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リコレクションズ  作者: 戸理 葵
第二章 動き出す
27/67

何ですか!?それは 2

今回、会話ばっかり・・・。

ふ、藤田さんってさ、目的の為には手段を選ばないタイプっぽいよね。

そうだよね、きっとそうだよね。

でなくても私達ってさっきから注目を集めているし、ほら、私って普通の女の子だし・・・。


「藤田さん、あの人あんなに離れてってますよ?」

ひぇっ拓也がチクったっ。

「ひどいなあ、日下部さん。誤解しないで、って言ったのに。」

きゃあぁぁ、その笑顔が怖いんですってばっ。

誤解なんてしていませんっあれはあの場限りのオイシイ演技だって事はわかっていますっ。

ただ、私ちょっと・・・

「あの人の性格が怖い・・・。」

「うん、それはね、しょうがないの。これが先輩だから諦めて。」

あぅ、(みどり)さんに襟首掴まれるように輪に戻されちゃったよ。

引きつったような苦笑してるけどね、碧さん克服するの早いですね?

そうなると、感想なんかを聞きたくなっちゃいますよ?



麻布にあるお洒落なダイニングバー。


碧さんの彼女だと言う「純ちゃん」は、茶色の髪を巻き毛にした、小柄でお目目パッチリの色白で、

とてもかわいらしい、ふわふわとした感じのお嬢様で、

碧さんの横に並ぶと完璧なくらいのお似合いだった。

高校からの付き合いで大学も同じってあたり、私と拓也を連想させて、なんとも複雑な気持ちになる。


「こんばんは。よろしくお願いします。3人ともまだ大学生?いいなあ、純も戻りたいなあ。」


すっごく可愛らしい笑顔でにっこり笑われると、誰だって好きにならずにいられない、そんな感じの人。


「あ、このコが碧くんの話していた奈緒ちゃん?すごぉい、モデルさんなの?CMに出るんでしょ?」


うんうん、そんな感じがするねっ、すっごく可愛いねって奈緒のまわりを嬉しそうにキラキラとまわって、

奈緒が柄にもなく赤くなっている。


「あ、碧くんのお気に入りのヨッシーくんね。可愛い。よろしくね。」

「吉川です。そのあだ名、浸透してないんで是非、本名でお願いします。」

拓也もニッコリ、いつもの営業スマイルで滅茶苦茶カンジがいい。

絶対、満更じゃないわよね、あなた。


「そして貴方が綾香ちゃんね。こんにちはー。碧くんがお世話になりましたー。」

「あ、いえ、とんでもない、こちらこそ・・・。」

「世界の不思議を発見したいんですって?」


・・・私は、そこですかい?


思わず彼女の後ろに立つ碧さんと目があうと、碧さんは慌ててわざとらしく私から眼を反らした。

・・・まあ、しょうがないわね。

鼻血とか、池ポチャとか、足から流血とか、言われるよりマシだから・・・。


潤んだ瞳が特徴的の、可愛い小柄な純さんが、背の高いちょっぴりタレ目のアイドル系碧さんを見上げる姿は、どこから見ても絵になるカップルだった。



胸にくるチクチクと切ない感覚は、見ないフリをする。





で、そのダイニングバーで、宴もタケナワの折、例のキス事件をなんと藤田さんが口にして(碧さんの彼女の前でよ?!)

それを訊いた純さんが、衝撃を受けた。


「・・・碧くんが、藤田さんとキス・・・・?」

見る見る間に顔色が青くなっていく。


「・・・・うそ・・・。」

可憐な瞳が揺らいでいる。肩が震え出して、両手で口を押さえ出した。


「・・・そんな・・・なんで・・・やだ・・・」


あ、これ、この人の許容範囲を超えちゃっているんだ(そりゃそうでしょう。彼氏が男とベロチューしたなんて聞かされちゃ)。

こんなか弱そうな女性(ひと)を泣かすなんて、碧さんも藤田さんもホントにひどいよ。

見る間に涙が溜まってくる。

どうしよう、あ、泣いちゃう、泣いちゃう・・・泣いちゃうよ・・・。


「・・・純も、見たかった・・・・!!」



・・・え?



「見たかった!見たかったわ、藤田さんっ。なんで純を待っててくれなかったの?」


え?え?


純さんは、その大きな瞳をますます潤ませて、

「碧くんと藤田さんとのキスシーンなんて、美味しすぎるじゃない。そんなキレイなビジュアル、ドラマや映画でも滅多に見られないわよ、ずるいずるい。」


碧さんのシャツの胸を掴み、もたれかかるように彼の顔を覗き込むんだけど、言ってる事がおっそろしい。それって涙を溜めてまで言う事ですか?


拓也が私の隣で、本気で怯えている。


「ねえ綾香ちゃん、どうだった?やっぱり素敵だったでしょ?濃厚キスシーンだったんでしょ?」

「もう、いいから純。勘弁してよ。」

「はあ。ええ、確かに見応えたっぷりガツンとありましたが・・・。」

「綾ちゃんも、いいから。付き合わないでよ。」

「ずるいよー。見たかったよー。もっかいやってよー。」

「やるかっ!」


あ、怒鳴った。

この人、弱冠マジで、泣きが入っているかも。



それにしても、「純ちゃん」、何者?

