つまり、………………夏か 6ページ
「「「「……………」」」」
「なんだよ、ボケーっとしちゃって」
祭りの日、飾達の所に遅れた俺と燕は、息を整えながら聞いた。
一同、固まって動かない。ポカンと口を開けている。人形か。
「まさかここまでとはな」
和樹がしみじみ言う。おっさんか。
「でもスゲーカワイイよ。似合ってる似合ってる」
飾が調子良く言う。チャラ男か。
「いや、やっぱこんな美少女と回れるって俺らついてるな」
「ついてるなって、友達だろうに」
優太が呆れた声を出す。まったくだ。
「とにかく祭りに行こう。今年は花火もやるみたいだし」
俺がそう言ったので、俺達は会場である時計広場に向かう。
「やっぱり歩きずらいな」
歩きながら、俺はぼやいた。すると横にいた修が
「しょうがないだろ?浴衣なんだし。それにその方が綺麗だからな」
と言って来た。カッコカッコとぽっくりの音をたてながら歩く俺。
「小股になるのも歩きづらい理由の一つだけど、何より下着を着ないってのが落ち着かない」
俺は髪を弄りながら言った。そうかと短く答えが返ってくる。修を見ると、普通の顔だ。
全く、からかいがいがない奴だ。
そうしているうちに時計塔広場に付いた。
「やっぱりスゲーよな。これは」
優太が感心している。でもこの祭りは確かに学校で行うレベルじゃないしな。俺も頷いた。
祭り会場は賑やかで、夜店が立ち並ぶ。中等部や大学部の生徒もいるので、かなり混んでいた。俺達は祭りを楽しもうと、夜店を見ている。
「くじ引きやってるぞ」
飾が屋台を指差して言った。目を向けると、中等部の子達がくじを引いている。ゲーム機を狙っている様だ。
俺はハズレ商品を眺めて言った。
「やめよう。ハズレた時に嬉しくない」
「もうちょっと良いトコあると思うぜ」
和樹も言った。二人に否定されて黙り込む飾。
「ねぇ、ヨーヨーすくいしよう」
ふいに燕が言って来た。俺は燕に向かって
「すくった後ヨーヨーって邪魔じゃない?」
と言って流そうとした。しかし
「夏らしいからいいじゃん。ほらいくぞ」
と言って俺の腕を引っ張る燕。お前、今までもの買う時、役立つかどうかとか考えてから買ってたじゃんか。夏らしいからって…どうした燕?
「おっちゃん。二回分」
そう言って小銭を渡す燕。まあいいか。俺もおっちゃんから道具を貰った。
「やっぱ暑いなぁ」
せっかくの祭りにこの言葉は興醒めだ。俺は綿菓子を食らいながら思った。
横にいる燕は、飴細工で作られた蝶を食べている。和樹は焼きそばパックを大量に買い込んでいるし、修は射的で取ったトランプとゲーム機を持ちながらポップコーンを持っていて、飾はチョコバナナとかお好み焼きとか、食べ物類を買っていた。優太の手には焼き鳥だ。
「見事に食べ物ばっかりだなぁ」
綿菓子をつまみながら俺は言った。と、飾が、
「この後花火だろ?少し離れて見るから買っといたんだよ」
と言った。しかしこの量は多過ぎるだろ……
ふと見ると、手元の綿菓子が無くなっていた。
「なぁ、花火が始まるのって、何時だ?」
花火が始まる前に、もう一本、綿菓子を買っておこう。
すみません!
昨日同じ話を二回投稿していました。
三十話はこちらでした。