つまり、そいつは転校生。1ページ
適当に書いているこの『つまり』。
一時、普通に進級させるか、歳を取らせないか考えた事がありました。
でも、歳を取らせない様にすると、直ぐにネタ詰まり。消去法で進級させるって事になりました。
地味な話です。
新学期の始まる前日、二年生になる一日前。俺は何と無く、校舎の近くの草原に、一人で寝転がっていた。この頃、陽射しは暖かく、風は冷たすぎない涼しさて吹いている。
こんな日に草原の上で日向ぼっこをすると言うのは、猫になった様でかなり気持ち良い。
「ニャア~」
耳元で鳴き声がする。寝転がったまま首を動かすと、一匹の黒猫が、ちょこんと座っていた。首にリボンが結ばれている事と、この学校の敷地内にいる事から、山崎さんが名目上管理している猫だろう。猫アレルギーの生徒もいるだろうに、放し飼いなんかしていいのか?
「ニャア~」
多分俺と燕が着物を着た写真売って稼いだ金で賄われている猫は、もう一度鳴いて、俺の頭の処にやって来た。山崎さんの躾がいいのか、俺がただボーッとしているからなのか、猫は警戒する様子がない。
可愛らしいので、頭を撫でてやる。黒猫は目を細めて、気持ち良いのかゴロゴロと喉を鳴らした。
「……っふぅ」
肺に溜まっていた空気を、一気に出す。全身の力が抜けた。風て揺れる木々の音を聞こうと、目を閉じる。
「ニャア~」
俺が撫でる事を辞めてしまったからだろうか、猫は鳴いてせがんでくる。が、俺は動かない。ただ目を閉じて仰向けに寝転がっている。
「ウニャアァ」
「痛っ!お、おい、髪をいじるな!」
俺が無視し続けているので、とうとうつまらなくなった猫は、草の上に広がった長い髪をいじりだした。器用に引っ張られ、俺はたまらず起き上がる。とーーーー
「うわっ!」
起き上がった目の前に、一人の男子生徒が目の前に立っていた。
今年入って来た人だろうか、新調の制服を着ている。だが、それにしては中学生らしくない。中学一年生ってのは、もっとこう、あどけなさってものが残った顔をしてる気がする。
目の前の男子の顔をよく見てみる。今の俺みたいな綺麗な黒髪。やや鋭いまぶたのなかに、凛々しく輝く瞳。スッとした顎のラインに、これまた綺麗な鼻。
軽く引くくらいの美少年だった。
和樹もだいぶ整った顔立ちをしているが、それの比じゃない。本当に軽く引くくらいのイケメンだ。こんな奴、少なくとも高等部にはいなかった。
「……女子?」
目の前の美少年は、これまた驚いてしまいそうなイケメンヴォイスで、驚いた表情で呟いた。自然と、俺は美少年と見つめあってしまう。
「え……あ……」
無意識に口から声が出た。小さく細く、かすれる様な声だった。
「友晴ー、どこー?帰るわよー」
不意に校舎の方から声が聞こえた。目の前の美少年は、クルリと体を反転させて、俺の事を一瞬見てから、校舎の方へと歩いて行った。
美少年が見えなくなってから、俺は大きな欠伸を一つして、再び草の上に寝転がった。