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イイダサン、ガンバルカラ  作者: 幾田涼
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パチンコ屋で、一人。

 その日、僕はいつも通り列に並んでいた。


前から数えること3番目。まあまあの位置を取ることができた。

これで余程のことがない限り台は確保できる。

今日こそは勝つ。籤運も良かった。

あの台を打てば間違いない。はず。

そんな思いで5万円を握りしめてここに来た。


 月初めの土曜日、午前8時50分。


開店まであと10分。あと10分で仕事(パチンコ)の時間。

そわそわしながら僕はジャージのポケットからスマホを取り出し、

お目当ての台のスペックと回転数のボーダーラインを確認した。


パチンコ屋に並ぶのはこれで5回目くらいだろうか。


仕事を辞めたあの日から。

 


 僕は1ヶ月前まで小さな広告代理店で営業として働いていた。

働いていたとは言っても、その会社に勤めていたのはたったの2週間であるから逃げてきたと言った方が正しいか。

そこでは主にインターネット広告のページ制作と法人企業への提案営業を取り扱っていた。

給料や待遇は悪くは無かったが、

実態の無いインターネット広告を商品として売ることへの罪悪感と職場で僕の過去のことを執拗にいじってくる上司の態度に我慢できず、半ば強引に退職した。


過去というものは残酷で、自分の名前と存在がある限りいつまでもどこまでも着いてくる。

忘れたつもりでいても世間や周りがそうはさせてくれない。


僕もまた過去に囚われ、過去から抜け出せないまま世に放り出された人間のうちの一人であった。



 飯田凌介イイダリョウスケ、27歳、元バラエティータレント。

 前広告代理店営業。



僕は今、パチンコ屋に並んでいる。

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