ERROR CODE:1x006 新しいモノ
一話あたりを増やそうと思っても展開の変わり目で切るとやっぱり1000字前後になってしまうジレンマ
「会議室」は、その名前の割に小さく、小綺麗な部屋だった。部屋の壁に並んでいるガラスケースには、なぜかプラモデルが並べられていた。
「じゃ、君はこの椅子に座ってくれ。充電が不十分みたいだから、ヘッドセットかぶっててくれるかな?」
椅子に座り、佐藤さんからヘッドセットを受け取って被る。コンセントにはすでに接続されていたようで、電子音が鳴る。それ以外は何ら感覚の変化がない。
武藤さんは俺を座らせたあと、佐藤さんに耳打ちして部屋を出て行った。
密室のようなので、上の服を捲って四角くなぞる。電子音と共に腹が開き、中にエンジ色の基盤やSSDなのであろう黒い箱、そして銀色の板に取り付けられた端子類には、簡単なラベルが添えられている。AC端子やUSB端子はわからないではないが、HDMIやSDカードスロットなど何に使うのだろう?
顔を上げると佐藤さんが固まっていた。
「……あまり人前では開けないようにな。」
そうつぶやくと後ろを向いてしまった。
そこでようやく自分が何をしているのか気づいた。
服を捲り上げて腹を開いていては倫理的によろしくないということか……。
それに、俺の身体は男のそれではないことも関係してくるのだろう。
「すいません。」
とりあえず謝って、ハッチを閉じる。ヘッドセットで充電してるからプラグ類は不要だろう。
そこへ、武藤さんが封筒をいくつか抱えて入ってきた。
「遅くなった。すまないね。」
武藤さんが封筒を置くと、佐藤さんが椅子を出してテーブルの向こうに座る。
「そうしたら、ここでは研究成果確認のための問診と今後のことについて、君の身体についてを話す。それが終わったら本工場の先行開発棟で性能計測をさせてほしい。いいかな?」
武藤さんが座りながらそう声をかけてくる。拒否権はあってないようなものだが、別に拒否する理由も意味もあるわけじゃない。
「いいですよ。」
「よし、そしたらこれからする質問になるべく詳しく教えて欲しい。」
封筒から書類を取り出しつつ話し出す。手つきは慣れたものだ。
「まずは、君の過去のことから聞こうか。」
…………………
「質問するようなことはここまでだ。」
自分のつらい過去まで根掘り葉掘り聞かれ、その後現在の体調や身体の違和感について聞かれた。
身体の違和感が性差を除き殆ど無いことを伝えると二人が一斉ににやついたのは見間違いではないのだろう。
「大変だったところにこんなことに巻き込んでしまい本当に申し訳ない。」
武藤さんが何度目かわからない謝罪の言葉を口にする。
「我々が巻き込んでしまったことには我々が最後まで責任を持つ。メンテナンスや改良は任せてくれ。苦情は全て改善することを約束する。」
佐藤さんも強く語る。そして俺が言葉を返す間もなく、武藤さんが続ける。
「我々が説明してもわかりづらいだろうから、その身体の設計段階での説明資料だ。あと君の今後の生活について考えなければならない。」
ここで言葉を切ると、彼の目が書類から上がる。
「君の身体は17~22歳を想定して設計されている。一般的な生活を望むなら、高等学校への進学もやぶさかではない。もっとも、君の希望を優先するけどね。」
普通の生活。
何にも怯えることのない、青春期。
自分が終ぞ得ることのなかった学生生活を、手に入れることが出来るというのだろうか。
ならば、答えは一つ。
「学校へ……行きたいです。」
二人は揃って頷いた。
「わかった。その手続きをとることにしよう。君は東京に住んでいたんだよね?」
はい、と肯きつつ答える。
「ならば、学生向けに賃貸してる東京事業所社員寮の空き部屋に住めばいい。あってもなくてもいい建物だから生活くらいどうにかなるだろう。一人暮らし経験もあるようだしね。」
「本当にありがとうございます。」
深々と頭を下げる。歓喜故か、声が掠れる。
「じゃあ、手続きの準備しておくから今日はこれくらいかな。社員寮に予備の家具類あるか確認とってくる。しばらく待っててね。」
武藤さんはまた慌ただしく出て行った。
オオタロボティクス何者
12.12/11タイトル修正