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漆黒の世界に差す光を私は。  作者: 黒猫
訂正追いつかず、物語大幅変更
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7章 サレットとムヨル

(ラスタ兵士二人格下げ→兵士(上)反論→ヤラール脅す→兵士帰還)


「あの綺麗なお姉さんと知り合い?」


ヤラールが鼻の穴を広げて聞いてきたので、私は、あまり答えたくなかったが口を開いた。


「私の親友サレット。小さい頃、一緒に遊んでいた。何故ここにいるのかは、分からないが。」


「何か聞きたそうな表情ね。」


アリュウの疑問点に気付いたのかサレットが会話に入ってきた。


黒い大きな瞳が私達をじっと見ている。


ヤラールの頬が赤くなった。


「美しいなあ。」


私は、思いきり足を踏みつけた。


「痛いよ! 綺麗な人を見ることは罪ではありません!」


「鼻の穴広げていたじゃないか! そんな目で親友を見るな!」


だが、ヤラールは私の言葉なんか気にせずうっとりとした表情で彼女を見続けたのだった。


「アリュウちゃんも美人だよ、それは認める。でも、サレットちゃんは色気のある美女で俺のストライク!そうだ、今度デー」


ヤラールの話が終わる前に、サレットの手が赤頬男へと飛んだ。


バシンッ!


「ぐはっ、痛い!」


顔全体が真っ赤に燃える程の強烈な平手打ちだった。


「あなたみたいな人私、大嫌い。誰にでも美しいって言ってしまうんでしょ。信憑性に欠けるわ。そうね、そこにいる金髪の王子みたいな人、素敵じゃない?」


サレットは、うっとりした顔でラスタを見ている。


お前もヤラールと同じで美しい顔立ちの人が好みじゃないか、と、言いかけてやめた。


今から喧嘩になる。


口喧嘩で勝ったことは、一度もないからな。


だが、さすがサレット。勘が鋭い。


ラスタから感じることの出来るオーラが王であると、予感したか。


だが、王子だということは、伏せなければならない。


サレットの瞳は、ハートの形になっている。


あいつは、ラスタが王子ではなかったとしても、関係なく好きだろう。


それがサレットなのだ。


心配する必要はないな。


そう思っていると、先程助けられた夫婦が、とある青年に礼を伝えている声が聞こえた。


その方角には、茶髪の青年が耳を赤くさせて赤ん坊を撫でながら笑っている。


癖っ毛でタレ目の愛らしい青年。


「ムヨルなのか?」


サレットは、私の声に答えてくれた。


とても得意気だ。


「弟に見えないくらい背が高くなったのよ。ムヨル、格好いいでしょ。」


茶髪の青年は、私に気が付いたのか丁寧に頭を下げてくれた。


私も慌てて頭を下げる。


「10年ぶりに会ったのにあなた達、相変わらずね。」


サレットは、私を見てため息を吐いた。


お互いに敬意を払っているのだと言って欲しい。


すると、ヤラールとラスタがやって来た。


サレットの頬がすぐに赤くなる。


「僕達、全く話が分からないんだが、三人ともアリュウの友人で上民なのかい? あの弓の腕前でそうかなって思ったんだけど違うかな?」


ラスタの服装は、先程と変わり黒いマントを着ていた。


フードを被っているため、顔があまりよく見えない。


ヤラールも同じようにしている。


王族だと気付かれないように変装しているのか。


「王子様……私の王子様。」


サレットは、違う意味から気付いてしまったみたいだけどな。


友人は、ラスタに見つめられながら恥ずかしそうに話し始めたのだった。


「私達は、王の許可なく下民に戻りました。下民狩りを行うアリーフ王に従うことが出来なかったのです。」


「なら、君達は、今、下民達を上民から守っているのかい?」


ラスタの問いにサレットは、目を輝かせた。


「そうなんです! 私の弟が言ったのです。アリュウと手を合わせれば、下民達を上民から守れる、だから僕達は下町に帰るんだって。」


泣いてばかりいたムヨルがそんなことを。


私は、親友の弟の背中を見て逞しく思った。


(格好いいじゃないか、ムヨル。)


アリュウが聞こえていないところでヤラールがサレットに近付き耳元で囁いた。


「ねぇ、弟のムヨル君が、10年間一度も下町に立ち寄らなかった理由ってアリュウちゃんが原因なんじゃない?」


「よく分かったわね。あの子、アリュウさんより強い戦士になってから下町に戻るって言ってきかなかった。アリュウを超えるなんて天地がひっくり返っても無理なのに……って、私は王子様を見ているの!そこどいて!」


サレットにドンッ!と背中を押されて突き飛ばされたヤラールをある一人の青年が受け止めた。


「大丈夫ですか?」


「あんたがムヨルだな。支えてくれてサンキュー。」


ヤラールは、ムヨルの耳元に近付き悪魔のような笑みで囁いたのだ。


「アリュウちゃんに惚れてるだろ?」


ムヨルの頬が一瞬で真っ赤になった。


また、ヤラールが変なことを言ったのだろう。


「ムヨル、大丈夫か?」


「ア、アリュウさん! 今の話聞いていましたか?」


「いや、何も知らない。」


「よかった。」


ムヨルが安心している姿を見ながらヤラールが笑いを堪えている。


一体何なんだ。


その時、サレットの言葉が今の状況に風を通してくれたのだ。


「立ち話もお辛いでしょうから、ラスタさん、私の家で話しましょう!」


「へ? あ、あぁ。」


完全にサレットの空気にラスタが飲み込まれている。


助けを求めるようにこちらを見ているが、ヤラールがバツマークを作っているので、彼は肩を落としながらサレットの家に入って行った。


彼女は、美しい青年にただならぬ執着心を持っているのだ。


ストーカーになる前に止めることが友である私の役目だな。


家に呼ばれたのがラスタ限定だったことには、耳を疑ったがみんなに聞こえるように話していたのは、「あなた達も来なさい。」と伝えたかったのだろう。


「姉さん!」


ムヨルは、ため息をつきながら急いで家に入って行った。


ヤラールは、まだ笑いが止まらないのか口元が緩んでいる。


「アリュウちゃんが羨ましいよ。」


リズムを刻むように前に進んで行く男に私は(そんなこと思っていないだろ!)と、突っ込みを入れたくなった。


ヤラールは、謎に満ちていて危険な匂いを強く感じる。


だが、私は彼を深く詮索したくないと思うようになっていた。


赤髪の男の瞳が時々、今にも泣き出しそうなぐらい悲しみに暮れていることに気が付いたから。

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