つまりは文化祭! 4ページ
「どうしてここの草木はこんな風に枯れているの?」
そう言って、空中に手を伸ばす。
「この花も、とても綺麗な花を咲かせていたはずなのに…」
慈しむ様に花に顔を近づける。その時、
「誰か居るのか⁈」
ふいに後ろから声がする。振り返るとーーー
「ぶっ!」
「笑うなよ!」
「だったらそのへんなキメ顔やめろ!」
劇の台本も出来、誰がどの役をやるかも決まり、いよいよ練習に入った我が一年四組。
今は台本を読みながら一通り流しているのだが、騎士役の宮田の妙なキメ顔で思わず俺は笑ってしまったのだ。
「かかりぃ、お前言葉遣い。普段も女口調でって言ったじゃんかよ」
「るっさいな。通してる時は出来てんだから良いじゃねぇか。それに、女口調に慣れ過ぎると男の時でも女口調で喋りかねないからな」
俺は右手をひらひらさせながら言った。
「まあいい、じゃあ今やったグループはセット作りに移って、セット作ってるグループは通しをやるよ」
加藤が指示を飛ばす。俺らは元気良く返事をして燕達と交代した。
「水連祭は九月だからな。練習時間短いからしっかりと練習しろよ」
そんな声を聞きつつ、俺は絵の具で木を描いてく。上手くは無いが、後ろの方にちょこんと飾っておけば良いだろう。
作業をしていると、廊下から、俺たちとも、燕達とも違うギャグパートグループが飛び込んで来た。
「服のデザインこんなんでどうだ⁈」
息を切らしながら服のデザインが書かれた紙を出すギャグパートグループ。クラスにいた人達は、作業をやめ、紙を覗き込んだ。
「この服……ヤバくね?」
そこの紙に書かれた服を見て、俺は絶句した。
それは、どう考えてもやり過ぎと思えるデザインだった。………男って、馬鹿だね。
「いや大丈夫だろ」
周りの男子達は言う。俺は溜息をついて、声を低くして言った。
「こんな服で劇をしたら、トラウマが来るだろうな」
言った瞬間、男子達の顔がみるみる青くなっていく。
さてこのトラウマとは、清涼学園にごく最近から伝わるもので、なんでも先代校長が、
「優しさあふれる人であれ」
って人だったらしい。その結果、清涼学園には謎と言える独自の格闘技があって、街中にいる不良ならあっという間に飛ばせる。
だがその格闘技を使ってやましい事をすると、先生方からトラウマを植え付けられる。らしい。
そのトラウマがどんなのかは知らないが、植え付けられた先輩はその後、日常生活ですらまともに過ごせなくなったと言う。
……今回は文化祭だし、まあ普通はお咎めなしだが、こんな大胆な服は着たく無いので少し脅しをかけた。
その日ずっと、男子達の顔が青くなっていたので、俺は心の中で謝罪した。