つまり、……………夏か 4ページ
燕の言葉に、思わず味噌汁を吹いてしまった。慌てて口をぬぐい、燕に聞く
「え~っと、何になったって?」
俺は風呂場の方に目をやらながら聞いた。
「…だから……生理」
風呂場から声が帰ってくる。
俺はまだ事態を収集し切れていないが、指示を出した。
「とりあえず、上がれ」
そう言った後、俺は携帯を取り出し、相手が電話に出たのを確認してから言った。
「緊急事態発生」
今現在俺達は、寮の一室にいる。
「緊急事態って…確かにそうだが…」
集まった俺達は、先程起こった緊急事態について話している。
「でもこいつは女になって二ヶ月経ってんぞ。何で今さら…」
飾が不思議そうに言った。確かに、燕が女になったのはゴールデンウィークの少し前だから、今更って感じだな。
「とにかくこの現状を何とかしないと」
優太が言う。しかし、男子校に寮暮しの俺達は、何一つ解決策が浮かばない。
「かかり、お前は今まで生理とか無かったのか?」
「無いよ」
和樹が俺に振って来たのを流した時、ふと俺は解決策が浮かんだ。
「そうだ!高梨先生だ!」
思い出そう。高梨先生は、四月に女になってすぐの頃、身体測定をしてくれた理科の先生だ。男子校にいる話し掛けやすい女性。おばさん先生じゃないから、相談するのにピッタリである。
「おおっ!確かにそれが良いな。この時期なら祭りの事で多分学校にいるだろうしな」
そうして俺達は、浴衣を買うのを延期して、学校に向かった。
「だからと言って、六人でくる事無いでしょうに」
高梨先生は呆れた顔をして言った。俺達は、高梨先生に相談しに来たのだ。
「まあいいわ、とりあえず燕さん。ここに残ってね。他の人たちは、えーっと山田先生ーっ!この子達に祭りの準備を手伝わせてあげて下さい」
……ついてこなきゃ良かった。
燕以外の俺らは、山田先生に そうか手伝ってくれるのか と感心されながら、引きずられて行った。
「そこにテントを建ててくれ」
山田先生に指示されて、俺達は鉄の棒を持ち上げる。祭りの準備を生徒が手伝うなんて事が今まで無かったのか、力仕事が俺達にまわってくる。周りも組み立てている最中で、結構騒がしい。
「ふぅ……やっぱまだ準備中だな。組み立てかけの屋台とかがあちこちにある」
教員が使うテントを建て終え、周りを見ながら優太が言った。
「ホントだ、…あっでもあそこは完成してるよ」
「この祭りって、やぐら建てる意味あんのかね?」
なんて雑談を楽しんでいると、
「神鎌。高梨先生が呼んでたぞ」
後ろに小鳥遊先生がいた。小鳥遊先生は俺を見て、
「家庭科室で待っているそうだ」
と言った。俺は和樹達にその事を言って、小鳥遊先生にお礼をいい。校舎のなかに入って行った。
家庭科室に向かいながら、俺はどうして呼ばれたのだろうと考えた。生理についてなら、さっき燕と一緒に話を聞いている筈だ。それに家庭科室でと言うのは何故だろうか。
家庭科室の前についた俺は、少し息を整える様にして扉を開いた。
「失礼します。先生ーーー」
俺は言葉が止まった。家庭科室には高梨先生がいた。そして先生の横にどこにあったのか、浴衣を着て恥ずかしそうにこちらを向いている燕がいた。