つまり、……………夏か 5ページ
「……………」
俺が固まっていると、燕は恥ずかしそうに俯いて
「変じゃないか?」
と言ってきた。
「いや、…驚く程似合ってる」
燕が着ている浴衣は、深い黒の色の生地に、赤いラインが走っている。それでいて振袖のトコに白も入ってるから、まんま燕だ。
「これどこにあったんだよ?」
俺が聞くと、高梨先生が答えた。
「それね、なんでかこの学校にあったやつなの。さぁ、貴女のもあるから着てみましょう。ちょっと待ってね」
そう言って奥の部屋に消える高梨先生。なんでかこの学校にあったやつって、不気味じゃね?そう思っていると、燕が耳打ちして来た。
「高梨先生少し怖くなった」
どーでもいい報告だ。
そうしてると高梨先生が布を持って帰ってきた。
「さぁ、試着するから、着てる物全部脱ぎなさい!」
……………は?
俺は固まった。
「え?先生なんて?」
「着てる物全部脱いでって言ったの。浴衣は素肌の上に着るものだから。さぁ、自分で脱げないなら……身ぐるみ剥ぐ事になるわよ」
そう言うやいなや、先生は俺の制服(念の為に言うが、今は女だ)に手をかけた。
「あの…先生?何を…」
「せいっ!」
「⁈」
「測定の時も思ったけど、やっぱりね」
「服!服を!」
「あ、ごめん。っと」
「?、え?え?」
「やっぱり可愛いわぁ」
本の数秒で、俺は浴衣に着替えていた。高梨先生の変な特技を知ったな。確かに怖いや…。
俺が着ている浴衣は、よくある紺の生地に綺麗な花が描かれている物だ。
「……燕、どう?」
高梨先生の後ろに薔薇が見えた気がしたので、俺は燕に聞いた。
「うん。凄い似合ってる」
燕は笑顔で言った。……なんか恥ずかしいな。
「…………照れてる?」
「なっ!」
「照れてるのか、可愛いよ~似合ってるよ~」
「やめい!恥ずかしい」
「顔赤らめちゃってまあ」
俺達が妙にきゃぴってると、高梨先生が俺達に向かって言った。
「二人ともお祭りに出るんでしょう?その浴衣あげるわ」
「「え⁈」」
俺達は固まった。この浴衣、学校の物じゃなかったか?
「貰っても大丈夫なんですか?」
燕が言ったが、今の言葉は貰いに行ってる気がした。
「大丈夫よ。倉庫から出て来た物だし、ここは男子校だから、着る人いないもの。遠慮なく貰って頂戴」
そう言って微笑む高梨先生に向かって
「「ありがとうございます!」」
俺達は頭を下げた。高梨先生はまだやる事があるでしょうと言った。俺達が首を傾げると、先生は笑って言った。
「じゃあ、着付けを覚えてね」
三十話めです!
思えば投稿し始めてもうそろそろ一ヶ月。
なんか嬉しいです!