第7話 その少女は夢を追いかけていたのだが...
「パス、パス!」
体育館に響き渡る声、ボールを床に当てる音、その音はとても気持ちよかった。
「任せたよ!」
チームメイトから渡されたボールを少女はゴールに向かって打つ、その軌道はとても綺麗でまさしくボールがゴールに吸い込まれるようだった。
スパン!ボールがゴールに入ると同時になる気持ちいい音が体育館中に響き渡り、ブザーの音がなる、試合終了の音だ。
少女はブザービーターで決めたのだ。
点差は少女が入れた得点を含めて一点差で勝ったのだ。
少女はチームメイトからも観客からも称賛の声が鳴りやまず聞こえていた。
「やったじゃん、優勝だよ!優勝!」
この試合は中学最後の公式での県大会の試合だった。そして少女達は全国への切符を手にしたのだった。
それから二年、
少女はバスケを辞めていた、この学校には推薦で入る事ができたのだがある日をきっかけに少女はバスケを引退した。
中学最後の大会で優勝を飾った少女だったがその翌日、いつも通り学校へ通う時の事だった、交差点に差し掛かり信号を待っていた時にその転機が訪れた。
黒猫が交差点を勢いよく駆け出してきた、そこにトラックが来る。
少女はそれに気づき、黒猫を助けるために駆け出した。少女が黒猫を抱き抱えた時、すでに遅く、少女は車に衝突した。
すぐに病院へ搬送されて一命をとりとめることができたのだが、黒猫を庇ったために肩と腰を粉砕骨折してしまっていた。
少女は肩から上に腕を上げる事は一生できないと言われ、バスケを引退せざる終えない状況に陥ってしまっていた。
だが少女はバスケを諦める事ができなかった、高校生になり、推薦で女子高に入った少女だったが、バスケ部に入っても腕が上がる訳でもなく、ただ練習を遠目で見ていることしか少女にはできなかった。
少女はどれだけ才能があってもそれを無駄にする行動をした自分を恨んでいた、許せなかったのだ。
あの時黒猫を助けなければ、少女は今でもバスケを続けていられた、もしかしたら今頃バスケのレギュラーを取れていたのかもしれないと思っていた。
だがそんなことも思うのもやめた、少女はバスケを捨てる決意をした。その日以降少女は学校に行くのをやめたのだ。
学校に行ってもバスケができないのなら行く価値などないのだと思っていたからだ。
少女はバスケがない人生などもう生きていても辛いだけだと思っていた。
バスケを諦める事を決めてから数ヶ月が過ぎた。その間、少女は外を走ったりしていた、若干ではあるが諦め切れないのだろう。
そんな時だった。
一通の手紙がポストに入っていた。
白鳥 岬様
この度あなたを特別授業にご招待したく思い、この手紙を送らせもらいました。
正直に申しあげますと、あなたみたいなクズ当然の人を学校に連れてこいって校長に言われてるんで、来いよ!絶対に来いよ!、来ないと駄々こねるからな!ぜってぇー来いよ!
鳴瀬 雛より
なんだこの自分のために動いてますかん丸出しの手紙は、普通なら丁寧な言葉遣いで書くだろ!
少女はそう思っていながらも、やることもないので行くことにしたのだ、雛という人がどんな人なのか、気になったからだ。
少女は動き出す、だがそれが吉とでるか凶とでるかは雛という男にかかっているのだった。