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つまり  作者: 石本公也
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つまり、そいつは転校生。9ページ

なかなか食堂にあらわれなかったから、目の前にいるこいつは、自宅通いなのかと思っていた。

「良かったら、そこ座ってもいい?」

あったかお蕎麦をその手に持って、軽く引くくらいの美少年は聞いてくる。

「あ、ああ。別に構わないが……」

「ありがたい。座らせて貰うよ」

伊坂は嬉しそうに頷いて、俺の隣に座った。

あったかお蕎麦を食べ始める伊坂。だが俺はもう自分の分を食べ終わってしまっている。それに、燕みたいにデザートを持っている訳じゃない。しょうがないので俺は、冷や水を少し口に含んだ。

「ところで、少し気になった事があるのだが、良いかい?」

あったかお蕎麦を半分程食べた伊坂が、ふと顔をあげて訊いて来た。って半分⁈この短時間で半分食ったのか⁈

「何?」

パフェの頂点にあったイチゴをようやく食べた燕は、驚く素振りを見せずに伊坂に聞き返す。そうだ。伊坂は何を聞こうとしていたのだろう。

「二人は、どうして一緒に?」

容器の中身がめんつゆだけになり、伊坂は問いかける。俺はもう驚かない。

「どうしてって、ルームメイトだしね。ね、猛」

「そうだな。別に特別な事がある訳でも無いしな」

ただ、男子と相部屋にすると色々あぶないって話でそうなってるんだよな。

「ルームメイト?確か山瀬さんは、この学校に通う唯一の女子だろう?どうして、神鎌と?」

空っぽになった容器を脇にやって、伊坂は腕を組んだ。何だか、何となくだが、俺の身体の事は黙っておこう。そう思った。

「うーん、まぁ、理由はそれなりにあるんだけどな……詳しくは」

だから、俺は腕を組んで唸る様な仕種をする。

「……猛?」

燕が(いぶか)しむ様に俺を見てくる。俺はなるべく燕と視線を合わせない様にしながら、伊坂の反応を伺った。

「それなりの理由で、男子と女子が同じ部屋になるのか?……まぁ、部屋数が足らないなどの事情もあるのだろうが……」

伊坂は、少し前に教室でやった様に、顎に手を当てて考えこむ。これでまだ教室みたいに鋭かったらどうしようか。

でも、教室の時は燕の否定があったからな。今回は流石に無理か。

「……………性転換……」

「えっ⁈」

「あ、いやぁ、何でもない。で、その事情と言うのはやはり、聞くものじゃないな。余程の事があるのだろう。じゃあ僕は、荷物の整理があるのでね」

矢継ぎ早に言葉を繰り出し見事なウィンクを見せ付けて、伊坂は食堂から退室して行った。

「伊坂君、今性転換って言ってた……よね?」

か細い声で燕が聞いてくる。

「あ、ああ……」

ただの漫画の読みすぎだろ。案外そう言うものが好みだったりしてな。あの顔で妄想好きか?

そう笑い飛ばす気にもなれず、俺と燕は、伊坂が返し忘れていたお蕎麦の容器を眺めていた。

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