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家族計画とお子様ディナー

今回は地味に難産でした。


総PV4000overにユニーク1000over突破ありがとうございます!

それと、ブクマ登録と評価して下さった方々にも合わせて御礼申し上げます!

 

「うーん……うーん…」


 翌朝、俺は片耳にティアラを冠した小型乗用車ほどの大きさの二匹の猫にじゃれつかれ、のし掛かられる夢を見て(うな)されて起きた。


「重い…暑い……何で、?………って、あぁ。 ふふ、ティアラを冠した猫ね。」


 目を覚ましても、重さが無くならないのに加え体が妙に火照っている事に、風邪をひいたかと不思議に思いつつ体を起こそうとした時に原因が分かって、思わず笑ってしまった。

 何せ、二人の猫人族の女の子が俺の体に乗っかるようにしがみついて、幸せそうに寝ていたのだ。

 俺は体を起こすのは諦め、二人の頭を撫でながら目を覚ますのを待つことにした。



「ん……ぇ…?…あっ…えへへ。」


 それから、10分もしない内に起き出したフィオリアが、一瞬昨日までとは違う事に戸惑いを見せたが、すぐに何があったかを思い出し、感じる温もりに子供らしい笑顔を見せた。


「お? おはよう、フィオリア。」


「ぉ…おとうさん…えっと、あの…おはよう。」


 俺は、フィオリアが起きたのに気がつき挨拶をすると、はにかんだ笑顔で挨拶を返してくれた。

 が、すぐに照れ隠しで俺の腹に顔を(うず)めてしまったフィオリアの頭を撫でていると、挨拶の声で妹のシャルリアも起きたのでフィオリアと同じやりとりをしてから、三人で布団を出た。

 しかし、俺のシャツを巻き付けただけの子供達の様子を見て、さすがに服も下着も日用品すら無い状態なのは親としてダメだと思い、子供達を連れ朝食も兼ねて必要な物の買い物に出掛ける事にした。


「お、おとうさん…どこ、いくの?」


 まだ少し、ぎこちなさの残る調子のフィオリアの声が耳元で聞こえる。

 何故、耳元かと言えば、子供達を左右の腕に座るように抱えているからだ。

 家を出るまでは手を繋いで歩こうと考えていたのだが、身長差が有り過ぎて子供達の負担が大きいと思って、そうなった。

 それと家を出る前に簡単に聞いたのだが、二人は双子で歳は十二歳なのだそうだ。

 俺は、幼少期からの栄養不足による体の発育に遅れがあるのは、身長が130どうかで脂肪が無くガリガリな見た目からも予想をしていたが、それでも実年齢を聞いた時は不覚にも戸惑ってしまった。


「服屋に行くんだよ。まぁ、その前に屋台で朝食を済まそうか。」


「…ごはん。たべて、いいの?」


「当たり前だろう。俺は、おまえ達のお父さんだぞ?」


 シャルリアが恐る恐るな感じで聞いてきたのを、俺はニッコリと目を合わせて答えると、昨夜風呂に入って毛並みの良くなった黒猫の耳をピコピコ動かし尻尾を腰に巻きつけ、子供らしい笑顔で照れた。


□■□■□


 街に着いた商人や街を出る冒険者で賑わう大通りを、俺は両手で子供達を、子供達は両手で串焼きを持って服屋に向かって歩いて行く。

 程無くして、服屋に到着すると子供達を下ろして入店と同時に挨拶をしてきた女性店員に、子供達の服と下着類を幾つか持ってきてもらうように頼む。

 その間に、店内に飾られている服を三人で見て回る。


「さて、フィオリア、シャルリア。どんなのが良いか?」


 店内に入ってからも、俺の手を離さない子供達に問い掛けつつ選んでいく。

 

 余談だが、この世界の服と言えば古着が一般的なのだが、しかし子供服はその限りでは無い。

 各家の子供は、家の手伝いで農作業や漁業、それに日々の遊びなどで消耗して着れなくなれば布として再利用する事が多いのだ。

 なので、基本的に成人する15歳未満の服は再利用の布を親が縫って仕立てた服か、新品の服という事になる。

 そのせいなのか、フィオリアとシャルリアは俺の手を離さず遠慮がちに歩いているのを苦笑しつつ、店員が戻って来るまで独断で選びながら待っていた。


 それから5着を選んでいる内に、「お待たせしました。」と言って、両手に服を山の様に抱えた女性店員が戻ってきた。

 その女性店員は、子供好きなのか営業スマイルとは違う笑顔で嬉々として服の説明を始めた。

 ワンピースやスカートからホットパンツのような短パンまで、多種多様な服を広げて見せて子供達の体の上から合わせてくれる。

 そうした努力(?)もあってか、はたまた色とりどりな服を見てか、子供達の緊張や遠慮が抜けて笑顔が出てきていた。


 それからは、服を合わせられて笑顔を見せる子供達に俺も魅せられて女性店員と一緒になって、あれやこれやと子供達を着せ替え人形の如く親バカ心をさらけ出して数時間を過ごした。

………

……

 全員が時間を忘れて熱中した結果、街に午後三時を告げる鐘(昼の鐘すら聞き逃した)が鳴り響いた音で我に返り、皆で苦笑しつつ下着と服それぞれ十数着を二人分購入して店を出た。

 子供達は、俺のシャツを巻き付けた格好から、お揃いの白いワンピースに赤がフィオリア、青がシャルリアで色違いの尻尾飾りのリボンでオシャレをして、朝のように俺の腕に座るように抱かれている。


