つまり、クリスマスって訳。 1ページ
いよいよ物語が現実を抜かしましたw
町が、国が、人が、どことなくウキウキして見える。駅前を通れば輝かしい光の装飾があり、お店には大きな偽物の木が売り出される。そう。十二月にある、子供の頃にほとんどの人が楽しみにしていたであろう、クリスマスが近づいているのだ。
だが、高校生になると楽しみになるクリスマスも、妬ましいものにしか感じない人達もいる。それは、教室を見渡せば、嫌でもわかる。先日の交流会で、はたまた他の場所で出会いをして、予定が埋まっている者もいるが、それは少数だ。
歓喜と怨念の混ざったような教室から逃れるように、俺と燕は屋上の前の踊り場にいた。屋上の外に行ったほうが安全なのだが、外は寒いし、第一鍵がかかっている。教室はストーブがついていて暖かいのだが、昼休みに教室にいたら、怨念渦巻く生徒にまとわり憑かれるので、寒い中マフラーに顔をうずめて、誰も来ませんようにと願いながら過ごしている。無駄に広いこの学園にも始めて感謝した。
「はぁ~っ」
かじかんだ手先に息を吹きかけて暖める。
「寒いねぇ」
屋上のドアに寄りかかりながら燕が言った。そうだねと俺は返した。
「クリスマスだからって、少し浮かれる程度でいいのに、みんな躍起になってさ」
俺はため息がちに呟いた。お祭り的みたいにさわぐですませられないのかねぇ。
「無駄に外がロマンチックに装飾されているからってね」
燕も困ったように笑う。
「みんなムードに流されるんだよな。まぁ、恋愛にはムードも重要なのかもしれないけど」
「どこかに出かけるのも疲れるし、寮でゆっくりするのがいいね」
「それは年末が自然と寮でまったりすることになるよ。せっかくだし、イルミネーションを眼下に時計塔から星でも見ようか」
「それもなかなかロマンチックだね」
話していると、鐘が鳴ったので、俺と燕は教室に戻る事にした。
「つまり……どうゆうこと?」
「ゆっくりしたいってこと」
和樹たちに俺達の意思を伝えると、ほんの少し和樹たちは固まった。またどこかに連れていく計画でもしていたんだろうが、教室の男子達から刺さるような目線を浴びている俺たちは小さいぱーちぃーで十分だ。
「しかしクリスマスだってのに部屋でゆっくりするだけだなんてつまらんな」
優太が顎に手を添えて言った。
「でも遊びに行くのはいやだって言うしよ」
とぶぅ垂れる飾。
「ほかにはないのか?クリスマスらしいことって」
修が言った。イベントには手を抜かないなぁこいつら。
そう言いながらも、俺もこのままだとなぁ、的なことは考えていた。しかし案が思いつかない。どこかに遊びに行かなくても、クリスマスらしい雰囲気が楽しめるものはないのかな?
「えーっと」
不意に、燕が声をあげた。