つまり、そいつは転校生。10ページ
「やっぱり人数が凄いよな。この学校」
廊下に、体操服で並んだ俺は、同じ様に廊下にいる生徒を見て、こんな事を呟いた。ガヤガヤと騒がしい廊下には、人酔いしそうな程の生徒が居る。
若干汗臭いのはスルーしよう。
「ああ。いつもは大して人数が多い様には見えないんだがな」
隣の修も、俺と同じ様に呟いた。
今日は、清涼学園の身体測定の日である。春先には必ずあるこの身体測定は、身長、体重、座高、視力、聴力、眼科、歯科、内科の検査及び検診を一日で行う。そのため、本日の授業は無くなり、測定が終わり次第生徒は帰ってよし!と言う事になっている。
因みに今俺達が並んでいるのは、基本的な身長、体重、座高を測る、保健室の前である。
「つか、俺は学校でわざわざ測らなくとも良い気がするんだが」
保健室のドアの前で腕組みをし、俺は不満っぽく呟く。っぽくじゃなくて、実際この身体測定を面倒だと思っているのだが。
「まぁまぁ、良いじゃねぇか猛。 そこまで面倒な行事って訳でもないんだしさ」
和樹が記録用紙を眺めながら、軽い調子で言った。記録用紙はもう、半分以上記入されている。
「お前らはそうかもしれないけど、俺は色々と面倒なんだ。実際この後だって……」
「おし、待たせたな、次の五人、入れ」
和樹に向かって文句を言おうとした時、保健室の扉が開いて、武川が顔を出した。相変わらず清潔感を感じない。
「……行かないの?」
武川が首を引っ込めてからも、俺達が動かないでいると、燕がおずおずと声を出した。体操服の上にジャージを着て、彼女も内科以外の検査を男子と共に回っている。
「んじゃ行くか。今年は何センチ伸びたかな?」
修はそう言って、真っ先に保健室の中に入って行った。
俺は心の中で思う。修、頼むからそれ以上身長を伸ばさないでくれ。会話する時、目線を合わせようとすると首が疲れるんだ。
「おい!早く誰か来い!測れねえぞ」
中に入ると、何故が武川が若干切れていた。武川の横には、一昨年辺りから嫌悪の対象である身長測定器があった。
「んじゃ、俺から行くわ」
真っ先に武川がいる身長測定器に向かうは和樹。測定器に乗って背筋を伸ばし、真っ直ぐに立つ。
ヒュンッ!
「いでっ!」
そして武川は、和樹の頭に容赦なく測定バーを叩き込んだ。
「172cm。次っ!」
和樹を身長測定器から降ろし、俺達に向き直る武川。体重計へと向かう和樹は、頭を抱えて呻いている。
「早く次っ!」
「「「「はっはいっ!」」」」
武川に急かされて、続いて向かうは優太。
「168cm。次っ!」
「痛ってぇ~」
修。
「185cm。次っ!」
「だぁーっ!」
燕。
「157cm。次っ!」
「たあっ~」
俺。
「158cm。……お前、成長したのか?」
「何で俺だけ哀れむ様なコメント付きなんだっ⁉」