つまり、大変な事に… 6ページ
「気持ち良かったなぁ」
ドライヤーで髪を乾かしながら、俺は呟いた。
「確かに良い湯だったな」
修も同意した。和樹達も髪を乾かしている。
宿屋だからか、とても広い風呂を使えるのは、凄いよな。さっぱりした。
俺達は、荷物を持って、脱衣所から出た。すると、俺達が出て来たところの右隣、つまり、女湯の方から、秋永さん達がでてきた。
「あ、そちらもお風呂に入ってたんですか?」
秋永さんが言った。
「はい。…えっと…天冠さんはどうしたんですか?」
「あ…あの子は今日は…その……月もので」
ああ成る程と、飾達は頷いた。
「じゃあ、この後食堂でね」
彩森さんが、そう言って俺達にウィンクした。
食事を終え、部屋に戻り、後は自由にした後眠るだけの俺達は、暇を持て余し、部屋にあったテレビを、なんとなくつけてなんとなく眺めている。もう何杯飲んだか分からなくなったお茶をすすりながら、俺は、テレビに
映るタレントを見ていた。
ピリリリリリリリリリ
突然、優太の携帯が跳ねた。優太は携帯を持って開く。そして、
「別に電話じゃなくても良いんじゃないか?」
と言った。俺達は聞き耳を立て、相手が誰か探ろうとした。優太はそんな俺達に気がついたのだろうか、クスッと笑って壁を指差した。その壁の向こうには、秋永さん達が居るはずだ。俺達は納得して、テレビを消し、優太のそばに行った。静かになった部屋の中では、少しだが、相手の声が聞こえる。
「あれ?そっち急に静かになったね。どうしたの?」
優太の携帯から秋永さんの声がする。
「いやな、男共が聞き耳を立ててるんだよ」
「えーっ?人の会話聞くの?」
優太が苦笑する。何も言えない俺達。
「それで、わざわざ電話じゃなくても良かったんじゃないの?」
「私達は今寝巻きだもん。だからちょっとね」
ふーん。だからか。っておい和樹何唾のんでんだよ。
「それでさ、そっちは今何してるの?」
「今は携帯の音を聞いてるよ」
「あっ、じゃあ今まで何してた?」
「テレビ見てたな。何となくで」
電話の向こうからそうなんだと聞こえてくる。
「ところで、なんで電話掛けてきたんだ?」
「それこそなんとなくだよ」
なんとなくで掛けてくるか。凄いな。
「日付変わってヤッホー。元気か?」
突然、電話から聞こえてくる声が変わった。誰かと代わったのだろうが、ノリがラジオです。
「元気ですよヤッホー。そちらはどなたですか?」
優太から携帯を奪った修が、同じ様なノリで返す。
「なっ、そちらこそどなたですか~?」
なんか、和む。その後も携帯を使ってお喋りしていたら、何時の間にか朝日が窓から差し込んだ。どうやらかなりの時間喋っていた様だ。電話の向こうと和樹が、長電話し過ぎたと悲鳴を上げた。