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第3話 椎名サイド2 少女は自分のやるべきことをクズ教師から教わる

 「あの、それでこれからどうするんですか?雛先生」


 「そうだなぁ、じゃあ俺を呼ぶときに先生って語尾につけるのやめろ、嫌な事を思いだしちまう。」


 「ならなんて呼べば良いんですか?雛さん、とか?」


 「まぁそれで良いだろう、うん、そっちの方が俺にピッタリだ」


 「分かりました、では今後、雛さんと呼ばせてもらいますね、それでこれから何をすれば良いのでしょうか?」


 「俺にジュースを買ってこい、もちろんお前の金でな」


 雛はそう堂々と椎名に言った、悪びれもせずに堂々とだ。


 「なんであなたにジュースを買わなきゃいけないんですか?意味が分かりません」


 「そうか、ならなんでいじめられてる時は買えたんだ?あれれぇ~可笑しいなぁ?いじめっ子の時と態度が全然違うぞぉ~」


 雛は椎名を挑発するようにして問いかけてきた。


 「そ、それは、その...」


 椎名は何も言えない、反論する言葉が見当たらないのだ。

 現にこうして雛に対して反論できているのにいざグループ内になると何も言えないのだろうか。


 「教えてやろうか、お前が反論できない理由を」


 雛は少しにっこりとした顔で椎名に言った。


 「それはなぁ、本当に単純なことだ、アホでも分かるくらい単純なことだ、それはな、お前は反論することによって友達がいなくなるんじゃないかと怯えてるんだよ」


 椎名は図星であるという顔をしていた、その通りだ、椎名は友達がいなくなるのではないかと怯えていたのだ、だから何も言えずにパシりにとして扱われていたのだ。


 「そ、それがどうしたってんですか、」


 「なぜそこまで友達を大事にする、どうして自分を優先しないんだ」


 「友達がいないと私は無力な生まれたての小鹿でしかない、それが嫌で嫌で仕方がないんですよ」


 「生まれたての小鹿のどこが悪い」


 雛はそう問う


 「生まれたての小鹿はビクビクと震えて立つのに時間がかかります。それゆえに誰かに助けてもらわないと餌さとして他の動物に食べられてしまう」


 「そんなんなら食べられちまえ!」


 雛は大きな声でそう言った。


 「誰かに助けを求めて生きるのなら、その後の人生、助けられっぱなしで生きていかないといけなくなる、そんなのは甘えでしかない、そんな小鹿はどう足掻いても結局は死んじまう、ならいっそ生まれたてすぐ死んじまうのも悪くないと思うぜ俺は」


 雛の言うことにどこか心を揺さぶられる椎名がどこかにいた


 「それ酷いですね。」


 「酷い?どこが?、他の鹿に迷惑をかけている小鹿の方がよっぽど酷いだろ」


 「そんな事を言われても...、なら私は、どうしたら良いんですか」


 椎名は少し悔しかった、誰に?自分にだ、誰かを頼って生きていくしかできない自分に悔しさを覚えていた。


 「ボッチになれ」


 「ボッチ?」


 「そぉ、ボッチだ、あの自分の世界を作ることに関しては他を優位に勝ることのできるあのボッチだ。」


 「ボッチなんて、無理ですよ」


 「なんでだ?ただ無口で誰とも会話をしようとしないで良いんだぞ、こんなに楽なのはないぞ」


 「だってボッチなんてださいじゃないですか」

 

 「だ、ださい、だと!」

 

 雛はボッチがダサいと言われて少し腹が立ったようで反論した。


 「どこがダサいんだ、ボッチは誰にも縛られる事もないし、迷惑をかけない、そのどこがダサいと言うんだね、チーミー!」


 雛のキャラがちょっとばかし崩壊しそうになっていた。


 「もしかして雛さんてボッチだったんですか?」


 図星だったようだ。


 「ま、まぁ、そうだよ、俺はボッチだったよ、それがどうした!」


 雛は開き直った。

 

 「いや、もう良いです、詮索はしないでおきます、このままだと雛さんのキャラが崩壊しかねないので」


 雛は我に戻った。

 

 「すまん椎名、それでボッチになるのか?ならないのか?」


 「なりたいけど、無理だと思います。」


 「どうして、あぁ、いじめっ子軍団の事か」

  

 「はい、そうです。」


 少し椎名は落ち込んでいた。

 

 「ならそのいじめっ子軍団、俺に任せてくれないか?、もしかしたら何とかなるかもしれないぞ」


 「本当ですか?」


 「俺はクズだが言葉に責任は取るつもりだ。」


 雛はそういうと時計を見た。


 午後五時を少し回った時刻だった、ここに来たのは四時半くらいだったから三十分以上経っていた。


 「今日はこれくらいで十分だろ、それじゃあ帰った帰った。」


 そう言うと雛は椎名の背中を押して教室の外へと連れていった。


 「え?、こんな短時間で終わりなんですか?」


 「時間は俺の気分次第で決めて良いと校長から言われているし、この着ぐるみ結構重たくて疲れるんだ、ってことで今日はこれで終わり。」


 なんとも自分勝手な人だと思っていた。


 「次の授業はいつですか?」


 椎名はなんとなく聞いてみた、行くかは分からないが、一応聞いておこうと思ったのだ。

 

 「そうだなぁ、他のやつの事もあるし、3日後くらいかな」


 「他の人って、私以外にもいるんですか?この課外授業にわ」


 「あぁ、お前を含めた五人を学校へ登校させろって言われてるんだよ」


 「そうなんですか。」


 椎名は自分以外にも同じような人がいるのだと、少し驚いていた。


 「3日後、そいつらに会わせてやるよ、だから絶対に来るんだぞ、時間は今日と同じだ。」


 「本当ですか?」


 「あぁ、元からそのつもりだからな、それといじめっ子軍団もどうにかしといてやる、だからお前は明日から学校に登校しろよ、良いな?」


 「それが本当なら私はもういじめられなくてすむんですね」


 「そうだ、だから胸を張ってボッチライフを築き上げるんだな、そんじゃあな、惨めな小鹿さんよ」


 そう雛は言うと椎名を追い出してそそくさとどこかに消えていった。


 椎名は雛の言葉を信じて良いのかと迷っていたのだが雛が言った言葉が脳裏によぎった。

 「俺はクズだが言葉には責任を取るつもりだ」

 

 椎名はこの言葉を信じる事にした。

 だが今日はもう遅いから家に帰る事にした。


 その行動が吉とでるか凶とでるかはまだ誰も分からない、ただ、彼女はそれでも行くことを決意したのだった。


 ひ弱な小鹿が自分の足で立ち上がり、前へ向こうとしているのだった。

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