可憐なお嬢様じゃないの?



「よかったな、碧。これで俺達、公認だ。」

藤田さんが、隣の碧さんの肩に腕を乗せ、必要以上に顔を近づけて笑った(明らかな嫌がらせ)。

碧さんは両手で彼の肩をグイっと押しやりながら、顔を赤らめて嫌そうに言った。


「追い打ちかけるのやめろ、先輩。なんだよヨッシー、そのゲテモノを見るような目つきは。」

「だってそうじゃん。」

「じゃ、そういう目で先輩を見ろよ。」

「やだよ。怖いもん。」

・・・だよね。怖いよね。あの人一番、危ないよね。


「お前、そうやって人の不幸を笑ってるとな、明日は我が身だぞ。お前の方がずっと、そーゆー人種に狙われやすそうなんだからな。」

「だけど碧くんは、電車の中で男の人の痴漢にあった事があるわよね。」

純さんがにっこりと口を出す。

「・・・・・。」


「よかった、俺、まだその経験、ない。ふふ。」

「でも吉川くんは、高校の時何度も、女の人の痴漢にあっていたよね?」

奈緒がニッコリと口をはさむ。

「・・・・・。」


二人の上が、とても暗いよ。重いよ、冷たいよ。


「お互い苦労してるな。」

「うん。でも俺、みどりちゃんみたいには、絶対ならない。」

「・・・おまえ・・・。」

「男は、人生最後の楽しみにとっとくよ。」

「だから違うっつってんだろがっ。」

スパン。あ、拓也がどつかれた。


「綾香は鼻血出なかった?」

「出すかっって突っ込みたいところだけど、正直出そうだった。刺激的で夢に出そう。」

「ほらー!純も刺激的見たいー!!」

「純っ!綾ちゃんもっっ!お願いだからっ!」

「お前も、結構容赦ないな。」


焼酎片手に、拓也が呆れて私を見る。

滅多にない機会なので。前回散々イジられましたので。ここぞというチャンスなんですよ。



お酒のせいで赤みがさした顔をして、拓也が空になった私のグラスにビールを注ぐ。

この子はお酒にあまり強くないものだから、少し眼が潤み始めている。


・・・まずいなあ。酔った勢いで押し倒されたりなんかしたら最悪だわ。

多分、少しは自覚して、私に対してセーブしてくれると思うのだけれど、こればかりは。わからない。

私、誰かと一緒に帰った方がいいかもなあ。


なんて思っていたら私の手元が狂って、というか拓也の手元が滑って、私のビールが倒れてしまい

向かいに座っていた純さんのテーブルをビール浸しにさせてしまった。


「うわっごめんっ。」

「わっ。あっ純さんっごめんなさいっ大丈夫ですかっ。」


慌てて私達二人が立ちあがっておしぼりとかで拭こうとしたんだけど、

当の純さんは呆けた様に座っていて、濡れてしまったワンピースを眺めている。

私はオロオロしてしまった。

「ああー濡れちゃったっどうしよう・・・。」

「大丈夫よー、これくらい平気よー。」


純さんはニッコリ笑ってくれるんだけど、でもだってそれって素敵な白系のニットワンピだし、

ビールでシミになっちゃうよぉぉ。

どうしよう、クリーニングじゃ落ちないかも。


「純さんっトイレにいきましょうっ!!」

私はガバッと立ちあがり、残りの5人が眼を丸くした。


「え?」

「今すぐ落とせば、シミにならないかもしれないっ。さあ、早くっ。」

「え、お前いいよ。俺が弁償するから。無理でしょ、もう。」

「それとこれとは別っ。」


私は人差し指で拓也を指さし、ビシッ言った。

「女の子はね、気に入ったお洋服とは簡単には出会えないのっ。大切なお友達みたいなものなのよっ。弁償だけでは済まされないのっ。さ、純さん行きますよっ。ワンピースを救ってみますっ。」

「え、あ、はい・・・。」


私はテーブルを周りこんで純さんの腕を掴むと、無理やり立たせてトイレへと急いだ。

その後ろで奈緒の呟きが聞こえてきたけど、それは無視よ、無視。


「出た、綾香ワールドとパワー。ああなると止められない。」

「普段は割と控えめなのにね。」

と碧さん。

「突然来るんだね。かわいいなあ。」

と藤田さん。

「あいつの中ではストーリーが出来上がっちゃってるんですよ、いつも。」

と拓也。


「ちょっと!本人のいない所で悪口禁止!!」

私は振り返って4人を睨むと、ズンズン先を急いだ。

わずかに聞こえてきたのは、拓也の屁理屈。


「目の前ならいいんだ・・・。」


この減らず口っ。いい訳ないわよっ殴るに決まってんでしょっ。

でも今はまず、純さんのワンピをレスキューしなくちゃっ。





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