つまり、男達の願い?4ページ
「久しぶり…ですね」
「久しぶりだねー」
「久しぶりですね」
声を掛けて来たのは、彩森さんと秋永さん。温華女学院に通う知り合い以上。デパートのチョコ売り場で、まさかの再開。
「今日は、二人だけなんですか?他の人達は?」
俺がそう聞くと、二人はクスリと微笑んで
「たとえ友チョコでも、あげるまでのお楽しみです」
と言った。その後、
「あの…そっちの子は?」
燕を指さして、綾森さんが聞いてきた。
「そっか、綾森さんたちは、燕の事知らないんだっけ。この子は山瀬 燕。清涼学園に通う、俺の友達」
「神鎌さん。俺ではなく、私と。…確か清涼学園は、男子校ですよね?もしかして…」
「そう。性転換者。でも俺みたいに男になったり女になったりしないよ」
「性転換って、実はそんな超常現象でもないの?…混乱してきた」
そう言って頭を抱える彩森さん。いやいや、性転換はそういう手術を受けない限り、人間には起こりません。俺は例外だけど。
「えーっと、知り合い?」
こっちはこっちで取り残されている燕が、俺に尋ねる。
「あーこっちは温華の人で、綾森さんと秋永さんだよ」
俺が紹介すると、燕はふぅんと頷いた。
「あの…二人はどうしてここに?」
秋永さんが、ショーウインドーの中のチョコを、気になっているのかちらちら見ながら訊いてきた。
「クラスメイトにチョコを頼まれちゃって、買いに来たんです」
答えたのは燕。その後、ショーウインドーに目を向けて、
「でも、量が多いからどうしようか…」
と言った。
「一クラス分だもんね…」
俺もこう言った。思わずため息が出てしまう。
「ねぇ、思ったんだけど、そのクラスの人達、手作りが欲しいいんじゃないの?」
「「手作り?」」
彩森さんの言った言葉に、俺と燕が声を揃えて反応する。
「そう、手作り」
「ん~でも、手作りって何かと面倒なんだよね」
「かかり、頭掻かない」
「でも、お菓子を作るのは楽しいですよ。それに、やっぱり貰う側は、手作りの方が嬉しいですし」
秋永さんの言葉に、うーむと俺は腕を組む。そしてしばらく悩んで
「まぁ、作るのも悪くはない…な」
チョコレートは手作りに決定した。