過去と今の狭間で
一部 性描写があります。苦手な方はご遠慮下さい。
あれから一週間
瑠璃は毎日 金城と夕飯を共にしていた。ホテルの近くのお店の日もあれば、瑠璃の行き付けのイタリアンの時もあった。一度 居酒屋でベロベロになるまで飲んで食べた日もあった。 毎日が楽しくて、金城に逢うことが瑠璃の張り合いになっていた。
「瑠璃? 今夜も駄目なの?」
美帆が「うん 取材の続きなの。 」
美帆には、仕事の為だと言っていた。良い記事を書くためだと・・
けれど瑠璃の心は、金城との食事に安らぎとトキメキを感じていた。
・・彼は 海じゃ無い・・・
・・海じゃないのよ・・・・
でも、私の心があの人を求めている。
海ではない 海に似た彼を求めていた。
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個展の最後の日
海は、スタッフの一人に声を掛けていた。
「品川さん、ちょっと相談したいことがあるんですが?」
年齢的には、金城と同年代に見える広報の品川博美は 初めて金城から声を掛けられて驚愕の表情を隠せなかった。
・・・なんだ??・・・なんだ?・・・「忙しい所 すみません。ちょっと教えて欲しくて・・・」
「私でお約に立つことでしたら・・」
品川は少しドキドキしていた。だって、金城は無愛想だがビジュアル的にはモデルにでもなりそうな体格の持ち主で、沖縄の人には珍しい涼しげな目元をしていた。
「私と同じ位の女性は何をプレゼントすれば喜ばれるでしょうか? 余り、他人に興味が無いので 判らないのです。」
照れたように鼻の頭を掻きながらほんのり顔を染めている。
・・なんだ。連絡先を教えてくれって言われるかと思っちゃったじゃない・・・
落胆の色を見せないように、品川は気持ちを切り替えて考えていた。
「そうですね? 誕生日とか何かの記念日ですか?」
「いえ。そんな意味合いは無いんですが・・・・」
歯切れの悪い答えが帰ってくる。
「じゃあ まだ知り合って間もないんですか?」
少し意地悪な質問で釜を掛けてみた。
「はい。まあ そんな感じです。」
・・ビンゴ!・・・・
あの記者への贈り物だ。 毎日 個展の終了時間にロビーで居るところを見ていた。
彼女なら・・・
「綺麗な石のピアスなんかどうでしょう?」
ぱっと顔を輝かせ
「そうですね? ありがとうございました。助かりました。 ちょっと 行ってきます」
足早にホテル内のジュエリーSHOPに走っていった。
なんと・・・少年のような人・・・あんなに可愛らしく笑えるんだわ!・・・
品川は普段の無愛想な顔からは想像出来ない金城の表情に、好感を持っていた。
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「個展の成功 おめでとうございます。良かったですね? 盛況で・・」
今日の瑠璃は、いつもの仕事用のパンツスーツではなく、ベージュと黒の薔薇が印象的なラップワンピースに肩には黒のカーディガンを羽尾っていた。 大きく開いた胸元には瑠璃の華奢な鎖骨に映える小さな黒い薔薇のチョーカーがあった。
彼女の中性的な雰囲気とは少し外れた少女の色香があった。
「毎日 付き合わせてすみません。明日には沖縄に帰るので今日は最後になるとおもいます。これ毎日付き合ってくれたお礼に受け取って下さい。」
龍はオニキスで創られた小さなクローバーのピアスを差し出した。 バンクリーフの物だ。
瑠璃の瞳に暗い影が混じった 気がした。
ホテルの日本料理店の懐石はどれも美味しかった。料理に合うように見繕ってくれた大吟醸はフルーティーで水の様に飲み安かった。
「瑠璃さん 酔っちゃいましたか?」
金城に言われるまでもなく、
瑠璃の身体はアルコールと寂しさで一杯になっていた。
ツー と一筋の涙が頬を伝う。
「やだ!」
止めようとしても止まらない。
「どっ どうしたんですか?気分でも悪いんじゃないですか?」
金城は突然の出来事に戸惑ってしまった。けれど無意識に瑠璃の隣に座り 抱き締めてしまった。襖で仕切られた個室を静寂が支配する。二人の息ずかいと鼓動だけが耳に聞こえてくる。
「瑠璃? どうしたんですか?初めて合った時も涙を流されましたよね?」
金城は瑠璃を呼び捨てにしていた。
・・瑠璃・・瑠璃・・・・
「ごめんなさい。変な女だと思ったでしょう?」
「そんなことはないけれど・・凄く気になるんです」
この人は海じゃない。わかっているけれど、離れるのは嫌なの。瑠璃の本能が拒否していた。
「金城さんが帰ると聞いて、何だか・・・わたし・・・淋しくて・・明日から・・・もう・・会えない・・・て・・思ったら・・さ・・・」
金城の胸の中でポロポロ溢れる涙を止められない。瑠璃の唇は、金城のそれによって塞がれてしまった。 こうすることが初めから分かっていたように瑠璃の舌も金城の舌を迎える。
・ん・・あ・・
「瑠璃 愛してる」
瑠璃の背中に回された腕がキツクきつく抱き締めた。
