プロローグ 教師失格の男
誰もいないはずの早朝の教室、そこにポツリと一人の少女がいた、その子は苦しそうだった、身も心もズタボロで今にも死にそうだった。
あぁ、もう死んでたのか...
四月
高校の教師になって初めてのクラス担任を任された、そのクラスには俺の妹がいる、とても明るく人と接している時が一番輝いてるようにも思えるくらいに。
なのにクラスに馴染み始めると、どこか苦笑いをしているように思えた、だけど俺には何もできないし、聞いてやれない、ただ見ている事しかできなかった。ただただ妹が朽ち果てていくのを見ることしかできない。
妹といっても彼女は俺のことを知らない、俺が小学校に入ると同時に親は離婚した。離婚する少し前に妹が産まれた、親以外で俺だけが妹がいたことを知っている、妹は何も知らない、だから俺は何も言えないし話しかけない。
学校が後期になって妹はゲッソリと痩せ細っていた、ストレスだろうか、俺は教師として彼女と話してはいたが踏み込んだ話はなにもしていなかった。
今日こそ話してみよう、そう思った。思ったはずなのに...
朝早くに来て教室のドアを開けた。
その光景は今でも忘れられない、俺が教師を辞めるきっかけであり、子供の恐ろしさを知った時だから。
明かりが射し込み机と椅子の影が少しずつ大きくなっていく、それだけならまだ良かった。
辺りを見渡すと一つ、いつもと違う光景が目についた。
地図を掛けるためにあったフックに紐が掛けてあり、その紐を眺めていくと少女が紐を首に巻き付けて動かない状態にあった。
少女はゲッソリと痩せ細っていた、その少女は
俺の妹だった。
すぐに紐をほどき下に降ろしたがびくとも動かなかった、俺はすぐに119を押して救急車を呼んだ。
救急車が学校に到着した、だが妹は死んでいた、時間経過による死後硬直が進んでいたのだ。
その後葬式には出席した、その時に参列していた親達に聞いた話だと、どうやら妹はクラス内でいじめにあっていたらしい、
ゲッソリ痩せ細っていたのはストレスからであり、それを俺は見ないふりをしていたのだ。
初のクラス担任で生徒をもったことにより俺は生徒の事まで気が回らなかった。
教師失格だ。
その日を最後に俺は教師を辞職した、俺のせいで一番大事なはずの妹を死なせたんだ。
それ以降俺は一人暮らしをやめ、実家に戻り、部屋に引きこもっていた。
ストレスと恐怖で外に一歩も出れない状態が何日も続いた。
俺には力なんてなかったんだ、ヒーローは誰かを助けるために自分を犠牲にすることを厭わないだろう。
だが俺はヒーローじゃなかったんだ、自分を犠牲にしてまで人を助けようともしない、なら俺は...
俺はなんのために生きてきたのだろうか...
この度は私、麻宮の初の投稿作品を読んでいただきありがとうございます。
不馴れなところは多々ありますが頑張っていくのでよろしくお願いします。