握る。
「大丈夫だよ、万梨阿。なんかね、
色んな事が不意に蘇ってくるの。でも、以前みたいな嫌なものじゃない、
なにかこう…懐かしくて暖かい感覚かな…」
「それやったら、俺がカリッカリに焼き上げたずぼら焼食べたら、
絶対収まるはずや。ほれ、焼けたぞ。これは俺からのお・ご・り」
鎮実が小皿に回転焼きを1つずつ乗せて二人の前に置く。
「今日はまこっちゃんはお休みやからな、
ケーキとかは無いんやけど。俺のルーツの一つでも食ってみてくれ!!」
「あら、シゲさん今日は気前いいんですね。何かいい事でも?」
「へへっ、今度八十一先生に飲みに連れて行ってもらえるんや、
当然先生の奢りやで!!」
喜色満面で話す鎮実だったが、
譁紗祢の意識は再び遠のき始めた。
またフラッシュバックが始まったようであった。
『おい、ヴァーリャ。どないしたんや、急にゴチってくれるやなんて』
『たまにはええやんか。シゲさんと飲みたくなってやな…』
『運ちゃんの給料、安いんちゃうんか?』
『まぁ、高いわけちゃうけどな』
大阪市浪速区恵美須東…新世界の串カツ屋で
ヴァーリャと鎮実が二人で飲んでいた。
『ようやく、全てが終わったんや。やっと、やっとやね』
『そうやったんか…。お前らがなんかごにょごにょやってた奴か。
でも、お前。あいつらのとこ行かんでええのんか?』
『おいらはそういう柄やねぇわ。あいつらはあいつらの世界がある。
おいらはおいらや、遠くから見守ってやるんが趣味やしな』
『何かっこつけてんねん。ソースは二度付け御法度やけどな』
『シゲさんwwwww誰が上手い事言えとwwwww』
『あ?大阪やったネタに生きて、
ネタに死ぬんが当たり前やろがw』
鎮実はそう言って
ジョッキの生ビールをギューッと一気に飲み干して、串カツを頬張る。
『せやわな。たまに忘れるからあかんわ…』
ヴァーリャはグラスに入った黒霧島のウーロン茶割を飲み干すと、
『ねえちゃん、ホッピーもってきてや』
追加の酒を注文する。
『ほほぉ、飲むなぁ』
『そらそーや、ちじこと譁紗祢がやっと結ばれるんやで。
祝杯あげたらな、弟と妹がごねよるわ』
『そやったら、ここ連れてきたらええやんか』
鎮実がそういうと、
ヴァーリャは寂しそうな表情を見せる。
『どないしたんや、辛気臭い顔してん』
『いや、なんでもない。柄にもなくちょいおセンチになっただけや』
『ヴァーリャ、それは飲み方が足らんからや!!
ガンガン飲んで、酔いつぶれたら馬鹿笑い出来るで』
『せやな…』
すっかり出来上がってる鎮実を横目に、
ヴァーリャは物思いに耽る顔をしていたが…
ホッピーが来ると表情を快活な笑顔に切り替えて、
『せやせや、今日はとことん飲んだるど!!
終電こわくて飲んでられるか!!』
『おっ、ガソリン来たらメートル上げてきたやん。
ええぞ、ええぞ、それでこそヴァーリャや』
鎮実とヴァーリャはグラスをカチリと合わせて乾杯し、
本腰を入れて飲み始めた…。
「お兄ちゃん…」
意識を取り戻した譁紗祢は不意にポツリと言うと、
何かに憑りつかれた様に席を勢いよく立った。
「ど、どないしたんや?譁紗祢?????」
「シゲさん、ご馳走様。万梨阿の分のお代も置いておくね。
お釣りはまた今度取りに来る!!」
「ちょっと譁紗祢さん!?」
意識が遠のいていた譁紗祢が、唐突に全く予想もしない行動に出た事に、
万梨阿も鎮実も目が白黒している。
そんな事はお構いなしに譁紗祢は勢いよく店を飛び出していった。
「な、なにがあったんや?」
「『今回』は違うみたいだけど…でも何があったのかしら?」
鎮実と万梨阿が顔を見合わせていると、
店に誰かが入ってきた。春花秋月メンバーの葉暗だった。
「葉暗さん!さっき譁紗祢さん見なかった?」
「えっ?さっきものすごい勢いで大阪メトロ南森町駅に
飛び込んでいきましたけど…何かあったんですか?」
万梨阿の問いかけに葉暗は要領を得ない表情をしながら答える。
「譁紗祢に何があったんや…」
鎮実の言葉に、万梨阿と葉暗も首を傾げるばかりであった。
「ふひひ、今日はどて焼や、どて焼!!