金城の部屋に入って行くまで 瑠璃の手は金城の手に握られたままだった。痛いほどきつく握られ誰もいないエレベーターの中では激しく口付けを交した。
ドアを閉めるなり龍は瑠璃を抱き上げた。
「きゃ」
体の重心が変わってしまったことに対応できず、瑠璃は小さな悲鳴をあげてしまった。
濃いブラウンの瞳が優しくそして妖しく光った。
「瑠璃を貰うよ?」
問掛けるような 確認するような口調。
リビングの隣にあるベッドルーム迄お姫様だっこで連れてこられた瑠璃の体は、溢れくる熱に侵されていく。
「そんなに見つめられると我慢出来なくなる!」
龍は眉間に皺を寄せて恐い顔をしていた。
「俺は 初めてあったときから貴方をこうしたかった。好きになってしまった。 もし嫌なら言ってくれ。 今なら未だ・・・・」
激しい情熱を身体中から溢れさせ 瑠璃の顔を見つめている。
欲・・しい
私はこの人が欲しい
五年間 眠っていた私の中の女が目を覚ます。
沖縄の人には珍しい涼しげな瞳に 吸い込まれそうになる。嫌だなんて言う筈はないじゃない・・
「金城さんに初めて会ったとき、身体中の血液が逆流したみたいに動悸が止まらなかったの。私は貴方を求めているけれど、貴方に幻滅されるかも知れない。」
「幻滅なんて・・・・」
ベッドに座らされ、龍の指が髪を鋤く。それだけで、電気が走ったように体が痺れている。
ゆっくりと黒いカーディガンを脱がせ 龍の唇が瑠璃の額にキスをした。ついばむように瞼から鼻先 頬 耳たぶに降りてくる。
「はぁ・・あ・・」
耳の後ろに舌を這わされた時 我慢していた声が漏れてしまった。
「ここが 感じるの?」
執拗に瑠璃の弱い所を攻めてくる。
「・・だ・め・・・ぁん・・」
瑠璃の胸もとには触れてもいないのに、ワンピースの上からでも判る突起が膨らんでいた。
龍の指がワンピースの襟元をなぞって首筋から鎖骨そして、白く盛り上がった乳房の谷間をツーっと滑って行く。 じらすように触って欲しいところは直ぐ側にあるのに・・・
先ほどから龍の唇は 瑠璃の唇に触れてもいない。 エレベーターの中ではあんなに激しく求めたキスを龍は まだしてこなかった。
ラップワンピースのウエストのボタンを外すと、瑠璃は黒いキャミソール姿となった。 レースから見えているブラジャーには赤い薔薇が描かれていた。
*
瑠璃が選んだランジェリー。 自分には未だ早いかなと思っていた黒いランジェリー。老舗のデパートでフランスの下着メーカーを初めて訪れたのは、二日前だ。 一目で気に入ったのだが、余りに今までの自分には似合わないような気がして躊躇している瑠璃に、年配の店員さんが、優しそうな笑顔で試着を促してくれた。
「キット似合われますよ。」
そう言って。
試着室で其れを着けると 瑠璃の清楚な色気が小悪魔的に見える。 やはり これだ!
思わず微笑んでしまった。
**
龍の指が身体中を伝う。 瑠璃の中心はもう熱く溶けていた。
ゆっくりと時間を掛けて龍の指はショーツの脇にそって瑠璃のそこにたどり着いた。
「もうトロトロだよ? 何もしていないのに? ほら」
龍の瞳が妖しい光を放つ。
「ほら? 乳首も立っている」
しらない間にキャミソールは脱がされてた。薄いチュールのブラジャーを押すように突起が膨らんでいる。龍の唇が其れを含んだ。
「あぁぁ・・ いゃ・ぁん・・」
瑠璃の体がのけぞる。
けれど シッカリと腰を抱きすくめられ逃げることすら出来ない。
「ダメだよ。もう逃がさない。」
瑠璃の頭の中には、龍のことで一杯になっていた。
この五年間 男の人と体を合わせたことなどない。恋をしたことも無かった。瑠璃の心には、今まで海が住んでいたから。
そんなことを考えることなど出来ないほど瑠璃はエロスの中に呑みこまれている。
「・・あん・・いぁ・・ん ・・・だ・・・・」
執拗に瑠璃の体を愛撫する龍の体が段々と熱を帯てくる。
べっドに寝かされた姿を、龍が上から視ている。其だけで感じてしまう。
「見ないで・・」
恥ずかしさで両手で体を隠す。
龍は着ていたシャツとジーンズを脱ぎ捨て黒いボクサーパンツも脱いでしまった。
「瑠璃 目を開けて?」
恥ずかしさで閉じていた目を開けると、龍の逞しい体が目の前にあった。体を隠していた両手を束縛され熱い激しいキスが 瑠璃の唇を奪う。待ちこがれた龍の唇に応え 瑠璃も激しく求めていた。
幾度となく瑠璃は龍によって快楽の頂点に昇りつめた。
今まで味わった事の無い甘い世界に溺れていく。
瑠璃は何度も何度も歓喜の声を震わせ いつしか龍の胸に抱かれ安らかに眠りにつき幸せな夢を見ていた。
・・・瑠・璃・・
穏やかな青い海を見つめながら私は白い砂浜に座っている。海からボードを抱えて歩いてきたのは、龍の姿だった。私は彼に『海』と呼び掛けていた・・・・
翌朝 目覚めた龍の腕の中には 瑠璃の姿は無かった。 『昨夜はごめんなさい。そして ありがとう。 このままあなたの側に居るとあなたを傷つけてしまうと思うから さようなら ごめんなさい
瑠璃』
テーブルの上に短い手紙を残して 瑠璃は居なくなった。




