つまり、大変なことに… 2ページ
街の中でも有名なショッピングモールで、俺は駒野と共にいた。歩きながら駒野から聞いた話を言うと、こうなる。
「もうすぐ天冠さんの誕生日なの。あ、天冠さんは交流会の時の赤いストレートの髪してた子で、プレゼント決めたいんだけど、毎年私センス無いって言われてたから…」
だそうだ。その言葉にどうして呼んだのが俺なんだと聞くと、
「だって友達も誕生会に参加するし、言われると恥ずかしいし……それに、猛君ってなんか女の子っぽい時あるし」
と返して来た。傷付くな。確かに俺は身体の都合で女の子になったりしていて、文化祭の劇でそう言うのが貼りついた所はあるが、面と向かってはっきり言わないで欲しい。
で、俺は今婦人服売り場にいる。プレゼントに服を贈るのだろうか?そう思って見ていたのだが、服を当てて、姿見を見ている駒野を見ていると、どうも違う気がする。
「ねぇ。どっちの方が似合うと思う?」
「プレゼントは?」
「あっそうだった」
こんな会話がさっきから続いている。このままだと時間がすぎるだけになりそうなので、俺は駒野に近づいた。
「誕生日プレゼントなら、小物にしたらどうだ?ストラップとかさ」
「うーん、ストラップとかさ、どこかに行った記念品とかの方が付けたいと思わない?」
そんなもんなのか。よく分からん。
再び服を見ていく駒野。俺は近くにあった服を見てみる。あったかそうなダウンのジャケットだ。これからのために一着必要か?
「何見てるの?」
後ろから声をかけられた。振り返ると、駒野がこちらを見ている。しかも変な物を見る目で。
「いや、その…あははは」
誤魔化し方が悪過ぎるが、良い言い訳が思い付かなかった。俺は急いで離れた。
駒野は不思議そうな目を向けた後、再び服選びを始めた。
「ふーっ、これで大丈夫かな?」
買い物が終わって、ベンチに俺らは座っている。
「良いもんが選べたのか?」
「うん。今年はプレゼントを渡して苦笑を返されるなんて事にならなさそう」
その言葉に俺は苦笑する。服選びしている時、駒野が選んだ服を組み合わせてみると、可愛い服が変に見える。コーディネートがダメなんだなこいつ。
「……失礼な事考えてない?」
おっと、顔に出ていたか。にしても疲れた感じがするな。
そう思っていたら、駒野が立ち上がった。
「今日はありがとうね。おかげで良い物買えたし、じゃ、また明日」
そう言って走り去って行った。駒野が人混みに消えて行ったのを確認して、俺は立ち上がった。そのまま伸びをして、出口に向かって行った。