スクク 25夏 Despair
スククはヘリを見て、とっさに走り出した。このまま別れるわけにはいかなかった。もう二度とこんなチャンスはこないだろう。七年前、自分でチャンスを捨てたばちが当たったのかもしれない。
スククはこの七年間、階級制を壊すために戦ってきた。それはアドバンストへの怒りや自分たちの不当な扱いが理由ではなかった。
七年前のあの日、あのとき、フィルリアとシオンに出会ったからだ。
うまく言葉にはできない。階級制をなくして、どうなるかもわからない。どうしたいかもわからない。けれど、どうしても身分の差をなくしたいと思った。生まれつき決められたもの、運命みたいなものがあるっていうなら、それをなくしたいと思ったのだ。
フィルリアとシオンの顔を見て、すぐわかった。二人は今も、七年前の気持ちを忘れていない。シオンは口ではあんなことを言っていたが、きっと軍人になったのはフィルリアを守るためだろう。フィルリアも、大人ぶって賢いフリをしているだけだ。
二人とも、自分の気持ちを無視して、どうして生きていけるのだろう。
スククはどうしても二人に伝えたいことがあった。
しかし、なぜか足はもつれ、視界がぐにゃりと傾いた。
シオンが構えた銃の口から煙が上がっているのが一瞬見えた。
アスファルトの地面に崩れ落ち、痛みに気が付く。どうやら足を撃たれたらしい。
「なんでだよっ、シオンっ。なんでなんだよっ。お前は、フィルリアのことが好きなんだろっ。だったら、なんで」
スククは力を振り絞って叫んだが、シオンの耳に届いているかはわからない。シオンの冷たい表情は少しも変わらなかった。
スククは手を使ってなんとか身体を前に進めた。けれど無駄だった。
シオンはつかつかとスククの元へ歩み寄り、両方の手首を手錠で繋げた。
「なんでだよっ。お前っ」
「うるさいよ。今は殺さないであげるから、よく考えなよ」
他人を哀れむ目。あの優しかった彼が、こんな目をするなんて。
やりきれなかった。悔しかった。
あの日、七年前のあの日出会った二人の姿は、あまりにも眩しく映った。
自分もあの場所へ行きたい、あの光の中へ、そう願った。
あのころ抱いた憧れは、今も胸の奥底に焼き付いて消えてはくれない。
なのに、あの光は消えてしまったのか。
俺が信じたものは、幻想だったのか。
口の中に血の味が広がる。ヘリから軍人どもが降りてきて、乱暴に乗せられる。
悔しい。悔しくて悔しくて、気が狂いそうだ。
七年もかかってようやく会えたのに、どうしてこんなふうになってしまったのだろう。
ああ、忘れない。この屈辱を。この絶望を。俺は絶対に忘れない。
スククはシオンとフィルリアを睨み付けた。
溢れる憤りをただ瞳に込めることしかできなかった。
読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。
この土日で完成させる予定です。
あと少しですが、引き続きよろしくお願いします。




