ERROR CODE:1x001 造られたモノ
ちょっと別視点からの語りになります。
君は霊魂の存在を信じるか?信じようと信じまいと、それはそれで結構。霊魂というのはね、君のその意識、感情、記憶すべてを司っているんだ。
霊魂は概して人体という器に収められているのだが、人体の形状が同じように、霊魂にも規格が存在する。器を壊さないようにね。
そう居酒屋で酔っ払いに話しかけられたとき、武藤はあまり真面目に取り合わなかった。だから、意地悪な質問をした。
では、器が変わったらどうなるんですか?
あたりまえだ、器が大きけりゃ魂が足りないし、小さきゃこぼれちまう。そもそも霊魂は器にしっかりついてるからそっとやちょっとじゃ外せないしな。
面白いことを言う酔っ払いだ、と思った。それに感づいたか酔っ払いはニヤリと笑って続ける。
霊魂もな、科学的に器から切り離して、また植え付けることが出来るんだよ。しかも、その器ならもう普通に作れる。どうだ、知ってたか?
武藤は電流が走ったかのように立ち上がり、酔っ払いに向き直った。
「あなたは、何者なんです?」
自己学習プログラムにはもう限界を感じていた。どれだけ記憶能力が高くても、どれだけ思考速度が早くても、模倣は真実在に永遠に劣る存在であり続ける運命だと思い知らされるだけだった。
ならば、本物は使えないのか。
プログラムではなく実際の思考により動かすことはできないのか。
倫理の壁が立ちはだかった。いや、それ以前に技術的な問題があった。そこで思い悩んでいる時、この酔っ払いに出会った。
「俺か?佐藤って言うんだ。佐藤俊夫。霊魂科学を独力で研究してるんだがな、興味あるなら一編うち来るか?ほれ、名刺」
慌てて自分も名刺を差し出し、伊勢崎精機の武藤健吾だと自己紹介する。
ふと、そんな夢を見る。今自分の勤めるオオタロボティクス社内で凸凹コンビと評される自分と佐藤が初めて出会った時の話だ。懐かしい話だが、当時二人で語った霊魂移動の技術は代替人体の年齢操作技術が完全になれば医療用試験機の運用ができるという状態にある。
しかし、オオタロボティクスは医療機器メーカーではない。その先を目指していることを武藤は知っている。そして、もうすぐその先へと到達することは武藤が誰よりも知っている。
このひと倫理犯してる気がしますが悪者ではないはずなんです