つまり、男達の願い?3ページ
日にちは飛んで日曜日。
バレンタインに作る物も大まかに決まり、俺と燕は、菓子の材料を買いに、今現在、保灯駅南口のターミナルにいる。そして、俺達の機嫌は、只今 絶 不 調 だ。
理由は簡単である。
「ねぇ~返事してよ~無視しないでさ~」
こんなのが、もうさっきから何回も起こっている。
「はぁー」
深く、深く溜息を吐く。こんな事なら、男の状態で来れば良かった。バレンタインシーズンに男がチョコ売り場に現れるのはどうかと思うから、女の姿で来たのだが、……ナンパが酷い。絡まれると、進路を妨害されて進めない。しつこい奴らをやっとの事で引き剥がしても、また次の奴がやって来る。あぁウザい。燕は、表情こそ明るいものの、やっぱりナンパが嫌な様で、だいぶ引きつっている。
「ねぇ~そんな顔「頼むから買い物をさせろぉ‼」
「ヒイッ!」
声を掛けながら俺の肩に手を置いたナンパ男に向かって一喝。ナンパ男は、驚いて、俺の目の前で尻もちをついた。
後ろから、呆れた様な溜息が聞こえて来るまで、後数秒。
「全く、気持ちは分かるけど、町中であんな大声…」
駅前の、大きなデパート。そこの入り口で燕が小言を言って来た。
「でもあの後絡まれる事無かったんだからイイじゃんよ」
ケラケラと、俺は流す。デパートの中で言い争うのは嫌だかんな。
「はぁ……」
額に手を当てて、溜息をつく燕。
「燕、そんな溜息吐いて幸せ逃がすより、さっさとチョコ売り場に行っちゃおうよ」
「………そうだね。…所で、四十人分のチョコって、いくらになるのかな?」
デパートの入り口からチョコ売り場に行こうとした時、燕がふとこんな事を言ってきた。
俺は慌ててサイフの中を確認する。取り敢えず、安い物なら結構な量が買えそうだ。
「あ、チョコ売り場。…本当に女子しかいないし……」
「まぁまぁ、落ち着きなよ元男子。適当に買って帰れば良いんだし」
ファンシーなマフラーを巻いた沢山の女子。そんな人達を押しのけて、俺達はカウンターの前に出る。
「うっわ、沢山の種類があるなー」
「ても、大きくない?もっとこう……スッってやってパクッ。みたいなのは無いのかなぁ?」
「要するに一口サイズね」
目の前にあるショーウインドーを、ジッと眺めてみる。ハート型。ハト型。四角…。型だけでも沢山あるな。
その時、不意に声をかけられた。
「あれ?もしかしたら……神鎌ちゃん?」
視線を向けると、彩森さんと秋永さんが居た。