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プロローグ
私は、何のために生きているのだろう。
この世界で為すべきことなんてあるのだろうか。
「キュルキュルキュルキュル……」
夜の静けさを腹の音がかき消す。
(殺されたいの…上民に気付かれるわ。)
私は、そんな自分に嫌気が差しながらもお腹を押さえながら民家に入り食料を探した。
この世界では、下民と呼ばれる人間になると、いつ殺されるか分からない日々を送らされている。
下民には、食料の配給がない。
この国の王様がそう決めてしまったからだ。
価値がない人間は、この世には必要ない。
彼は神様になったつもりなのだろうか。
私は、戸棚にある果物が入った木箱を見つけた。
勢いよく全て遠慮なんかするはずなく布に包み、外へ出た。
飢え死にしないためには、食料を盗むしかないのだ。
犯罪者になるしかない。
そうなりたくないなら死ぬしかない。
でも、私はこの生活をやめられない。
食料の問題は私だけの問題ではないからだ。