表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
つまり  作者: 石本公也
24/126

つまり、落ち着きました。 6ページ

清涼学園には、男子校にも関わらず、様々な設備がある。庭園(ガーデン)もその一つだ。

学園の一角にあるこの庭園は、生徒の憩いの場所として作られた。季節によって違う花が植えられていて、年間で三百種以上植えているとか。

まぁ、花を見に来る生徒なんて、選択で理科を取ってる奴ぐらいだけどな。

「あの人達、凄いね」

「ああ、何してんだか分からないけどな」

傘を持って、雨の中庭園の入り口に立って森山さんを待っていた俺と燕は、雨に打たれながら、大きなセットを運んでいる美術部員と冷やかし四人を見ていた。セットの横で指示を出していた森山さんは、俺達に気がつくと

「やあ、待たせたね」

と言って来た。真顔で。

「大丈夫ですよ。ところで、あの大きな物はなんですか?」

俺は森山さんの後ろのセットを指さした。

「ああ、あれは画材が雨に濡れない様にする為の物さ」

森山さんが答えると、今度は燕が言った。

「部員は思いっきり濡れてますけど…」

「大丈夫!素晴らしい絵が書けるなら、多少濡れたって構わないさ!」

笑顔で言う森山さん。かっこいいな。

その後ろで和樹達が、俺等は構うと目線を送っているが、無視だ。

「さあ、早く準備しよう。雨が上がったらもったいないからね」



しばらくして、俺と燕の前に大きなセットが立てられた。はっきり言ってキャンプなどで使うタープで、その中に森山さんと美術部員が画材を組み立てている。

組み立て終えると、森山さんがこっちをみて、

「ええと、こんな感じで傘を持って」

と、ジェスチャーしながら言った。俺は森山さんがした様に、傘を両手で持つ。肩に傘を当てながら、右手で支えて、左手は添える様に。

「そう。そんな感じで、向きはもうちょっと右向きだな…そう。そんな感じ。山瀬さんは、こうやって、それで神鎌さんの横に行って。そこ!そこに立って」

森山さんの指示に従って、俺等は動いた。

「神鎌さんは、こっちをみて、不思議な物を見る感じで、…うーん、少し首動かしてくれる?…うん。それが良いな。そのままでいてね。山瀬さんは、神鎌さんの方を向いて、笑顔で、よし!じゃあ二人とも動かないでね」

まさか表情まで指摘されるとは、俺達が表情を勘でやってると、満足した様にうなずいて絵を書き始める森山さん。その後ろでこっちをみて笑いを(こら)えてる飾達。正直、殴りたい。

そこから長い事俺と燕は動かなかった。いや、動けなかった。森山さんがいきいきと筆を走らせているのを見ると、動こうにも気が引けてしまう。そんな光景を見続けて、雨が弱くなったとき、

「出来たっ!」

森山さんが言った。

ようやく、ようやく終わった。

フーっと息を吐き、体を動かす。あちこちの筋肉が固まった気がする。

「凄く疲れたね。帰ってお風呂に入りたい」

燕の意見に俺は同意した。ただ立ってるだけがこんなにも疲れるとはな。

「仕上げを終えたら、君達にも見せてあげるよ」

森山さんが笑顔で言った。本当に満足行く物がかけたのだろう。その顔は輝いていた。






「これが完成した絵ですか?」

数日後、俺達は、美術室に来ていた。

「凄いなぁ」

修が感心している。まぁ、その気持ちは分かるな。この絵は凄い。

雨が降っているなかで傘を差した女の子が二人。その子達の手前にあるアジサイが、大きく、美しく描かれている。

なんだかこの絵を、ずっと見続けたくなった。

読んでくれた方、読み続けてくれている方、お気に入りにしてくれた方、評価してくれた方、感想をくれた方に、世界規模の感謝を。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