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フルメタルドライブ  作者: レイ
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超能力者

人間には死を覚悟してでも最後までやり通さなければならない事があると思う。


たとえば生活していくお金を稼ぐ為、はたまた大切な誰かをこの世の理から守り抜く為、自分の命を賭けてでも成し遂げる事が...


俺の場合はこの2つがそうだった。


ラージストゥールと呼ばれるこの街は総人口が約一千万人という巨大都市。数々の観光場所やリゾートを売りにしていて住めば誰もが幸せになれると言われている国だがそれはほんの一部でしかない。

階級制度が取られているこの国では上級貴族こそが全てで俺たちみたいに何の階級も持たない最低貧民はストリートチルドレンとして生きていくしかない。


だからこそ俺は違法だらけのこの場所で自分が持っている最高の切り札を使って自分と仲間を守る為に戦う事しかできなかった...


「レディースアンドジェントルマン!今日もこの時間がやって参りました!!」

巨大なひし形のドーム内に響く解説者の声。

何千もの人が入る観客席は上級貴族で満席になっていて、皆これから始まる異様な光景を楽しみに目をギラギラさせ息を荒くしている。

正直こんな物を見る為に高い金を払う事ってこんな所に来ている奴らの気はしれないがそのお陰で飯にありつけるんだから文句は言えないよな...

いつもと同じ龍を模したマスクと白銀の装甲が輝くスーツを身に付けてステージへと続く扉を開けた。

「おおっと!最初に入場したのは白銀の鎧を身に纏うアビリティゲームの連勝者!!その名もアイゼンフェールだァ!!」

アビリティゲームとは特殊な力を持つ超能力者がその力を使って戦うプロレスの様なもの。高い金が掛けられたり相手を殺してしまったりする為、本来なら非合法なのだが実際は上級貴族の娯楽になっていたりする。

かくいう俺も超能力の持ち主でこのゲームで稼いだ金で生活を余儀なくしている。

「そして!アイゼンフェールと戦う我らの能力者はこの男!セイントヴァファロー!!」

そう呼ばれたとほとんど同じタイミングだった。

目の前の扉から牛を模した仮面を被り両肩に巨大な角が飾られた黄金の鎧を身に付ける2メートルはあるかという巨体の大男が現れる。

「セイントヴァファローは我らアビリティ財団が誇る超能力者!!その攻撃はどんな防御も貫く最強の矛!さぁ今宵はどんなゲームを見せてくれるのかぁ!?」

ドーム内の中心にある巨大なステージで俺とヴァファローは互いに睨み合う。

突如としてパンっ!と火薬の爆発する音が鳴り、それを合図にして俺の懐にヴァファローのタックルが決まった。

くそっ!出遅れた!!

気付いた時には時すでに遅し...俺の身体は紙のように宙を舞い、数百メートル先の壁へ人型の穴を残す事となった。

「おおっと!?ヴァファローの能力。高速移動を駆使した速攻タックル!!!これまで連勝を誇ってきたアイゼンもこれはアウトかぁ!?」

確かに身体中が痛えけど...鋼鉄のアイゼンフェールの名は伊達じゃねぇんだよ!!

俺は自身の能力を少しづつ解放する。それに伴ってスーツの周りが青白く光り輝いていく。

「おおっと!?ここでアイゼンフェールが能力発動だァ!!彼の能力は硬質化。両手足が鉄の高度を持つ事で放たれる最強の装甲!ヴァファローはどの様に破るのか!?」

この解説おれが負けることを前提としてねぇか?

そんな事を考えながらもスーツに取り付けられているブースターを使ってヴァファローの前へ勢いよく飛ぶ。

そして...

「さっきのお返しだ!牛野郎!!」

ヴァファローの顔面へ思い切り右ストレートをぶちかました。

割れるマスクと吹き飛ぶヴァファロー。反撃しようと右手を前へ突き出すが、それを左手で払いのけ、すかさず右足でヴァファローの腹部を蹴りあげる。

「決まったァ!!アイゼンフェールの一撃にヴァファローも堪えたか!?」

気を失った様に見えたヴァファローだがすぐに体制を立て直す。

両手足を地面に付け獣の様に四つん這いになると能力である高速移動を使い2度目のタックルを繰り出してきた。

すかさず右拳で受け止める。


バキッ!!


カバーした右手から嫌な音がした。

くそっ!骨がやられたか!?

「これで自慢の右ストリートも終わりだな」

牛野郎の野太い声が聞こえた。

「悪いが右手が砕けようがまだ左が残ってんだよ!」

ヴァファローの背中目掛けて左手を振り下ろす。だが相手も馬鹿ではない。高速移動で瞬時に背後へ回ると俺の背中へ蹴りを入れてきた。俺の身体が背中を中心にくの字へ曲がり宙を舞う。両足で着地しようとするが上手くいかずに背中が地面へ叩きつけられる。

身体を駆け巡る鋭い痛み。一瞬だけ身体が言う事を聞かなくなる。

「次の一撃で終わりだな...」

「うるせぇよ牛野郎...俺はテメェらと背負ってるもんが違うんだよ!!」

全身に響く痛みに耐えてゆっくりと立ち上がる。

身体の状況から見て後、撃てるのは1発...いや2発が限界か?...まぁそれだけあれば十分だ。

ヴァファローが四つん這いになりタックルの姿勢を作り加速する。その瞬間を見逃さない!!

姿勢を低くしてタックルの下へ潜り込む。そして...

「俺の勝ちだ!牛野郎!!」

装甲の1番薄い部分...ヴァファローの腹部目掛けて懇親の一撃を繰り出した。

「がぁああああ!!」

下品な叫び声を上げて、床で転がるヴァファローを右足で踏み潰す。そしてその顔面に最後の一撃を下した。

飛び散る大量の血...数秒動いたヴァファローも最後には力なく手を宙に向け動かなくなった。

「ここでヴァファロー撃沈だァ!!今回の勝者もアイゼンフェール!!!さぁ皆さん最強の戦士アイゼンフェールに盛大な拍手をお願いします!」

観客席から飛んでくる数々の歓声と拍手。それらを無視して俺はステージの出口へと歩いていった。





























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