今週一週間頑張ったおいらへのご褒美やもんな…」
ヴァーリャは待ちに待った一人飲み会に舌鼓を打っていた。
最近仕事が多忙を極めて喫茶軽食【きゃすたりあ】へ
モーニングすら食べに行く暇も無く、コンビニのおにぎりやパン、
弁当で3食を済ます事が多かった。しかしようやく、
週末の休みということもあり、一人でゆっくりと自分へのご褒美と称して
新世界へ繰り出してきたのだ。
「いつもやったら、誰か誘うんやけどたまには一人でゆっくり飲みたいしな。
家に居ったらちじこや譁紗祢が遊びに来やがる…
いや、ちゃっかり夕飯まで食って帰りやがるしw
まぁ、おいらとしては弟や妹が遊びに来てくれるんは嬉しいんやけどな…
でも、今日は一人でゆっくり飲みたいもんなぁ。
串カツ屋ハシゴせないかんし…ふひひ。まずは串カツ、串カツ!!」
ヴァーリャは串カツを頬張ると生ビールで流し込む。
「くうぅ、このために仕事してきたんや!!生きててよかった!!
やっぱこの瞬間が最高やな!!」
一人でテーブル席に座ってニヤニヤしながら串カツを味わっていると、
不意に向かい側の席へ誰かが座ってきた。訝るように顔を正面に向けると…
「おにぃたん♡」
ヴァーリャは向かい側に座った人物の顔と声を聴いて、
串カツをのどに詰まらせる。
「げほっ、げほっ!!ちょ、ちょ…なんでここにおんねん、
譁紗祢!!」
ヴァーリャの向かいの席に座ったのは、誰であろう…譁紗祢であった。
「ってかおまえ、なんでこの店においらが居るんわかったんや?」
「んー、そうねぇ。私がお兄ちゃんの妹だからかな♪」
譁紗祢の言葉に目が点になるヴァーリャ。
「な、なんやなんや。今日の妹はなんか一味ちゃうんやが?」
ニコニコしながら飽きもせずヴァーリャを見つめる譁紗祢に、
変な汗が止まらなくなっているヴァーリャ。
「そうかな、私はいつもの私だよ?」
「それより、ちじこはええんか?」
「大丈夫だよ、ちじこは夜勤だから居ないんだもん。
今日は、私がお兄ちゃんと一緒に居るの!!
ちゃんとご馳走してあげるからさっ!」
「えっ…」
譁紗祢から【ご馳走】という言葉を聞いて、
目をキラキラ輝かせるヴァーリャ。
「そ、それやったら…妹と飲むんも悪くないわなぁ…へへへ」
「うんっ!!」
照れ笑いするヴァーリャを見て、自然と益々嬉しそうな顔をして
笑顔が止まらなくなっている譁紗祢。
「ほな、一緒に飲もか!!おーい、ねぇちゃん!!
こっちに黒霧島の5合瓶もってきて!氷と水もやで!!あとな…」
ヴァーリャは嬉々として、自ら進んで譁紗祢の料理の注文をし始める。
譁紗祢はそんなヴァーリャを飽きもせず、ニヤニヤしながら眺めている。
『お兄ちゃん。ほんとに、ほんとにありがとうだよ!!』
譁紗祢は心の中で呟いていた…。
なんやろ、恋愛でもないんやけど…血は繋がってないけど兄妹愛?
ってゆーんか?【縁】ゆーもんはいつどこで結びつくか
わからんもんやな。俺は奢りで飲めたら問題ないんやけどなw
酒は漢を磨く水ゆーしwwwww