「おとうさん。おふく、いっぱい、かってた。」

「きれいな、おふく、ありがとぉ。おとうさん。」


「楽しくなり過ぎたな、まぁ後悔はしてないけどな! けど、時間は無くなったから他の買い物はパパッと済ませようか。」


 そう言って、近くの店から日用品やら布団を買い集め夕飯の材料も買い、家に帰る頃には日も暮れてきていた。


 まあ、その道中で問題も起きたが…。

 どうも昨日までの二人を知っている(たち)の悪い、子供達を蔑んだ態度で絡んでくる輩どもが近寄って来たのだ。

 矢継ぎ早に口汚い言葉を浴びせかけてくる輩どもに、子供達は辛い思い出を思い出して泣いてしまうし、俺の事をオッサン呼ばわりして金をせびってくるしで、天下の往来で殺気を出して本気で蹴り倒してしまった程だ。

 …もちろん、殺してはないよ? 子供達の教育に悪いからね。


 そんなこんなもありながら、家の中に入り早速夕飯の準備に取り掛かった。

 帰りに買った夕飯の材料は種類も量も多く、下拵えも大変そうだと思いながらも、料理を食べた時の子供達の笑顔を思い浮かべれば苦労にも感じない。


 まず手始めに、魔物化した元牛と豚の肉をミンチに加工する。

 この肉は言うなれば、スーパーでグラム百円ぐらいで売られるような肉だ。

 ちなみに、ちゃんと食肉飼育された家畜は王侯貴族御用達で、和牛などのブランド肉で高級品だ。

 それをオリジナル魔法でミンチにして、5:5の合い挽きにして玉ねぎのみじん切りと卵に牛乳、パンを削ったパン粉と一緒にボウルに入れ子供達に捏ねてもらう。


「フィオリア、シャルリア。この、お肉を捏ねておくれ。」


「「は~い!」」


 元気よく返事をして楽しそうに捏ね始める子供達を横目に、見た目や食べ方が確立されて無く捨て値同然だった海老の下処理を始める。

 実は、この海老を見つけ値段を見た時に、即行で売っていた店の店主と仕入れ契約を結んでしまったほどだ。

 なにせ、日本で言う車海老が5尾百円程度で手に入るのだから。

 そんな海老の頭を取り殻を剥いて背腸(せわた)を取り除き、真っ直ぐになるように海老を伸ばしてを9尾終えたところで、捏ねてもらってた肉が良い感じになっていた。


「よいしょっ、よいしょっ。」

「ぺったん、ぺったん。」


「お、良い感じになったな。 それじゃ二人とも、次はこの位の大きさで3つにしてくれるか?」


 そう言って、大きさの見本として(こぶし)を見せると。


「「えへへ。わかった、おとうさん!」」


 と、またも元気の良い返事を聞いた俺は、その間に海老に小麦粉をまぶし卵液に潜らせパン粉を纏わせる。

 剥いた海老9尾にパン粉を付け終えた頃に、子供達が拳大(こぶしだい)に形成した肉を受け取り、熱したフライパンに3つ並べて焼いていく。

 ジュ~ジュ~と肉が焼け油がはぜる音がするフライパンに、肉の中まで火が通るように蓋をする。

 そして肉を焼いている間に、衣を纏わせた海老を180℃ほどに熱した大量の油に泳がせると、ジュワジュワッと音を立てて揚げられていく。

 さらに、時間停止が掛かる空間魔法をいい事に保存しておいた炊きたてのご飯を出し、手早くチキンライスを作り温野菜も蒸して、フライパンの肉をひっくり返し両面を焼き、きつね色に揚がったエビフライの余分な油を切る。


 出来る時間を合わせると最後はごちゃごちゃしやすいが、そこは慣れである。

 盛り付けは、大きめの皿にワンプレートのようにチキンライスを盛り、ハンバーグにエビフライと温野菜、それになんちゃってデミグラスソース(今まで拠点が無く本格的に作れなかった)をかければ、お子様ディナーの完成だ。


「さ、出来たぞ! フィオリア、シャルリア、席に座ろう。」


「「は~いっ!」」


 待ちきれないとばかりに返事と同時に、テーブル席に駆け寄って座る子供達に微笑み、テーブルの向かいに並んで座る二人の前に皿を置いてあげる。


「それじゃ、いただきます。」


「「いただきま~すっ!!」」


 子供達は左手にフォーク、右手にスプーンを持ち今日一番の大きな声を出して食べ始めた。

 二人は、揃ってハンバーグにフォークを刺し丸ごとかぶりついて食べ、器用に右手のスプーンでチキンライスを掬って食べて、それを飲み込むと次にエビフライを食べてと忙しそうだ。

 俺は、口の周りをソースで汚しながら黙々と食べていく姿を、(いと)しく感じ自然を微笑んで眺めていた。


「美味しいか?」


「「モグモグ…んぐ。 うんっおいしいっ! モグモグ。」」


「はは、ありがと。 でも、しっかり噛んで食べろよ?」


 二人は喋るのも惜しいのか頷くだけしかしないが、ちゃんと噛んで食べだした。

 それを見て俺は、二人が作った形が歪で空気抜きが不十分で、焼いている間に割れてしまったハンバーグを味わうように食べつつ、これからの三人での暮らしに思いを馳せていた。



 作中に猫人族の二人にネギ科食材を食べさせましたが、設定上の獣人の立ち位置はほぼ人に近い存在です。

 耳がケモミミになり尻尾が生えただけの人間、ぶっちゃけコスプレ?…まあ、ケモミミだけで人の耳はついて無いですがね。


 実際には、動物にネギ科食材を食べさせてはダメですよ!

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